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27 ひろしのふぇろもん

幼馴染Mちゃんは、本人いわく「大食(おおしょく)人種、盛りガール」なんだそう。

意味はつまり大食いだ。


そんなMちゃんと共に、O大学の文化祭に行った。

目的は、玉木宏のトークショーだ。

私たちは早朝7時に集合し、開場3時間前にはすでにO大学にいた。

大学までの電車内、車掌の声までもが玉木宏に聞こえてしまうという病を患い、満身創痍の勇み足で電車内を走った。


そして、開演1時間前、私たちは会場である体育館に足を踏み入れる。

多分、半径100メートル以内のどこかには確実に玉木宏がいると思うと、いてもたってもいられない。

『これは夢かのう』

『ほんに夢かのう。空気が心なしかフェロってる気がするのう。』

『最近の玉木宏は髪の毛もじゃもじゃ、おひげボーボーだかのう。しかもお風呂が嫌いときたらフェロモンが体中穴という穴から滲みでているんじゃろう』

『ああ。玉木宏の汗でも飛んでこないだろうか』

『髪の毛とかね』

『マイクに飛び散ったミクロの唾液でもいいから採取したい』

などと、少々危ない会話をしつつ席につく。

私たちの席は、センターブロックの後ろから2列目。

あまり良い席ではないが、これ以上鮮明に玉木宏が見えるポジションに行ってしまったら私たちは石になってしまうであろうよ。と自分たちを慰めた。

もっと前で見たいだなんてこと…ない…んだから…ぐし。


席には一枚のアンケートがおいてあった。


質問1 あなたは恋人と別れたあと、友達に戻れますか?

質問2 あなたの(ギルティ)を教えてください。


興味深い質問は、玉木さんのラジオにで放送されます。

採用された方は、本日玉木さんとの会話のやり取りを行うことができます。


と書いてあった。

これは、やるしかあるまい。

私たちは必死に過去をさかのぼり、ギルティをみつけだそうとした。

しょっちゅう悪事を働いていると思うのだが、こういう時に思いだせない。


人は悪事を忘れてしまう生き物なのだ。

それ自体がギルティなんだ。


と書こうとしたら、Mちゃんに引きとめられた。

紫苑ちゃん、私は最悪な悪事を思い出したわ!と。


以下、Mがアンケートに書いた文章である。


それは、私がまだ幼く、世の中の善悪もわかっていなかった頃の話です。

その時分、ローラースケートなるものが私の学校では流行っていました。

私はわりと早くからローラースケートを乗りこなし、ぶいぶい言わせていました。

そんな私に幼馴染のSは「私にローラースケートを教えて!」と教えを乞いてきます。

私は快くOKし、彼女との特訓が始まります。

彼女の運動神経は皆無、いくら親切丁寧に教えても一向にうまくなりません。

友達思いの私ですが、いくらなんでもイライラとし、ある作戦を実行します。

それは、食いしん坊な幼馴染にうってつけの策でした。

私は木の枝を用意し、その先端に糸を結びつけ、そのまた先端にお菓子を縛り付けたのです。

そして、彼女の前に差し出すと、「ほれ!ほれ!お菓子があるぞ~食べたきゃこれを取ってみな!」

と言い放ったのです。

これだけでも、彼女はかなりの羞恥心を持ったことでしょう、今思えば完全にバカにしています。

しかし、彼女は「うわぁ。お菓子ぃ!」と生れたての小鹿のようにへっぴり腰で私の後を追ってきます。

そして、彼女はやり遂げます。

私のもとへたどり着き、お菓子の袋を掴んだのです。

その時のことは今でも忘れません。

彼女が、私がもうすでに食べてしまったお菓子のごみを握る、あの乾いた音を…

必死にこちらへ向かってくる彼女を見つつ、味わったあのお菓子の味を…


私は罪深い女でした。

今ではこうして、肩を並べて玉木宏さんのトークショーを見に来られていますが、いつ、彼女に復讐されるかと思うと、背筋が凍る思いです。


『か、完璧だよ、Mちゃん。確かに、あの時のことは今でも忘れない。食べ物の恨みは根深いのだ』

『ふふふ。そうでしょう。罪深い女を語りつつ、今では一緒にここにいると告げることで、私たちは2人で玉木宏と会話できるチャンスをつかみ取ろうとしている。玉木宏に選ばれたら、食べ物の恨みなんて綺麗さっぱり消え去って、その上頭が地面にめり込む程感謝してくれても良くってよ』


こうして、Mちゃんの書いたアンケート用紙はスタッフのお姉さんへと託した。

ちなみに、一番目の質問、別れた恋人と友達に戻れるかという問いに対しては、2人とも経験不足なために回答を控えさせていただいた。御免!



