8 平成の武士と(私に)呼ばれたその男
優男
だけど隠れて細マッチョ
憂いを含んだその顔は
女子に見紛う美しさ
そして何より
和服が似合う
そんな男性好みです。
そんな人いんのかな
そう思いながらキャンパスを闊歩していた。
和服を着ている人はお祭りぐらいでしか見かけないよなぁ
私は日頃から和服を着るような男性が良いんだよな
男の人は、浴衣の女の子が好きなようですね。
私も浴衣の女の子大好きである。
日本の文化は「ほのめかし+危うさ」なのではないか。
「襟元からチラッと見える美しい曲線を描くうなじを下へとたどっていくと…」←ほのめかし
「浴衣って、帯一本でまとまってるだけなんだなぁ…ほどけてしまったら…」←危うさ
サイコーだろ!?これぞ日本の文化だ!!!(実際には帯一本ではないがのう)
同じことが男性の着物にも言えるわけです。
はだけた胸元から覘く胸板。
「あれ?この人ってすごく華奢なのに意外と胸板がしっかりしている。きっと腹筋も割れているんだわ」←ほのめかし
「きっとあの帯をほどいたらギリシャ彫刻のような…いやん」←危うさ
ほら。ね!!
そんなこんなで男も女も弱い和服ですが、私はこの前見つけたのです。
皆似たような微妙に違う服装で歩く、個性を大事にする没個性の今のこの日本で!
着流しを粋に着こなす男子大学生を。
それは雨の降る昼下がり。
彼は臙脂色した番傘を屋根の下で開く。
私は雷に打たれたような気持ちがした。
夢にまで描いた日頃から和服を着る男性に出会えたのだ!
うぉぉぉぉ!!
お友達になりてぇ!!
そう思ったがなにせチキンな私。
彼を遠巻きに見つめ、
いつか、お友達になって江戸人ごっこをするんだいっ!!
そう心に誓った。
それから、私は彼の一日を妄想してみることにした。
彼、蘇芳環(仮名)は、小鳥のさえずりに誘われるように、朝の5時に起床する。
もちろん環の部屋は一面畳張りだ。だだっ広い23畳の部屋の真ん中に一枚の布団を敷いて寝る。
寝巻は私たちは温泉旅行に行った時にしか着ないような浴衣である。
彼は枕元に前の日の夜に必ず鳥の餌を用意して置いておく。
そして朝起きると庭に集まっている野鳥たちに
「今日も起こしてくれてありがとう」
そう言い、環が手を何度も切りながら作った手作りの餌入れに餌を入れるのだ。
その後、布団をたたみ部屋の隅へ寄せると毎日のことながらだだっ広い空間に若干気圧される。
居間からは母の呼ぶ声が聞こえる。
朝食の時間のようだ。
居間へ行くと、そこには呉服屋を営んでいる父、蘇芳聖とその妻、蘇芳茜、環の妹の蘇芳沙羅がすでに食卓についていた。
環は
「遅れてすみません」
そう短く言うと、父とは目線の合わない沙羅の隣へと腰掛ける。
環は聖が朝の挨拶もせず、目もあわさず席立つのを見て気まずそうに味噌汁をすする。
「おにいちゃん、今日は庭のアジサイが咲いたのよ。」
気まずい雰囲気を少しでも和ませようと、沙羅は明るく環に話かける。
妹に気を遣わせていることに気づいている環は、食事もそこそこに立ち上がり
「そうか。では今日は紫にしよう」
そう言い、自室へ戻って行った。
環は紫の着流しを呉服棚から取り出す。
しかし、先ほどの父の様子は環の気持ちを沈ませる。
「父上は私が家業を継ぐ準備をせず普通の大学に行ったことをまだ許してはくれないのだな…」
この紫は明るすぎるだろうか。
環は紫の着流しを棚に戻し、滅紫のものを取り出す。
滅紫は、紫をくすませたような色だ。
環はキュッと帯を結び、うす曇りの空のもと、一歩を踏み出す。
はぁ。このまま果てしなく書けそう。
そんな彼の妄想を楽しんでいた私だったが、ある日衝撃的なものを目にする。
それは、
彼が、真っ赤なスキニーに、黒いTシャツを着て登校している姿を目撃してしまったのだ。
今まで何度か学校で彼を見つけた時はいつも素敵な和服を着ていたのに。。!!!
なぜだ!!!
私と彼の楽しい江戸人ごっこがぁ!!
うわぁぁぁぁん!!!
次に会った時も
その次に会った時も、
真っ赤なスキニ―。
なぜだぁ!!
誰が彼に真っ赤なスキニ―を教えたのだ!!
許せん!!
次に会った時、もう和服は着ないのですか。
と聞いてみようと思う。
多分、チキンだから聞けないけど…
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これからも日々精進してまいります。
よろしくおねがいします★
咲良 紫苑




