9 父の奇行と弱った金魚。私は都心で恥をかく。
せんとくんに似ていると言われた。
ショックだった。
卒論を書くために日本橋へとフィールドワークに行った私と友人R
日本橋にある変体仮名で書かれた看板をひたすら写真に撮りまくる私たち。
看板を見つけるたびに奇声をあげてシャッターをきる私たちは、初めて日本に観光に来た外国人さながらである。
日本橋一丁目の大通りを歩いていると、奈良の物産展を発見。
お店の前には看板娘ならぬ、看板せんとくん。
すると友人Rは
「ちょっとちょっと。あのキャラクター、紫苑ちゃんに似てない!?」
おいおいおいおい。
ちょっとやめておくれよ。
私は、せんとくんは、めざましテレビの大●さんに似ていると今まで思ってたんだよ。
現に今も、
「チャーリーとチョコレート工場のウンパルンパとせんとくんを足して2で割ったら確実に大●さんだな」
と思っていたところなのだよ。
友人Rは、丸っこいキャラクターや、魚のキャラクターなどを、見つけるとほぼ確実に
「紫苑ちゃん!」
と叫ぶのだ。
でも、確かに私はちょっと最近かなり丸いけど、
ショックだよなぁ。
Rは、興奮した口調で、「ちょっと、紫苑ちゃん、せんとくんの隣に立って同じポーズしてみて!」
そう言うではないか。
やれと言われてやらないのは私のエンターテイナーとしての(え?)沽券にかかわる。
意を決していざ、尋常に勝負!!
左手を腰に…
右手をやや斜め前に…
せんとくんに寄り添うように頭も軽く傾げてみる。
あぁ…
通行人の目が痛い。
ここは高級な日本橋なのに…
東京0地点なのに…
Rは
「いいよ。いいよ。すごくいいよ。」
変態カメラマンのような口調で写真を撮りまくる。
道を歩くおばあさんにも
「あらあらあら。そっくりねぇ」
なんて言われる。
目の前には老舗のデパート
何やってるんだ私。
似ていると言えば、私の父はカメに似ている。
三重の目とか、顔の形とか、なんとなく、カメなのだ。
そんな父は川が大好きで町を歩いていると
「ここは絶対大昔は川だった。」
など、どこに根拠があって言っているのかわからないが、自信満々で教えてくれる。
父は魚も好きだ。
近所の縁日で金魚すくいをした時に捕まえた金魚を大事に飼っていた。
そして、なにやら金魚鉢の中で病気が流行した時に、弱った金魚を湿ったガーゼの上に寝かせ、
「俺が助けてやるからな。」
そう言うと金魚に心臓マッサージを始めたのだ。
人差し指で、エラのあたりを押し続ける。
ピコピコピコピコ…
何度も押す。
しかし相変わらず金魚は意識を取り戻さない。
すると、父は真剣な顔で
「よし。人口呼吸だ。」
そう言って本当に人口呼吸を始めそうになった。
それまで黙って見ていた母は、
父の手から金魚を取り上げ、金魚鉢の中に放り込んだ。
金魚は、助かった!!
とばかりにゆらゆら泳ぎだす。
父は、それを嬉しそうに眺め、
「また、一匹の金魚の命を救うことができた。」
そう満足げに呟く。
あまりに満足げだったので、「ただ、水の中に入りたかっただけだよ」
とは言えなかった。
そんな父に最近うれしいニュースが飛び込んできた。
父が飼っているメダカに待望の赤ちゃんが生まれたのだ。
父はそれはもう、手放しで喜び、一匹一匹に名前をつけようとして、挫折していた。
「あんたに彼氏ができないから、パパはメダカの赤ちゃんを孫だと思って育てるんだって。今回ばかりは私もパパの気持ちがわかるよ。」
私はそう母に言われてしまった。
ごめん。
まだまだしばらく、メダカの孫を可愛がっていてください。
私に予定はございません。
ごめんなさい。
父と母に人間の孫の姿を見せてあげられる日は来るのであろうか。
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咲良 紫苑




