44 いってきます
明日から中国旅行へいよいよ出発。
そのため、バレエを休むので先生へ報告。
私「中国に行ってきます。お土産は期待しないで待っていてくださいね」
先生「万里の長城登るだね。足腰鍛える為に今日はハードにいくよ」
私「ありがとうございます。お手柔らかに……」
先生「ところで紫苑ちゃん、中国人に向かって‘ウォーアイニー’とは言っちゃだめよ」
私「……どういう意味で?(もしかして、政治とか歴史とかに関係するヤバい言葉!?ドキドキ)」
先生「私はあなたを愛しています」
私「……言わないよ!!」
思わず先生に対してもタメ語で突っ込んでしまった咲良です。
こんばんは。
そんなこと、金城武ばりに格好良くて、トニーレオンのような武士っぽい人がいないかぎり言いませんわ。
もしいたら、私の知っている全ての言語で「愛してる。結婚して」と言うことでしょう。
今日、前のバイト先の社員さん宮さん(仮)と一緒にダ・ヴィンチ展を見に行った。
いつも宮さんと遊ぶ時は待ち合わせに早く着きすぎる私。
待ち合わせが朝の10時なのにもかかわらず、9時には日比谷公園にスタンバる私。
そこで見つけた一羽のハト。
首を引っ込めて睡眠中。実に健やかに寝ている。
可愛さのあまり、写真を撮りに近づいても全く起きない。
時々白目になったりするけど、どうやらそれが彼の睡眠スタイルらしい。
彼と私の距離が約30センチになっても起きない。
いっそ、つっついてやろうかと思ったが、急に起こされてさくらんしたハトに襲いかかられても嫌なので突っつくのはやめて、しばらく様子を見てみることにした。
だが、何分たっても動く気配がない。
そろそろ10時になるという時間まで見つめ続けたが一向に起きようとはしないハト。
日比谷公園のハトはねぼすけでありんす。
そうこうしている間に、宮さんご到着。盛大なハグで再開を喜びあう。
2人は、いざ、ダ・ヴィンチの脳内ツアーへと旅立つのであった。
会場内には、ダ・ヴィンチ(以下ダー様)が生涯にわたり残したメモから忠実に再現したダー様オリジナルの発明品のレプリカが展示されている。
ダー様は、なんでもできる人であることが良くわかった。
本当に、文字通りになんでもだ。
医学
建築学
絵
歌
楽器
舞台
生物学
軍事
などなど…本当に、ここに展示されているものはダー様一人の頭の中で考えられたものなのか!?
と疑いたくなる。
ここまで、全てにおいて完璧なる天才だと、ダー様の興味がなかったことを教えていただきたいと思うぐらいだ。
ダー様の平均睡眠時間は1日約3時間。
そこまでして、どうしてこんなにいろいろ芸や知識を増やすことに専念したのか。
全ては、より良い絵を描くためだったのだろうなと私は考えた。
完璧主義なダー様の性格を考えれば、中途半端なものは絶対に生み出さない。
より正確な絵を作り出すために、人体を学び、表情を科学し、繊細な頬笑みにしあげる。
平和主義なダー様だけど、時には兵器を生みだす。
より質感的な絵を作り出すために、高い染料を買いたい。そこで、兵器を考えてお金の工面をする。
彼の全ては絵を生みだすことにつながっていたんだろうな
まさに、好きこそものの上手なれ
の極みだな
と
私は感じた。
天才はいいなと思うが、天才は天才の悩みがあるんだろう。
不完全主義者とも言っていい私のように、
なんでもかんでも
「これでいいや」
で片づけてしまえる私はある意味幸せなんじゃないかと。
完璧に近付けるために、必死でご飯を食べるのを忘れる人生よりも、腹が減っては何もできぬ、このままの私が私らしく、それでいいんじゃないかと、下手に天才にならなくて良いよな。
そんなことまで考えさせられるイベントだった。
イベント会場の中に、超高感度カメラ(確か2億数千万画素)で撮ったダー様作の絵があった。
そこには
「限りなく現物に近いレプリカ」
と説明書きがあった。
私と宮さんは思わず笑ってしまった。
なんだ、その自虐的な自慢は。と
限りなく現物に近い、が、レプリカ。
限りなく現物に近い●●(絵の名前)にしておけば
「あぁ、これはすごいんだな」
と思うが、
「レプリカ」
とついただけで、もう自虐的な空気が充満してしまうという塩梅だ。
これは、三浦しをん師匠の言う「名誉助教授」と同じくらい切ないと思う。
名誉のある助教授…きっと教授にはなれないんだろうな…という切なさ。
深く考えられて、ちょっと切なくなれたダ・ヴィンチ展。
楽しかった。
思わず、公式プログラムまで買ってしまった。
(残り2日だったから、1800円が500円になっていた。まさに価格破壊)
そこにあった一文
「1476年 夜間犯罪取締局から男色行為で告発されるが、他の3人とともに証拠不十分で無罪放免となる」
いいよ、ダー様。すごくいいよ。
天才には男色が多いって本当かもね!
あ、もしかしたらダー様が唯一?興味がなかったのは「女」なのかもしれないよねぇ。




