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どたばた霊能探偵の夢

【まえがき】

毎度のことながらタイトル詐欺。

探偵モノらしくオチとかはないのよ

港町で幽霊絡みの事件を追う探偵をしていた。小型客船をリノベしたホテル郡で、壁をすり抜け宿泊客のプライバシーを侵害する幽霊がいるとの情報を得た。ホテル側は「幽霊なんて知らん、氏ねクソ霊感商法野郎」という態度で捜査に非協力的だった。


普通に宿泊客として入るのも拒まれるほど。仕方なくファミリー客に紛れてチェックインした。家族が増えてても特に何も思わなかった模様。ダチョウ並みのアホさで助かったぜ。


嵐で大揺れする客船ホテル。乗り物酔いしない体質だけどガンガン身体揺さぶられて吐きそう。居れたもんじゃない。普通の船なら欠航で払い戻しだろうが、ホテルとしては営業してるとの言い分。ファミリーが内線でフロントと揉め、子供がギャン泣きしている。私はどさくさに紛れて入りこんだから詳しい金額は知らないが、横浜のような観光地で一組一船貸しの贅沢宿だ。もともとカップル向けだったのを、富裕層ファミリー向けに路線を切り替えたらしい。平日でも50万は堅そう。まともに払わんでよかった。


客用のスペースに入り込むのが目的だったのでもうこの家族には用はない。怒号で耳がおかしくなる前に別の船に移る。


やっぱ高すぎるのか、今日は空室。海中が見える窓は天候が悪い以前に埃っぽく、フジツボとかいうやつが塞いで使わせる気がない。食器用と思しき戸棚があるが、空。コーヒーセットとケトルくらい入れろや。ただ揺れに合わせて戸がバタバタ開いて危険なだけである。


もはや幽霊関係なしに酷い宿。人に「クソ霊感商法野郎」とか言う前に真っ当な商売をしろ。星一つもつけたくないです。


勝手に入った身でベッドを汚すのはまずいから、(元からベッドメイクもなってないが)ソファーに横になる。寝れる環境ではないが体力をできるだけ温存したい。焦点ぼかして部屋を眺めていると、おばけ2人組がすり抜けてやってきた。戸棚で隠れんぼなどして遊びだす。

本当におばけも居るんかい。虫取り網を模した幽霊探偵グッズを持って追いかける。


「僕らは無害な霊さ。捕まえるべきは他にいるよ」

スピード違反犯か貴様らは、と言いかけたが、本来空室のホテルで遊んでるのは確かに無害だった。


おばけ君曰く、「自分たちですらほぼ痕跡を見たことがないが、西の高級レストランの朝食時間なら、多くの人がいて獲物の品定めには丁度いいのではないか」と。


確かに。VIPも歩けばVIPに当たるこの町で、朝食会場なら上流階級同士が顔を合わせる偶然は必然。交流が多い人間こそやましいことも多いのだろう。


実際に暴露しちゃったら情報収集の手口も大っぴらになるので、内々に片付けてもらうのが犯人には好都合。トレンディに言えばサステナブル。つまりターゲットは週刊誌映えするタレントや有名企業の会長より界隈で有名な投資家とかだ。そして、大衆がよく知らん金持ちが金で女侍らしてたも別にバレてもどうでもいいこと。政治献金とかインサイダーとか「相手方がマズい、どう出るか怖い」系のネタが狙い目と見た。


ーーーー

朝。自分のメシは朝から移動販売車のクレープにした。生クリームが多すぎてきつい。フルーツたっぷりの看板の絵は詐欺だった。


朝食会場で、こたつ布団みたいに長いテーブルクロスに潜って聞き耳を立てる。今しゃがむのマジできつい。ずっと吐きそうじゃん。


シェフが脇に立って、どこかの希少動物のロース肉を低温熟成させ契約農家うんたらの緑色のソースかけたなにがしだとベラベラ語っている。うるせぇ。なんでよりによってこの卓来るんだ。朝から情報量でも胃を揺すってくる。こいつ「イった?」って30秒おきに聞いてくるタイプだな。


いろんな不快感が重なりに重なって限の界。もう無理出よう。ガシマンシェフを膝カックンで転ばせ、「大丈夫ですか!?」と駆けつけた風に出た。

「なんか今足が」

余計なことを言いそうなので、水のグラスをそいつの靴に落として「きゃあ!」と距離を取り逃げる。お前の口は味見以外で開くんじゃない。


テーブルクロスの外は明るい。シャンデリアで三原色に分解され尖った光が網膜を焼く。縮んだように錯覚させる高すぎる天井と、デコボコして見える壁紙。ぐわんぐわんと揺らぐ自己座標。他の人が何だか遠い。


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