イケイケの女スパイになってバトルする夢
2話目にして悪夢ではない
イケイケの女スパイになる夢。組織のエースだった。
文明は現代だが、上流階級の人間は奴隷を連れていた。奴隷といってもコキ使うのではなく、むしろできるだけ何もさせないで美しく佇ませるのがステイタス。お猫様を飼うようだ。だが、実際はそんな余裕を飼える真の金持ちなど一握り。何もしていない風の涼しい顔を強いらせ、水面下で馬車馬のように働かせられるのが大抵である。主人が寝ている間にあらゆる仕事をこなし、起きている間は姿勢を正し凛と”真の上流階級”の付きであると虚勢を張る。主人が目を逸しているときは何かやれと言う意味なので察して手早く動く。うっかり人前で甲斐甲斐しく動き主人に恥をかかせたときは、これまた人目につかないところで”教育”を受ける。現代で一般にイメージされる奴隷より却って陰湿だと思う。
私も奴隷を2人連れていた。自分は真の方だから佇んでくれるだけで結構だし、2人とも娘のようにかわいくて喜んで養わせてほしいくらいだった。それでも2人とも私を慕ってくれていたので、従者と主人の世話しあいっこが繰り広げられていた。2人は両足を藤編みのザルにそれぞれ収めていた。鉄球のついた足枷よりも自由意志があり、好きで主人に仕えているアピールとしての流行である。当然動きづらく、エセ富裕層は諦めて靴を履かせることが多い。
スパイの業務で上流階級の多く訪れるホテルに来た。場所柄、従者ちゃんズを連れている方が自然なので佇んでもらう。偽共に合わせ、普段より簡素な服を着せる。それでも本物が染み付いてしまっており、輝きに当てられた見栄っ張り偽物共に奴隷スカウトされまくる。汚らわしい!腐った目で見るんじゃねぇぞ。ターゲットの付きの同業者にも声をかけられる。いざとなったら仕事そっちのけでミンチにするつもりでお話させてあげることにした。絶ッッッ対に譲渡する気はないがな。奴隷ちゃんズ本人も主人以外に髪など触られえづくのを堪えている。ごめんね、本当にごめんね。
気が背かれてる間にササッと破壊工作など済ませる。返された奴隷ちゃん達はいじめで切られた学生より下品なヘアアレンジが施されていた。そんなつもりは毛頭ないだろうが酷いセンス。おい人様の子に勝手に何してくれてるの?お前の家の壁紙を全部共産党かショッピング枠現金化業者のポスターにしてやろうか?盗聴器など仕掛けられてないか念入りに確認しながら結い直す。
カラスのほうが数億倍マシなもん選ぶだろうってレベルの装飾品紛いだけで、怪しい物はない。こちらの身元は割れていなそうだ。三下、カスめ。
えらい辱めを受けた奴隷ちゃんズを抱きしめて落ち着かせる。ニ度と離れたくないがここからはしばらく別行動である。エレベーターで派手目のスーツにお色直ししつつ10階ほど昇り、開いたドアから左右に手榴弾を放り投げ迎えを一層。右手に進んだところの部屋をピッキングし、置いてあるパソコンから偽のメールを送りアタッシュケースの中身を入れ替える。窓を伝って左下の部屋に移りまた趣向の違うドレスに替える。
廊下に出て敵女スパイとすれ違ったので「硝煙のチークが心の色とよくお似合いね」「チャバネのようにきれいな瞳ね」など会釈程度のマウント合戦をする。
隠し階段で上に駆け、出口の部屋で要人が寝泊まりしたような演出をし、ついでに敵スパイを煽る暗号文をシャワールームに仕掛ける。
貴族ぶるのがこの夢の世界線の特徴のようだ。見栄っ張り奴隷にしても、身を晒してまで嫌味を言うことにしても、風流でイケている行動らしい。人類史に違わず愚かだ。
窓から隣のビルに飛び移る。そしてドアロックを爆破でこじ開けるエレベーターのボタンを押し、時限式爆弾をセットして1階へ送る。今頃要人は一網打尽の木端微塵でも僕ちゃん無関心 寄こせマージン破壊神 (ラップタイム)oh yheh!
奴隷ちゃんと合流し、ビルの中層から20階分くらい駆け上がる。現実の私は1階分でゲェゲェしてるのに……。今度は低めのビルに飛び移り、タイミングばっちりで来た迎えのヘリに乗る。立つ鳥跡を濁さず、ばっちりねずみ花火のようなきれいな爆弾をばら撒く。
アジトへ帰り従者を改めてブラッシングしながら、今日の仕事ぶりに酔いしれていた。
おやすみなさい