悪魔に身体を半分乗っ取られた夢
(私は教会の運営する幼稚園に通っていた。迷える子羊)
夢の中で複合企業の商社兼店舗部門に配属になった。他部門で取引する各地のご当地品のセレクトショップの運営が業務である。自社ビルのメディア露出や一般の人も出入りさせ知名度アップ、良い品を扱うことで間接的にイメージもほんのり上げるというのが狙い。店員として「これはダム建設事業でお伺いしてる土地の名産品で〜」といったふうに他部門の説明なんかも交える、会社の顔らしい。
研修もその丸の内の自社ビルだ。背筋が伸びる。当社の全体像をさっくりとではあるが3時間は聞いた。そして商社部門らしい内容の重点的な研修も10分程度経過しただろうか。雲行きが変わり、意味不明なパワポを見せられた。「欲しいものを本当の意味で手に入れるには?(お金や労働や交渉など具体的かつありふれた手法ではなく、真の意味で)」
答えるよう指導担当に指名されるが言葉に詰まる。なんだこれ。回答になりうるものが塞がれ過ぎている。「……抽象的すぎて思い当たりません」とパスした。回答を仰がれた、前髪もサイドバングもつやつやの小柄な同期は「盗むことです」と言った。「正にそうだよくわかっている」と指導担当は手を叩いて喜ぶ。はあ?盗んだものが真の意味で自分の物なわけがない。かわいい面して反社会的思考を研修の場で放つ同期を3度見した。かわいい。かわいいけど悪魔やんけ。どうトンチを効かせるのか知らんが研修内容が狂ってる。涙を流さんばかりに喜び過ぎな指導担当も気味が悪い。変な組織に所属してしまった、どうズラかろうか。建物デカすぎて今逃げるのは無理だから明日から来ないパターンか?
嫌に長い時間だと思ったが、称賛も拍手も繰り返すだけで、まるで時が止まっている。
勘付いた私の体からにょきっと悪魔が出てきた。人間の欲をさらけ出すよう仕向け、壊れた魂を喰らう。周りの人間はもう食べカスの魂しか残っていないので動かないということらしい。その能力をダイレクトに食らって冷めた目で居られる私は、欲をさらけ出させるのに不都合だと。しかし一度憑いた以上死ぬまで離れられない。依代ってそんな使い捨てスプーンみたいな役割なんかい。
「周りの人間の欲を加速させ、お前を殺させる」
職場はたった今失ったから住居の周囲だろう。クソ田舎の性悪凡人のちんけな欲の副産物で死体にされてたまるか。
「私を殺してまたコソ泥程度の命かき集めて満足?悪魔クン、私に憑いたことを誇りなさい?」
「やってみろよ」
人間の愚かたることカレースプーンどころかパワーショベルでだって底が見えないものだ。そんなアイス屋の味見スプーンの依代で乾いた表面だけ舐めて全部食った気になるな。地層掘らせろ。
試しに婚式場に来た。
結婚は喜ばしいと同時に精神的負荷の大きいライフイベントらしい。見積もりを取る夫婦は場にのまれかけるも、プランナーのすすめる追加オプションを歯切れ悪くも削りまくっている。一生に一度のイベントは特だがそう予算があるわけでもない。
新婦の感情が流れてくるようだ。
華やかなブーケやフラワーシャワーやゲストに振る舞う国産牛、ロマンチックなムービーはこの新郎との財力では諦めなければいけない。今後一緒に過ごす中でそうやって諦める物が多いのだろうか。「払えないから無理だ」を「要らないよね?」と言い換え同意を求める彼に、何かが芽吹く。
悪魔の能力なのか、女心の共鳴か。
そーーっと商談の場のすぐ横にお邪魔する。途端、純白でリッチな空気がドピンクビッチに塗り変わる。新郎はプランナーの頬に手を伸ばした。その場で濃厚なキッスを始めどちらからとも言えず服が脱げ落ちる。手練れた浮気、倹約は他の女との将来も見据えていたようだ。新婦の方はというとまた別のカップルの高級そうな仕立てのスーツの男にクネクネと迫り、高級男もクネクネと応じだす。先程の新婦の心の声は、少なくとも私の妄想に過ぎなかったわけではないようだ。身なりが良かろうがいい年こいた男がクネる姿は非常に気色悪い。受付の男性も血走った目で、まさかの私に向かってくるので逃げる。場違いだけどスニーカーで良かった。悪魔に空を飛ばせてもらい、”パーティ会場”と化した教会風の建物を見下ろす。教会が荒れてるのはなんだか複雑である。
戻ったときには、組み合わせがバラバラになった猿どもが我に返った地獄絵図が完成していた。
今までの依代ではできなかった、「一度場を離れる」プロセスを経て、理性を取り戻しているが制御できない激情を表出させたようだ。エンゲージリングを必殺カードのように叩きつけ、胸ぐらを掴み、自分を棚に上げ互いを責めまくしたて合う。操られていない本来の負の感情が悪魔的によろしいらしい。天然モノ的な?この場合は栽培漁業ってやつ?
失う物が無いもの同士の敗者しか居ない不毛な泥の掛け合い。生き恥を惜しみなく重ね塗りたぐる。これでもかと醜態ショーを演じ上げた彼等は悪魔に美味しく喰らい荒らされ、同じような罵倒を繰り返すだけになってしまった。永久に一緒に過ごせるようなって良かったな。
そして、悪魔に利用価値を見出された私も、奇しくも式場という場で生涯を共に過ごす契約をした。耳障りなオルゴール達よりずっとマシな境遇である。
洗礼を受けた身だが、人類の理性を崩壊させることでしか生き延びられなくなってしまったのだ。裏切りはいつの時代も甘い蜜の味。創世記でだってアダムパイセンが神を裏切ってる。現に、次はどこでどんな人を不幸にしようか腹積もりがいくらでも湧いてきてワクワクが止まらない。私という人間は依代になる前から悪魔だったようだ。
「ところで受付の兄ちゃん、まだこっち見てない?」
「アイツはまだ欲曝け出してねぇからな」
欲が爆発しかけているが理性も取り戻している臨界状態。1週間ぶりに起き上がったようなヨボヨボの足取りで「本日はお日柄も良く…」などと口上を繰り出す。職業病怖いな?
「ちょ…」
「良かったじゃないか恋人ができて。依代が幸せで嬉しいぞ」
「要らん!今恋人とか人生で一番欲しくない気分すぎる!逃げるぞ!」
また場違い…今度はスラム街で小綺麗という意味のスニーカーで走り出す。が、そこらにいるクソアマの愛液かハイエナ野郎の吐き捨てたツバかなんかで滑って転んで捕まってしまった。転び方として屈辱が過ぎる。誰だよこの惨状生み出した人間は!?背信行為の報いも5G通信のレスポンスなんですか!?
物心ついた頃から刃物でめった刺しにされる夢などをよく見ます。
今回のように夢としては長編のものから、一言で書き起こせるものまで雑多に投稿していく所存です。
睡眠薬が効いて眠りが深くなるか、心から私の人生が楽しくなるか、我々が長い眠りから目覚めるまで夜が来るたびにネタが降る、はず。
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