41 わ、ふぅ
先日、ある写真集のタイトルを考えてほしいという依頼がきた。
知り合いの知り合いの写真集だ。仮にゆうた君としよう。
Y君は以前にも写真集を出したことがあり、その際も私がタイトルを考えた。
今回も依頼してくれるなんて嬉しすぎて舞ってしまいそうだ。
今回のイメージは「和」
送られてきた数枚の写真を見ると、まぁ素敵。
茶道の家元の息子のような、若い棋士のようなそんな出で立ち。
「和」と言ってもいろいろあるが、武士のような逞しい男ではなくて、どちらかというと柔らかいイメージなんだ。
こういう感じは嫌いじゃないというか、むしろ大好きな部類なので喜んでタイトルを考える。
「紫苑ちゃんらしく、おもしろいタイトルでもいいよ」
と言ってくださったため、最初は
20年間の粋(生き)様
吾輩は二十歳である~名前はゆうただ~
20年 時は流れた 僕成人
等々、くだらないものをキャーキャー言いながら生み出していたのだが、
「ごめん、やっぱり真面目にしかも短い言葉でお願い」
と変更があったため、頭を抱えて悶絶していた。
私に真面目を求めるなんぞ、愚の骨頂だ!!
とも言えるわけなく、百人一首や色の和名の本や歴史の教科書などを持ちだした。
それにしても、古くからある日本語って本当に美しい。
東雲
とか
千紫万紅
とかすごくいい。
短い言葉なのに情景が浮かぶようだ。
文章を書く者の一人として、昔の日本人の言語センスがうらやましい。
だが、20歳の男の子の写真集につける名前として使えそうなものがなかなかなく、煮詰まった私は母に助けを求めることにした。
あんまり期待はしていなかったが、母はときたま巧妙な言い回しをするのである。
「ねぇ、ママン、和っぽい言葉なにか言ってみて」
「和式便所」(即答)
私が悪かった。
母にこんな質問する私が悪かったよー
ぐぬぅ。と苦悶する私を見て母は
「何よ、何かお母さんに考えてほしいことがあるなら言ってみなさいよ!」
と胸を張っておっしゃった。
「ママンにはムリだと思うけど、もう一度だけ聞いてあげよう。前にゆうた君の写真集タイトル考えたでしょ?第二段が出るらしくまたタイトルを考えているのだけど、今回のテーマは「和」なんだって。何か「和」で良いイメージの言葉ないかしら?いい?良いイメージだからね!ぼっとん便所とか言ったら許さないよ」
「そうねぇ、‘ろまんちっくゆうた’とかどうかしら?ろまんちっくはカタカナじゃなくて平仮名で」
そう言う母の前には『ろまんちっく牛之助』というマンガが……
「お母さん!パクリはマズイよ」
「そうねぇ、じゃあ‘元服たいむ’たいむは平仮名で」
「…どうしても横文字を平仮名で表記したいんだね……」
「だって、‘大正ろまん’っぽくていいじゃない。ふふう」
「ん~……(苦悩)できれば短い言葉が良いらしいよ。一文字とか二文字とか」
「そうなの?」
そこでおもむろに携帯を取り出して何やら調べ出す母。
私も電子辞書の『言葉さがし辞典』で良い言葉を探す。
「陽光」「東風」などなど、爽やかなイメージのゆうた君にはピッタリだと思うのだが
どこかパンチが足りないのだ。
すると母は「なまいき」なんてどう?
と言ってきた。
「だーかーらー!!良いイメージの言葉って言ったでしょ?何を聞いてるのお母さん!」
と少々声を荒げて問うてみると母は
「あら、良いイメージよ。混じりけのないさまって意味だもん」
ちょっと待ってよ。御母上……
それってもし
「生粋」のことでやんすか?
おそるおそる母の携帯を覗きこむとやはり「生粋」の二文字が……
ナイスだよ、お母さん!!ナイスボケ!!
「生粋」を「なまいき」と読ませたタイトルが似合うほど、ゆうた君は子供っぽくないが、もっと幼いころに出す写真集ならばベリーグッドだと思ったので、依頼してくれた方にゆうた君じゃない子がもし写真集出す時は使ってみてください。と話すと、喜んでくれた。(社交辞令じゃないことを祈る)
だが、まだ肝心なゆうた君の写真集のタイトルが決まらない。
今日もまた徹夜で考えることになるだろう。




