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つよつよドラゴンに挑む冒険者の夢

固有スキルを「願い」と呼ぶ世界線。


とある難攻不落ダンジョンに挑む若きパーティがいた。

「ここに冒険者が来るのは久しいな」

耳からでなく脳の空間に直接響く語りかけ。多くの冒険者と対峙し、つんざく悲鳴に近い言葉を学習したドラゴンだ。その情報だけで、二流、いや一流のパーティですらも撤退が賢い選択肢になる。重圧を全身に受けつつ、剣士は静かに鞘を抜いた。怯んでなどいない、依然討つ気だと背中で告げた。パーティのメンバーも武器を持つ手の力を強める。


「よかろう」と言わんばかりに翼をひとなびき。黒なのに色彩を纏って見える。幻想的で壮大な翼が広がる様に釘付けにされるが、災害じみた突風が吹きつけ意識を身体に戻してきた。紛うことなき現実、戦う相手だ。ワンテンポ遅れたが足を踏ん張って耐える。並の人なら岩壁に打ちつけられて即死、最期に見るものがあの荘厳な翼になっただろう。気が抜けない。



ダンジョンボスのドラゴンには討伐パーティの「願い」発動で発生する回復の「願い」があると、事前情報で聞いていた。


ボス前まで順調で回復ポーションなど温存できていた。第一形態は余裕めで撃破。

第五形態まであるらしい。だんだん最大HPは減るけど素早くなるマトリョーシカタイプ。


第四形態、アイテムもほぼ尽き、ボス撃破で出現するワープポイントでないと帰路の安全も危ぶまれる状況になった。背水の陣。魔道士が大技を準備し始める。ちょこまか速いちびドラゴンに当たらない攻撃をちまちまやるより範囲攻撃にして削り切る戦略。彼の本気の魔法を誰も見たことはないが、ドラゴンに挑むくらいだ。王城くらいは更地にする炎を放つだろう。


「ほう。人間、検討違いだな」

体が一瞬浮くように軽くなったかと思えば、よろける威圧感が中央から発生した。

目を背けられない巨体が再び。補助魔法陣も使って残りの魔力をほぼほぼ注ぎ込んで放った渾身の炎の元を、大翼の先の軽いひと扇ぎで消す。


一枚一枚が最高級の盾より堅いオーロラブラックの鱗。町が壊滅する重量の尾を好戦的に振っている。


第一形態、どうして…。


ドラゴンの回復スキルの正体は「呪い」だと。「呪い」と、自身を十種の形態から自由に変化できる「願い」を所持していた。

つまり、姿が変わってたのはHPを順当に削れていたからなどではなく、ただの気まぐれ。

おそらく第一形態と呼んでいる今より破壊的な戦闘力の姿すら…


「回復スキルのどこが呪いだ!!!バカにしやがって!!」


ーーーー


討伐の中継を見ていた私は、テレビ画面越しなのに恐怖で動けなくなった。人類に到底手の出せない圧倒的な力。朝食のウインナーも噛みきれず、フォークを落とす。

「どうすんのよ…」

嘆く独り言に、画面から「どうすればいいと思う?」と返事をされる。ねぇ、聞こえているの…?


ーーーー


かつて番だったメスのドラゴンから受けた回復の「願い」。他の「願い」を使うたびに体力が回復するこのスキルは、自前の変化の「願い」発動でも効果がある。


冒険者パーティが来た。

弱そうなメスから、回復役から撃破するのは戦闘の基本。彼女だけ討伐されてしまい、孤独になった自分に残ったのは彼女の「願い」という名の死ねない「呪い」である。


冒険者よ。ドラゴン、我を…彼女を討ち何を得んとするのか。


絆だろうか。我たちを引き裂いた人間が絆というものを理解する日はゆめゆめ訪れないだろう。

名声か。今も昔もひっそりと岩穴に籠もるドラゴンを屠って何の称賛を求めるのだ。


我に生きてほしいと「願い」を受けたこの身。彼女を生かすため、この身は生きなければいけない。我を倒そうとする者に決して負かされてはならない。


ーーーー


私は支援魔法使いだった。自分には一切バフがかけられず、単騎での戦闘力が終わっていた。それこそバフ役が必要な難関ダンジョンに挑むには回避や防御が弱いお荷物。


あんな中継を見たあとでなおさら自分が無価値に思われる。生活スキルですらなく冒険者以外に道がないのに。



放心状態で日課をこなしていると、赤髪の少女が現れた。

例の中継を見て、ダンジョンに挑みたい気持ちが強まり声をかけたと。あれ見て勇むとは変わった感性を持った子だ。


アーチャー適性があり神託で武器も授かったが、そもそも壊滅的に当たらないので、バフの私と組めば最強☆になれるとの算段だと。


それレベル上がったら私追放されるやつやんけ……。

でも猛烈に無力感に怯えていた今、必要とされるのは嬉しい。しかも美少女。

回復の「願い」のドラゴンのように彼女の中に生き続ける力になりたい。

失礼だな純愛だよ

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