そしていよいよ玉木宏が登場。

司会の女の子は極度に緊張して『玉木さん!宏さん!どうぞ!!』

と言っていた。ほら見ろ、あまり近くにいすぎると、とんでもない恥をかくんだぞ!!(負け惜しみ)


玉木宏は、まさかの後ろからの登場だった。

すぐそこを憧れの玉木宏が通っていく。

あぁ…幸せ…

フェロモンがぁ…


玉木宏は、司会の女の子が緊張してグダグダになっていても、気にせずに、ツッコミを炸裂させていた。

『玉木さん!宏さん!ってなんだよ!2人いるみたいじゃない』

玉木さんのフェチはどこですか?の質問に『おしり』と答えて、司会の女の子が『私のおしりはどうですか?』の質問に

『座ってるから見えねーよ!』

とか、休みの日にはドライブに行くと聞いて司会の女の子が『私も連れて行って』というと、ばっさり『やだよ』

とか、あぁ、千秋先輩…らぶ…ポッ

みたいにのだめ気分になった。

だけど、見た目は白ワイシャツをパリっと着こなした千秋先輩ファッションではなく、白いカットソーにヴィトンのストールという逞しさ。ああん!ワイルド!!


そして話題は男女逆転大奥について。

男同士でのラブシーンがあるという、私にとっておいしい映画。

玉木宏ももちろん撮影を行ったそう。


『監督はリアルを追及しようと言っていた。普段は、ラブシーンをする方だけど、される方はどうやったらいいのかわからなくて、相手(佐々木蔵之助)にまかせる形になった。あと、リアルを追及するってどこまで!?と思って、声は出しますか?と監督に質問したら、声は出さなくていいと言われて、全然リアルじゃねぇ!と思った』


と、想像したら、鼻血のプールで泳げそうなくらいの話もしてくださった。

こんなピンクな話だけではない。

司会の女の子が、『あー緊張しすぎてダメだ―すいません、すいません』

と謝ると、

『他人は自分が思っている以上にダメだとか思わないし、気にしたりしないよ。大丈夫』

と言って慰めてあげていた。


好きだ。

玉木宏。

腐った私も愛してくれるかい?



そして、楽しい時間も終わりが近づき、お待ちかねのラジオ収録コーナーが始まった。

玉木宏にアンケートが渡される。

ここから先は、きっとネタばれになってしまうであろうから、玉木宏のラジオをお聞きください。

ひとつだけ言えるのは、私たちの罪など、天使のいたずらのようだということだ。

世の中には、ツワモノどもがはびこっているのだ。

私とMちゃんは、私たちって、かわいいね。うふふ。

という共通の認識を新たにし、ラジオ収録を楽しくきいた。


そして、玉木宏は去って行った。

その後フェロモンの過剰投与による副作用がでて、食べまくり飲みまくり反芻しまくり酔いまくり(玉木宏に)でその後のことはあまり良く覚えていない。

ただひとつ、覚えているのが、急行電車に向かって

『玉木宏、結婚してくれー』

と叫んだこと。

電車内の人が私たちの行動にほくそ笑んでいたこと

のみである。


笑いものでもいい。

『他人は自分が思っているよりもダメだと思っていないし、気にしていない。』

その理屈でいくと、私は自分のことをダメだと思っていない上、素敵な人物を愛でる我が心は崇高だと思っている。ということは、他人は私のことを更に崇め、奉るということだ。


そんな理屈はあるか!

と脳内で玉木宏が私をなぶる声が聞こえる。

あぁ…し・あ・わ・せ

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