第1話
最果ての地にて――
「魔王めっ、これで終わりだっ! グランドクロスっ!!」
「わ、我が人間ごときにやられて、たまる、ぐ、ぐおぉぉぉぁぁぁーっ……!」
――この世界に数百年もの間、恐怖の象徴として君臨していた魔王が人間の勇者によって退治された。
これにより、魔王の魔力で創り出されていた魔物たちはすべて消滅した。
人間たちは歓喜し、世界には再び平和がもたらされた。
しかし魔王が死んでもなお、一人の魔族だけは生きながらえていた。
その魔族の名はベリアル。
彼は魔王の忠実な右腕だった男だ。
彼だけはほかの魔物たちとは違い、魔王の魔力で生み出されたわけではなかったので、魔王が消え去った中でも生きていたのだった。
「ゆ、勇者の奴、魔王様をよくも……」
ベリアルは、勇者の攻撃の余波を受けてボロボロになった体を再生させると、勇者に復讐をするため最果ての地を旅立つことにした。
だがその矢先、ベリアルの目の前に黒い球体が突如として現れた。
「な、なんだこれは……?」
不思議に思ったベリアルはそれに手を伸ばしてみた。
すると、
「うおっ!? な、なんだっ! 吸い込まれるっ……!」
ベリアルの体は、黒い球体の中へと飲み込まれてしまったのだった。