20 プールの悪魔=便秘ガール
道行く外人が「oh!!便秘ガール!!」と奇声をあげた。
私は「よっぽど下っ腹が張っちゃってる人なんだなぁ」と思い失礼だと思ったが、ほくそ笑んだ。
奇声をあげた外人は満面の笑みで便秘ガールに向かって歩みよってきた。
便秘ガールの反応はいかに!?
耐えられなくなって、後ろを振り向くと、そこにはサラリーマン風の男が歩いているだけだ。
はて、この外人はこの暑さで頭がだいぶ沸騰しているのか?と思い、再び正面を向くと至近距離に外人の顔があった。
「うわぁっ!」
驚く私に向かって「便秘ガール、ショクモツセンイたくさんとってネ。スイブンもしっかりネ」
そう言うとそのまま去っていった。
便秘ガールって俺のことだったのかっ!!!
しかし、なぜ外人は私が便秘であることがわかったのか。
不思議でならない。
便秘の相というものがあるのだろうか。
それとも、下っ腹がそんなに目立つのだろうか。
もし、下っ腹がそんなにも目立つのであれば、私はこの夏大変な恥をさらしてしまったことになるのだぞ。
だって、サ●ーランドに行ってしまったから。
バレエの発表会も無事に終わり、もう日焼けをそんなに気にしなくても良くなった私と先輩、小悪魔ちゃん(仮)はプールに行く計画をたてた。
サ●ーランドは東京郊外にある複合型テーマパークだ。
私は、羞恥心と戦いながら水着に着替えて、自分のためにも、周りのためにも露出を極力少なくするために移動中はパーカーをはおることにした。
一方、小悪魔ちゃんは、本当にスタイルが良くて、セクシーな黒い水着が本当によく似合う。
女の私もほれぼれするくらいだ。むしろ
「どうだ、俺の彼女は。美しいだろう!!ぐへへ」
と彼氏な気分になった。
まず最初に向かったのは、波のプールだ。
波のプールは、1時間に1回5分間波が発生する。
前の方に行くにつれて、水深が深く、私たちは水深1.3メートルのところでスタンバった。
私の身長は1.5メートルだから、つま先立ちでやっと足がつくといった深さだ。
俺、泳げないけど平気か?…と思い、ふと横を見ると、真っ黒に日焼けした監視員の兄ちゃんがいた。
なんか違和感があると思ったら、アメンボのように細かった。
こんな細かったら、おぼれた人を救助できないじゃないか!!と憤りを感じる。むしろ、その細さがうらやましくて嫉妬に似た感情だった。
そして、更に身体をひねり、真後ろをむくと、浮き輪にすっぽりとはまった彼女とその彼女を後ろから抱き抱えるようにしている彼氏の姿が目に入る。
「まー君、怖いよぅ。波がザバーってくるんでしょ?おぼれちゃうかも」
「俺が後ろからこうやってぎゅーってしてるから、大丈夫だよ~ははは。全く怖がりさんだなぁ」
水が彼らの周りだけ、沸騰しそうだ。
私のところは氷が張りそうだぜ。
私は、純真無垢な子供のような瞳で彼らを見つめることにした。
自分たちの行動がどれだけ破廉恥な行動か思い知れ!!
俺の瞳はこんなに澄み渡っている!!恥を知れ!!
その時、小悪魔ちゃんの
「あ、紫苑!波が来るよ!」
という言葉で振り返ると、そこにはもうすでに壁のような波が押し寄せていた。
私は見事波にのまれた。
左から小悪魔ちゃんの「紫苑しっかり!」
という声
後ろでカップルの「キャー怖い!!」「大丈夫大丈夫俺がついてる!」
と言う声が聞こえた。
再び水面に浮上して息をしようと吸い込むと、第2陣の波がきて、またもや沈没。
今度は、右の方から、「しっかり立ってくださぁい」という弱そうなアメンボ監視員の声。
お主!俺は立てぬのだ!助けろ!
だが、お前が助けに来たところで俺はお前よりも太いから共倒れ、嫌、共沈みだ!!
どうせ死ぬなら、カップルと一緒に沈没してやる!!2人の世界もこれで終わりだ!
