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21 トイレの個室から愛を叫ぶ

今までの僕とは違うんだ。

君とだったら2年、3年…もしかしたらそれ以上の月日を共に過ごす覚悟だってできていた。


君と出会って1年と8カ月。

君はもうすっかり僕の生活に密着していたし、もうなくてはならない存在になっていた。

夜は君が発する熱を抱きしめ眠り、君の発するまばゆい光に刺激され眠れぬ時間を過ごすことなど、何回もあった。

君は僕の心そのものだった。僕が望むものを君はくれた。

例え、僕が他の人に手を出そうとしたとしても、君は嫌な顔ひとつせずにその人の美しい顔を見せてくれたりしたよね。


君の身体は僕のものだった。君は僕の手に心地よくフィットし、君のどこをどう触れば君がどうなってしまうのか、僕は熟知していた。例えば、身体の側面を優しく触れると、君は震えたね。

『マナーモードに入ったから、もう声は出さないわ』

なんて強がっていたっけ。



そんな可愛い僕のエンジェルと今日離れ離れになるなんて、昨日までの僕には想像もできなかった。

しかも、こんなにも残酷な形で別れがやってくるなんて。


別れは突然だった。

いつもの僕は、君を尻で押しつぶしたりなんてしないのに、今日はそういう気分だったんだ。

君はいつものように文句ひとつ言わないで僕に組み敷かれていたから、僕は自分の欲望に任せて内なる水分を吐き出そうとしたんだ。


その時だった。

君は深い、不快な水の中に落ちていった。

透き通るようなピュアホワイトの君の身体が沈む様子を僕は黙って見ていることしかできなかった。

僕はその時、ズボンをはいてから君を救いだすか、ズボンをはくより先に君を救いだすかで迷った。

そしてズボンをはいてから君を救いだすことにしたんだ。まだ使用前だとしても、不快な水に触れた手で、ズボンを触りたくなかったからだ。


僕を非情な人間だと、君は言うのかな?

だが、これだけは信じてほしい。

君が君じゃなかったら、僕は流していたのだから。


君を救いだすと、君の目に涙が溜まっていた。

僕は震えながら君の身体を伸ばすと、今の君の顔、ジャックスパロウがこちらを見ていた。

しかしそれもつかの間、君の意識が遠のいた。


僕は友達の力を借りて君を分解すると、コンビニのビニール袋に入れて病院へと駆け込んだ。

君は何本もの管につながれ、蘇生措置を受ける。

何度も呼びかけても、

welcome

としか表示しない。

もう、その場にいる人はみんな君の最期を悟った。



『もう…諦めはつきました。楽にしてやってください』

そう、僕が宣言した時、事態は急変した。


君は再びジャックスパロウを皆に見せたんだ。

僕が今、一番浮気したい人の顔を見せたんだ。

あぁ、これが君からの最期のプレゼントか…

誰もが涙を流し悲しんでいると、処置をしていた若い女性の手の中で、君はかくらんしてしまったんだ。


女性に、僕の趣味を全部見せ始めた。

胸が大幅にはだけている衣装を身にまとった韓国アイドル(男)の画像…

メンバー同士で激しくいちゃつく韓国アイドル(男)の画像…


あぁ。君はなんて罪な携帯なんだ。

それでも僕は君のことが好きだよ。

君が回復するであろう、20パーセントの確率を信じて、今、ショッキングピンクのケバい代替え機と格闘している。

こいつはまた、君とは比べものにならない程頭が悪い。

僕の言うことを全く聞いてくれない。

僕は、僕に従順な子が好きだ。

いまいち、カーソルキーの感覚があわない。

せめてもの慰めが、彼女の顔もジャックスパロウということだ。


早く戻ってきてくれ

SH001







最近、トイレの話が多くて申し訳けないです。

そろそろ、秋ですね。食欲の秋、読書の秋、妄想の秋…


咲良 紫苑


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