姿見
思考が絡まった頭であるときのほうが
覚えが良かったりする
彼女、いや彼の言う「異常状態」は
着実にこちらに迫ってきた。
夕方の赤みがかった空に真っ白な六角形のパネルのようなものがどんどん増えては広がって行く
「なんかこっち来てんだけど?!」
そう言い背を見けて逃げようとする自分の袖を掴み言う
優しい目で少しニヤリとした顔を見ると
一瞬、時が止まる
「気ならないかい?」
「え?」
突然の、予想外の言葉に思わず声が裏返る
そんな自分を横目に、落ち着き払った様子で続けた
「異常状態の中心地では必ずあることが起こっている
大丈夫、僕もいるさ」
もぅ…どうして、こんなことに…
あれは3時間ぐらい前のことだった
多分…
暑い夏、急に変化する温度に体調を崩すのでは無いかと思うぐらいの寒暖差
アスファルトがジリジリと蜃気楼を作っている
重たい荷物を背に抱えながら歩いていた。
疲れ切った頭はもはや足を動かす以外の命令は出していない
ふと足が止まり肩から荷物がズルリと落ちる
「かが…み?」
ちょうど身長程度ある鏡がポツリと道の脇に佇んでいた
周りには金の装飾が程そされており、いかにも高そうなのにも関わらず、放置され苔やつるが絡まっている
が、それに反し鏡面はピカピカの新品のようだ。
そんな違和感の塊に映る自分の手には
「金色の…わっか?」
疲れた頭が輪っかに手を伸ばせと命令を出す
恐る恐る鏡に映るその輪っかに手を伸ばすと手が鏡に入る
我に返り手を引くと鏡はなくなり草原に佇んでいた。
ノゾは作る派です