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おそらく、私には異性から嫌われる呪いがかかっている +番外編追加(1月15日)  作者: 紺青


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【番外編】話し合い side義兄⑥

 婚約者がルーシーに会いに来たと使用人から聞いて、慌てて駆けつけて死角になる位置から二人を見守る。

 遠路はるばる伯爵領までやってきて、治癒魔法をねだるとは何様だ?

 一応、今はまだルーシーの婚約者なので、その様を大人しく見ていた。

 治癒が終わった後に御礼を言うどころかルーシーの手首を掴み、恫喝している。

 引きはがそうとそちらへ向かうと、珍しくルーシーが彼に歯向かった。

 自分がどれだけけなされようと反応しないのに、彼女は俺が貶められるのが許せない。

 彼女の反抗に激高した彼は、ルーシーに平手打ちをして華奢な体が吹き飛んだ。


 ルーシーはなにもかも諦めた顔をして、俺が貶められた時だけ感情を露わにする。

 そんな彼女をゴミみたいに扱われて許せるか?

 そんな風に扱うなら、容赦しない。


 母さん、もういいよな?

 我慢しなくて。

 俺の腹は決まったよ。


 彼の背後に身を沈めると、アレックス仕込みの後ろ回し蹴りをかます。

 ルーシーはぽかんとして驚いているけど、ぶっとばされた婚約者より俺の心配をしてくれて頬がゆるむ。

 瀕死の俺にキスして治癒魔法をかけたことを知っていることを仄めかすと、顔色を青くしたり赤くしたりと忙しい。

「死にかけるとね、ルーシー。なにが大事かってわかるんだよ」

 ああ、かわいい。

 もう手離さない。

 だから、もうこんなクソとの婚約はないものにして俺と結婚しよう。  

 


 ◇◇



 婚約者に治癒魔法を流さず、ルーシーの部屋から一番離れた客間にグルグル巻きにして転がし、騎士に見張らせる。使用人から彼が目覚めたと聞いて部屋を訪れた。


「お前! 公爵家の嫡男にこんなことをして許されると思っているのか!!」

 この状況でまだ吠える元気があるらしい。

「ルーシーといい、お前といい、そういう態度を取るならこっちにも考えがある! 早くこの縄を解け!」

「マクファーレン伯爵領に嵐が来てな、そこへはるばる婚約者が会いに来たんだが、まだ道の緩い場所があって、事故にあった……」

「……」

 静かにそう話すと、ぴたりと彼は口を噤んだ。

「お前……そんなことをしてみろ! 公爵家の後継ぎで王妃の甥だぞ! 徹底的に捜査されて、マクファーレン伯爵家は終わりだぞ!」

 でも一瞬後には元気に脅しの言葉を口にする。


「ははっ。冗談ですよ。さすがに犯罪に手を染めたりしませんよ。僕も次期伯爵家当主ですからね」

「おいっ。わかってるなら早く縄を解いて、ルーシーを呼べ。治癒魔法をかけて手当てするように指示しろ、次期伯爵!!」


 コツッと靴音を響かせて彼に近づくと彼の顔がわかりやすく引きつった。

 黒髪で長身の顔だけが整った男が、両腕ごとグルグル巻きにされて転がってる無様な姿を目に焼き付ける。

「ルーシーは呼ばない」

「おいっ!」

「大丈夫。俺も治癒魔法が使えるんですよ」

 やたらと艶のいい黒髪を掻き分けて、地肌に当たるように手を添える。

 魔力を一気に注ぎ込んだ。

「うぁぁああああああああーーーー………。痛い痛い痛い! やめてくれ、やめろぉぉお!!」

 痛みに悶絶し、床をゴロゴロと転がるが片手で頭を固定し、魔力を流し込んでいるもう片手は離さない。

 しばらく魔力を流し続けると、叫ぶ元気もなくなり動かなくなったので、一旦解放する。

「……はぁはぁ。お前……俺をどうする気だ……俺は公爵家の後継ぎで、王妃の甥で……」

 涙と汗とヨダレにまみれた顔でこちらを見ながらも、まだ反抗する元気があるようだ。


 無言でもう一度、魔力の出力を上げて一気に叩き込む。

「んぎゃぁああああーーーー!!! もう、やめてくれーーーー!!!」

 そんな言葉を聞き入れる道理はない。

「お前がルーシーにしていたことだよ。それをお返ししているだけだ」

「してない、してない、そんなことぉおお。いだいいだい!!! もう、やめでくれ」

「頭がおかしいみたいだから、治癒魔法をかけてやってるのに、まだ理解できないみたいだな」

 更に出力を上げる。


「っかはっ!! わがったわがったから、やめでぐれ!!」

 足で床を叩き、降参の意を示しているようなので一旦、魔力を流すのを止めるが、頭に添えた手は外さない。

「……なんで、こんなことを……」

 やっと自分の置かれた立場を理解したのか、涙目でこちらを見上げてくる。


「ルーシーを丁重に扱え。今後、お前や公爵家の奴らがルーシーに暴言や暴力を奮ったら、同じ目に合わせてやる」

「そんな脅しっ!!」

「まだわからないか? 物理でも魔法でも俺はお前を秘密裏に屠ることができるんだぞ?」

「……っ!!」

 頭から少し魔力を叩きこむと、奴の体がびくっと震える。


「お願いしていない。これは命令だ。次、ルーシーに酷いことをしたら、もっと恐ろしいことが降りかかる……かもしれない。わかったか?」

「……」

「返事は?」

「ハイ」

 俺が頭から手を離し、立ち上がると無様に転がった男の体から力が抜けた。


 部屋を出る前に振り返ると、怯えたようにこちらを見る男と目が合った。

「ああ、先ほどのは暴力じゃなくて、本当に治癒魔法ですから。先ほど瓦礫が当たってできた頭の傷や痛みも、長旅の体の痛みやだるさも全部なくなってるでしょう? 短時間で一気に魔力を入れると荒療治になるんですよねぇ。いつも優しく治療してくれるルーシーに感謝したほうがいいですよ?」

 恐怖に目を見開く男にもう一度近寄る。


「あなたはここで、大変厚いもてなしをうけた。少々怪我を負ったけど、きちんと手当てされ、公爵家嫡男にふさわしいもてなしを受けた。そうですよね?」

 彼の頭をゆっくりと撫でると、無言で頷いてくれた。

 ちゃんとお話を聞いてくれたようでよかった。

 全然話の通じない相手なんだから、はじめからこうすればよかったんだ。

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