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誰しも日々積もる一方のストレスから、ほんのひと時でも逃げたいがために酒に溺れることもあるだろう。

その時間は、ストレス社会で戦う我ら日本人にとっては必要不可欠な時間であり、多少の粗相は黙認されるという。


実際、私も友人が酔い潰れ、トイレに立てこもるのを甲斐甲斐しく介抱したり、家までタクシーを使って送ったり、ある時は、初めての飲み会で我を忘れて飲み倒し、ついには急性アルコール中毒で救急車で運ばれる後輩に付き添ったこともある。


そんな、酔っ払い達の信頼を一身に集める私は酒を飲みすぎて再起不能になったことがない。

二日酔いで頭が痛い、気持ち悪い、味噌汁しか飲めない、なにこれ、ポカリって命の水!?

ということは往々にしてあるが、飲んでいる最中に、粗相をしたり、腰が立たなくなったりしたことは一度もない。


それならば酒に強いのか、と言えばそれは違う。

酔いというのは千差万別。笑い上戸に泣き上戸……私と言えば記憶喪失。ということで、良い塩梅にお酒が入ると、かなりの確率で記憶をなくしている。

しかも、周囲の人間には酔っているようには見えていないからやっかいなことになる。


ある時は何食わぬ顔をして隣の宴会に乱入し、えんや、えんやの大騒ぎ。

驚いた友人が「そこは、よそ様の宴会よ」と忠告したところ、「知り合いだから大丈夫」と真顔で返してきたという。それならば、ということで、私を置いて先に帰宅した友人たち。


意識を取り戻した私が、大汗かきながらよそ様にお詫びし、涙を流しながら「なぜ、置いて行った……」と友人たちに電話したことは至極当然のことであろう。


更に私の記憶喪失は、公の機関までをも巻き込んだらしい。

以下の話は後日聞かされたことなので少々物語チックになっているが、完全にノンフィクションである。



秋も深まる月見酒と洒落こんでの飲み会。ビールに焼酎、その他諸々を何リットルも胃に流し込み、寒さも気にならなくなってきた帰り道。


「今日も顔色変えずに良く飲むね」


と最近頻繁に飲む男友達が言う。


「少し、顔が赤くなった方が可愛いよね。酔っちゃった、なんて言うセリフが似合う女の子になりたかったな」


と恥じらいながら言う私。


月明かりが2人を優しく照らす。


「今日は、楽しかった。家まで送ってくれてありがとう」


と私。


「え?冗談、酔ってるの?」


と彼。


「酔ってないよ、大丈夫、ほんとにここ、交番が私の家よ、気をつけて帰ってね」


そう言って四角い建物の中にズンズン入っていく私。

一度振り返り、小さく手を振る私。頭に大きな?を浮かべる彼。



その後、おまわりさんに「少し酔ってるみたいなので休ませてください」と言い、本当はダメだけど……と言われながらもトイレを拝借し、自宅の電話番号を聞かれ、心配で見に来た彼をおまわりさんが帰宅させ5分後、父がものすごく申し訳なさそうに迎えにきた。そうである。


最後に私は「最近物騒なので、身の回りには気を付けてください、では」

とおまわりさんに言い残し、しゃなり、しゃなりと歩いて父の運転してきた車に乗り込んだ。らしい。


そしてその数日後、彼にはお酒が弱くて可愛い彼女ができた。

ちなみに、その日の飲み会の主題は彼の恋愛相談だったらしい。記憶にないので適当な返答をしていなかったことを祈る。ただ、「君を見て、女の子はお酒をあまり飲まない子が良いって気付いたよ、ありがとう」と言われた。それは良かった、良かった……のか?



こんな私だが、今のところ飲み会の誘いは減っていない。

周囲の生ぬるい優しさに落涙を禁じえない。

「酔っちゃった」と可愛らしく言って周囲を和ませるような可愛い酔い方勉強するので、もうしばらくお付き合いを願いたいものだ。







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