私はついに、プールの悪魔と一体となった。そして、次に沈んだ時にプールの底を思い切りけり飛ばし、カップルの浮き輪をめがけて浮上した。
いきなり、水面から悪魔の笑みを浮かべた女に自分たちの愛の浮島を侵略されたカップルは、悲鳴をあげた。彼氏は彼女から手を離し、おびえて1メートルあまり後ろに退いた。
見ろ、この彼氏の無様な姿を。彼女を置いてプールの悪魔から逃げる姿を。
2人の愛なんてこれっぽっちではないか。よくわかったか。これに懲りたらプールでいちゃいちゃするのは辞めることだな。
そのあと、小悪魔ちゃんは、カップルに平謝りし、今度波のプールに来る時はもっと水深の浅いところで、私と手をつないで入ろうね。と提案してくれた。
なんていい先輩…涙涙
続いて、私たちは流れるプールへと歩を進めた。
サ●ーランドの流れるプールは日本最大級の長さをほこる。
皆、プカプカと水面に漂い、ゆったりとした時間が流れている。
一方、私たちは、浮き輪を忘れたために全く流れられなかった。
浮き輪のない流れるプールってなんだかつまらないね…と寂しそうに言う小悪魔ちゃんを見て、俺の彼氏スイッチがオンになる。
俺が、楽しくしてやるぜ。
私は目の前に浮かんでいる島(殿様が座るような椅子型の浮き輪)に乗って漂っているカップルが先ほどから気になっていた。波のプールで悟った私の使命は、この、子供たちがたくさんいる楽しい夏のプールで、教育に悪い影響を与えるような破廉恥カップルの撲滅を推進すること!!
皆で育てよう!清い心!!をテーマに、俺は一歩を踏み出す!!
私は忍者のようにカップルの浮き輪に忍び寄ると、浮き輪の空気弁をスッとあけた。
このまま流れるプールに沈むが良い。皆に好奇の目線で見られるがよい。
またもやプールの悪魔と一体になる私。
すると、後ろの方から、「紫苑!ダメでしょ!!」と小悪魔ちゃんが怒る声が聞こえた。(笑いながら)
小悪魔ちゃんは、そっと空気弁をもとに戻すと、
「もっといい方法があるから」
と言って、浮き輪に乗る彼氏の方に
「すみません。水着の紐が引っかかっちゃって、空気少しぬけちゃいました。ごめんなさい」
とキラースマイル!!
男の方は「全然いいッス」とヘコヘコし、彼女はそんな彼氏をにらみつけていた。
ぎゃー!!小悪魔様!最高っす!!
ひとしきり、笑った私たちは、流れるプールで浮き輪がなくても流れる方法を編み出した。
それは
①正座法
②クレオパトラ法
だ。
①の正座法は、小悪魔ちゃんが編み出した。
プールの底で正座をし、頭だけを水面にだすと、なぜか、スムーズに流れる。短所は外から見てると、生首が浮いているみたいに見えてしまうこと。
②のクレオパトラ法は私が編み出した。
左足は、正座で、右足は前に突き出しかかとをスライドさせるようにする。正座法とだと、身長が低い人の場合、水面から顔が出ないが、クレオパトラ法だと前の足で高さの微調整ができる。クレオパトラという名前の由来となったのは右手を前に突き出し、エジプトの壁画のポーズをすること。これにより、正座法だと頭しか見えなかったところを、右手も見えるようになって生首ではなくなる。
しかし、ポーズの奇抜さから頭の弱い人間に思われてしまうこともあり得る。
散々遊び呆け。良い感じに疲れてきたあたりでサ●ーランドは閉園する(PM5時)
そして、便秘ガールと言われたつい先日、私は流れるプールって腸みたいだ。と思った。
そしてそこを流れる人は滞留便…
今、私の腸内では、この暑さに負けずたくさんの利用客が流れるプールを使用し、渋滞が起こっているのかと思うと、このにっくき便秘も少しは受け入れられるような気が…する…
暑いですね!皆さま、引きこもっていますか?
ありがとうございます。お気に入り登録してくれた5人目のあなた!!
そして、今でもお気に入り登録してくれている4人の方々!!
そして、このエッセイを読んでくれたあなた!!
ありがとうございます!!
これからもがんばりまーす!!
咲良 紫苑




