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第五十話 チェイス

跳躍ケイパー!!」


 自分に魔法をかけ、大きく地面を蹴る。途端に体はものすごい勢いで上昇し、樹幹の上を放物線を描いて、そのままもう一度地面に着地した。

 その少し後ろを、


『ガアアアアアアア!!』


 サイクロプスが木々をなぎ倒しながら追ってきている。


「くそ……」

 リックはブレンダを抱えたまま、たった一人で逃亡を続けていた。速度的に直ぐに追いつかれると判断したリックは、他全員にバラバラに逃げるよう指示したのだ。


 そんな中、サイクロプスはリック達を追う事を決めた。明らかにブレンダの事を狙っている。自分に爆破エクスプロージョンをかけた相手がだれか理解しているのだろう。


 もう一度跳躍し、着地する。その時、木の根っこに足を引っかけた。


「ぐっ……!?」


 転びそうになるのをぎりぎりでこらえ、「跳躍ケイパー!」もう一度ジャンプする。


 このままでは、直ぐに追いつかれる。向こうの狙いはブレンダなのだから、彼女を手放せば生き延びられるだろうが……、


「う……リック……」

 薄く目を開き、うめき声を上げる彼女。

「…………」リックはその顔を見て、瞬時に決断した。


 地面に着地し、ブレンダを草むらに投げ飛ばす。

「うっ……」どさっと倒れ、そして傍目には彼女の姿は見えなくなった。そのままリックは踵を返し、サイクロプスの方へ走り出した。


 ――やるしかない。


 杖を握りしめ、勝機を探してみる。今自分が使える魔法は全て低級魔法。皆よりも学校に入るのが遅かったため、その種類も少ない。少し前に魔力操作の基礎作りを終えたばかりなのだ。


 暗闇から、木々が倒れる音が聞こえてくる。リックはその中に杖を構えた。勝機は全く見いだせない。

 しかし、最早逃げるという選択肢はあり得なかった。

 暗闇から一つ目が顔を出す。そこに、


爆破エクスプロージョン!!」


 魔力が一気に持って行かれ、杖の先で構築されてゆく。

 だが、……複雑すぎる。


 リックは何とか魔力を制御しようとしたが、追いつかず、直ぐに破綻した。魔法が崩れて行き、そして杖の先で、バンッ! と破裂した。

 身体が吹っ飛ばされ、木に背中から追突する。背中を強打し、呼吸が止まった。


 サイクロプスはこちらを嘲笑う様に、ゆっくりとこちらへ歩いてきていた。……殺される。もう抵抗できる手段は無い。もう、自分だけで満足してブレンダを見逃してくれることを祈るしかなかった。


 手を伸ばされ、リックは目をぎゅっとつぶる。


 しかしその時、突如両者の間に、石の巨大な塊が飛んできた。

 驚き、二人とも横を見る。森の中から、さらに石が飛んできて、サイクロプスの手に衝突。

 そのまま腕を吹き飛ばしてしまった。


『グオオオオオオオオ!?』


 切断部から血を吹き出しながら、よろめく巨人。そんな中、森の奥から人が歩いて来た。茫然とそちらを見る。人影が月明りの当たる場所まで出てきて、その姿がはっきりと分かった。


 そこに居たのは、金色の髪を持った少女だった。青色の瞳でリックとサイクロプスを交互に見て、それから手に持っていた白い杖をサイクロプスへ向けた。

  

 巨人は慌てて森の中へ逃げようとする。


「だめ」


 少女が静かに呟いた。すると巨人の身体がひとりでに浮かび上がり、そのまま逆さまにして宙づりにしてしまった。 

 ぐぐぐぐとその巨体が移動し、少女の前へ持ってこられる。巨人は怯え切った目で少女を見つめていた。


『グ……ゲゲ……』

「…………」

 少女はじっとその目を見つめ、それから杖で巨人の首元をすっとなぞるような動作をした。


切断アブレーション


 呪文と共に、巨人の首元にスッと赤い線が通っていった。数秒後、どさりと首が落下する。首はそのままころころとリックの足元に転がって来た。

「ひいっ!?」

 そんなリックに少女は視線を向け、

「……あなた、誰?」と聞いて来た。


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