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DPSタンクのすゝめ  作者: おてら
1/3

ログイン戦争は通過儀礼

VRMMO


15年ほど前に技術革新によって生まれた仮想現実は普及当初こそ富裕層の特権であったが干支も一周する頃には一般庶民にも手が届く程度まで下がりつつあった。

コンサート、映画、医療やデートなど幅広く小市民たちの生活に食い込んで

きているVR技術だが人々が最も目にするものといえばVRMMOだろう。

『貴方だけのスキルプリセットとジョブ選択で思い描いた英雄に』

人というものは何世紀と言う歴史を積み上げたとしてもオンリーワン。

その言葉には勝てないらしく、今爆発的な人気を博しているこの

MMO、ラグナロク・オリジン・オンライン(R・O・G)はサービス開始前の

クローズドベータからサーバーがパンクしかけると言う2000年代ならいざ知らず

の事態を巻き起こしていた。


「僕もそんな事象に踊らされている一人なわけですが...」


仕方のないことだと思う、いつだって男の子は僕の考えた最強が実現できる事を

心の何処かで願ってしまうものなのだから。

そんなゲームの正式サービスは何を隠そう今夜23時から。一般社会人はもちろん企業戦士にも

優しい親切設計である。


今日は飲みに誘ってくれる優しい(?)上司を振り切り花金でごった返す駅構内を走り抜け

家事もすべて終わらせてきた。まさにゲームに挑むには万全すぎる状態である。

参加できず枕を涙でべちょべちょにしながら読み込んだ掲示板サイトの情報でキャラクターの方向性もばっちり定まっている。


ずばり、向かうべくはDPSタンクだと。

少しでもMMOに知見のある人間がこの単語を目にしたら確実に混乱を起こすであろう相反する二つのプレイスタイルを掛け合わせるのだ。なまじやろうとしても中途半端な結果になり生まれるのは産廃なのがたいていのオチだがこのROGであれば、うまくいける...気がする。


実況スレッドも中々の盛り上がりを見せる中、ついに事前ダウンロードの完了のお知らせが届く。興奮と緊張が入り混じったなんだか変な感情を抱えながらついにVRセットを手に取り、意識を手放していく。最新鋭のVR寝具なんかは睡眠を検知すると自動的に電脳世界に意識を飛ばし、その人一人一人に最適な睡眠を提供してくれるらしいが庶民には到底手の届く金額ではないためウチにあるのはシンプルなヘッドギア型だ。


CM等で幾度となく見たOPムービーを堪能した後はいよいよキャラクターメイキングとなる。と言ってもどこまで行ってもベースは自分なので精々目の大きさだとか体形を少し弄る程度なのだが。あまりにも改変しすぎると身体幻惑症候群(アリスシンドローム)の発症率が急増しかねないようなので警告画面が出る。それでも一定数は異形プレイをする人たちもいるみたいだが


キャラクターメイキングが終わり現在時刻は22時50分。

VRギアが身体の興奮を検知し心拍数を視界の左上に共有してくるがそんな物も気にならないくらい目の前に現れた画面に釘付けになっていた。今まで数多くのMMOをプレイしてきたがこの瞬間だけは何時になっても慣れることがない。


無情にも投げ返される≪このゲームはまだプレイできません≫が明滅すること早数百回実際に連打したって意味はないのだろうがこればかりは流行る気持ちを押し付ける所が必要なのである。わかってほしい。そして暗闇の中コンソール一つだった世界にいきなり目が焼けるかの様な純白が訪れ


≪R・O・Gへようこそ!!≫


一枚のポップアップと共に僕の意識はROGに飲み込まれていった。


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