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第四十四話 合宿スタート

 諸々の準備等もあり、夏合宿の実行は、計画から十日の月日を要した。その大半は、エルトールが生徒の親の元まで行って、合宿への参加を認めさせるまでにかかった時間である。

 流石に十歳前後の子供を王都の外へ出すのは、渋る親が多かった。


 しかし、何度も頼み込みに行き続けた甲斐もあってか。


 合宿当日の朝。扉のある一階には、全ての生徒が集結していた。皆狭苦しそうに集まり、興奮しながら談笑している。

  

 イルフリーデは相変わらず隅っこの席に座って、女の子たちに囲まれていた。ブレンダやパトラは仲のいい者たちと集まっており、男子はリックを中心にして何かを話していた。どうやらカードなどを持ってきたらしい。


 エルトールは時間を確認し、「そろそろ行こうか」とアリサに声をかけた。 


 そして。

「全員、注目!」


 アリサが声をかけると、部屋中の視線がエルトールに集中した。とうとう来たかと、みんなが期待に目を輝かせている。


 エルトールはコホンと咳払いして、

「ではこれより、夏合宿を始める。いくつか皆に注意しておきたいことがある。

 ――一つ、合宿を通して、僕やアリサ、イルフリーデからあまり離れないこと。二つ、魔物と遭遇した場合、やむを得ない場合は戦闘を避ける事。一応魔法が使えるとはいえ、君たちはまだ戦闘経験がないから危険だ。そして三つ」 


 ごくりとみんなが息を呑む。魔物に遭遇する可能性を考えての事だろう。だが、エルトールは笑って、


「みんな、楽しもう!」とこぶしを振り上げた。一気に緊張が拡散し、みんなのボルテージが一気にマックスに達した。


「「「おおおおおおおお!!」」」


 そうして、この学校初の夏合宿がスタートした!


 エルトールに続き、生徒たちがぞろぞろと通りへ出る。通行人は何だ何だとこちらを見た。皆片手に箒を持っており、通りに出てくるなり跨り始めたのだ。


 基本的には普段着だが、女の子たちは日差しよけのマントを羽織っている子も多い。そんな中、エルトールが全員に合図する。


「みんな、練習通りにやるんだ。言った通り、順番に飛び上がるように。それから、はぐれた時に分かるよう、隣にいる者顔を覚えておく事。あと、水分は大目に摂る事」


 はい! と元気な返事が返ってくる。

 そんな中、


「あの、先生……。やっぱ俺、こいつの後ろ不安なんですけど……」


 と、リックが言い始めた。見ると、テディの跨った後ろに、リックも跨っている。その表情はかなり不安げだ。


 テディはむっとした様子で、

「え、何? 僕の腕を疑うの?」

「いや、疑うわけじゃねぇけど……」

「まあまあ安心しなよ。僕の飛行はすごいんだよ? 宙返りなんてラクラクだし、なんなら超低空飛行のスレスレ飛行も……」


 げっそりした様子のリックである。

「テディ。ほどほどにね」

 テディはやりすぎる節があるので、釘を刺しておいた。

「あいさー」と敬礼して見せる。


 そんなやり取りをしているうちに、周囲には人だかりが出来てきていた。何かのショーだと思っているらしい。

 王都学園の生徒は専用のローブを着るので、ここにいる者たちが魔法を扱えるとは思っていないのだろう。


 だが――、

「じゃ、行くよっ!」エルトールはそう声を上げて、地面を蹴った。

 途端に空へ飛びあがる。周囲に居た野次馬たちが、「おおっ!?」と声を上げた。


 それに続き、ブレンダやパトラなどの生徒たちが飛び上がる。パトラが「ひいいいい……」と悲鳴を上げ、バランスを崩しそうになるのを、横に付いたブレンダが手を繋いで安定させた。


 それに続き、アリサが「行くわよっ!」と声を上げる。それに続いて浮かび上がったのは、テディたち一行。

 テディはぐるぐる回りながら上昇し、後ろに乗っているリックが「辞めろ辞めろ馬鹿!!」と悲鳴を上げた。


「アハハハハハ!」と楽しそうに笑うテディ。彼らはエルトールたちの左後ろに付いた。


 そして最後に残ったイルフリーデたち。イルフリーデはフードを被り、真黒なローブを羽織っていた。

「暑苦しいわねぇ……」

「ご容赦くださいませ。万が一バーノンなどにこの事を知られると厄介ですので」


 マヤの言葉に、さらに暑苦しい騎士の顔を思い出す。なにかと口うるさいあれにこっちに加担していることがバレれば、多分面倒なことになるだろう。


 そういうマヤもメイド服ではなく、ぴりっとした男の服を着て変装していた。

「分かってるわよ。……行くわよ、あんたたち」

「「はいっ!」」


 イルフリーデとマヤは最後の集団を率いて飛び上がった。エルトールは上空からその光景を確認する。野次馬たちは飛び上がったこちらを見て、歓声を上げていた。ぶんぶんと手を振っている。みんなで彼らに手を振り返し、


「――さて、行くか!」

 先頭のエルトールは、アトラ山へ向けて舵を切った。


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