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第八話 ラフレシア

 ――そして、一時間ほどが経過。


 大分森の中へと入ってきたところで、やっと目的地へ到着した。

 そこは、枯れた木々に囲まれた大きな広場。


 その中心に、巨大な花が一本花を咲かせていた。赤い花弁を持った、真ん中に巨大な口のある花である。

 花は首をもたげるようにゆっくりと動いていて、ずろずろと地面の所々が根っこが飛び出て、にょろにょろと蠢いていた。

 エルトールが地下をもう一度探知してみると、やはり根っこは全てあの花に集まっている。どうやら、あれが元凶らしい。


「あ、あれ……確かAランク魔物のラフレシア……?」


 アリサが木の陰からのぞき込んで呟く。どうやらラフレシアという魔物らしい。……魔物の事は詳しくないので、よく知らないが、Aランクと言うのは強いのだろうか?


 そうこうしていると、アリサが杖を抜いていた。どうする気だろうと思っていると、なんとエルトールに杖を向けてきたのである。


拘束バインド!」


 その瞬間、杖から現れたロープのようなモノが飛んできて、エルトールをぐるぐる巻きにしてしまった。


「……何するのさ」

 考えが読めず、その場で困惑するエルトール。

「悪いわね。エルにはここで待っていてもらうわ」

 アリサはそう言って、ラフレシアの方へ歩き出した。


「まあ見てなさい! あたしがあいつを倒してくるから!」


 と言って、飛び出して行ってしまった。


(……しまったな……)


 エルトールはバチン! と拘束を解いて、立ち上がった。

 まさか一人で飛び出すとは。牛頭にも苦戦していたのに、無鉄砲もいいとこだ。

 そっと向こう側を覗くと、案の定の光景が広がっていた。


「うわっ!?」

 

 慌てて後ずさるアリサ。そこへ、鞭のように根っこが飛んでくる。

 アリサは杖を構え、「防御プロテクション!」と叫んだ。

 魔法の壁が展開され、それと根っこが衝突する。だが、魔力が足りなすぎる。バリン! と音を立てて防護壁が空中で割れた。


「きゃあああああっ!?」


 吹き飛ばされるアリサ。エルトールは瞬時にその後ろに移動して、その身体を受け止めた。


「全く……無鉄砲すぎだぞ、君は」


 抱かれたアリサはきょとんとこちらの顔を見て、

「え……? な、なんで!?」

「あの程度の魔法、拘束の内には入らないよ」

 エルトールはニヤッと笑って、振り下ろされた根っこに対し、

防御プロテクション」と呟いた。


 その瞬間、びしりと空気が張り詰める。こちらに降ろされた根っこは、空中でびたりとその動きを止めた。


「え……、え!? つ、杖は!? 今、杖無しで魔法を……!?」


 少し距離を取って、アリサを地面に降ろす、その間ずっと攻撃が飛んできていたが、全て空中で防がれていた。


「な、なんで!? え、エルがやってるの!?」

「落ち着きなさい。ほら、集中して」


 アリサの肩に手を置いて、杖を持ち上げさせる。

 直ぐに倒してしまうこともできるが……、ちょっとだけ、余計なおせっかいをかかせてもらう事に決めた。


「いいか。君の魔法は少し乱雑すぎる。もうちょっと魔力を意識しなさい」


 アリサは混乱しているようだったが、構わずに、


「まず、魔力を感じる。そして、手のひらに集める。いいか、呪文に頼っちゃだめだ。それじゃあ、渡された道具をただ使っているだけだからね。大切なのは……道具を自分で創り出す、という事だ」


 魔力を自分の手のひらに集め、そして炎に変換してゆく。

 アリサは口をあんぐりと空けて、こちらの手のひらで渦巻いている炎を見つめた。

 炎はどんどん勢いを増してゆき、エルトールは手のひらをこちらへ叩きつけられている何本もの根っこたちへ向けた。


火炎弾ファイアボール


 ――その瞬間、大気が焼け焦げた。

 ドォォォォォォ!! と巨大な炎が二人の目の前で渦巻き、球体と化し、それが凄まじい勢いで根っこたちを吞み込んでいった。根っこが炎の中で黒くなってゆく。


 そして数秒後、天空へ炎の弾は撃ちあがって行き、凄まじい大爆発を起こした。

 第二の太陽が辺りをまぶしく照らす。地表は熱で煙を上げ、凄まじい有様となっていた。


「な……んな……なあっ……?」


 がくがく震えているアリサ。

 しかし、もう混乱している暇はない。ラフレシアはぶすぶすと煙を上げながらも、がっとこちらに口を開き、何か液体を放出してきた。


「アリサ、防いでみな」

 そう言って、ポンと肩を叩く。


「ふえっ!? ぷ、防御プロテクション!!」


 咄嗟に展開された障壁が、こちらを囲むように広がる。敵の液体はそれに衝突し、どろどろと障壁に穴をあけてこちらに入り込んできた。

 仕方がない。エルトールはアリサの背中に指を当て、そこから魔力を流し込んだ。


「そのまま、見えない壁をイメージして」

「や、な、何かが! 何かが入ってくる!?」

 魔力の感覚を怖がるアリサ。

「それが魔力だ。もともと君にもある物だから、怖がることはない。ほら、集中しないと破られるよ」

 

 バキバキと障壁にひびが入り、そこから敵の液体がにじみ出てきていた。アリサはこくりと頷き、「壁……壁……」と呟き始めた。

 そして暫くすると、ヒビがどんどん塞がっていったのである。


「そうそう、上手上手」


 ポンと頭に手を置いてやる。そしてそのまま障壁は、敵の液体を跳ね返した。

 そしてアリサはふらっと倒れそうになった。慌てて身体を支えてやる。

 アリサは汗だくで、息を大きく切らしていた。せっかくだし攻撃魔法も直してやりたかったが、まあこれだけでも上出来だろう。


 ではここからは、こちらの出番だ。


「アリサ。せっかくだし、本物の魔法を見せてあげるよ」

 そう言って、ラフレシアの方へ歩み寄る。

「本物の……魔法……?」呟くアリサ。


 エルトールは頷いて、手をラフレシアの方へ向けた。

 敵はというと、新たな触手を何本も出現させて、それを重ね合わせ、巨大な腕のようなモノを作り出していた。さらには敵本体の口に魔力を集め、何かの魔法を繰り出そうとしているらしかった。


 だが、遅い。

 エルは瞬時に魔力を放出し、目の前に光の球を作り出した。

 ゴオオオオオオと音を立てて、周囲の風が光の球を渦巻いてゆく。アリサはそれを見て、理解した。あの光の球は……不味い。何か生物としての本能が、それを警告してきている。

 ただの光ではない。すべてをかき消すほどの、圧倒的な力の渦。

 

 エルトールはそれを手のひらに浮かべて、そして、ラフレシアの方へ撃った。


超新星スーパーノヴァ


 そこから先、アリサには真っ白な光景しか見えなかった。何もかもが白に飲み込まれ、浄化されてゆく。

 そして――永遠とも一瞬とも感じられる時間の中に、彼女は呑み込まれていった。


面白いと思った方、高評価とかブクマとか感想とかしてくれると滅茶苦茶嬉しいです!!!

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