表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/61

第四十話 強盗襲来

 一方学校では、自習に集まった生徒たちが校舎中を走り回って遊んでいた。一応勉強に来ているはずだが、エルトールたちのいない校舎なんて珍しい。


 最初は教室に集まった生徒たちだったが、

「この隙にみんなで探検しよう!」突如テディが言い出した提案に、ほぼすべての生徒が乗り気になった。


 唯一パトラだけが、「や、辞めようよ……怒られるよ……」と止めようとしていたが、か細い声では誰にも届かなかった。

 パトラは泣きそうになりながら、「ブレンダちゃん……」未だやって来ないまとめ役へ向けて、助けを呼んだ。


 そうして校舎の探検が始まった。校舎は洋風の建物で、三階建て。生徒たちが普段出入りするのは、一階のホールと右の廊下の直ぐにある教室。

 それから二階の奥にある図書室位である。


 校舎の裏側には一応中庭やグラウンドも用意されており、休み時間はそこで遊ぶこともできた。

 

 その向こうには果てしない森が広がっているばかりで、「端っこまで行ったら落ちるから、森には入らないように」というエルトールの脅しは、生徒全員を震え上がらせた。


 ガチャリと三人の子供たちが部屋を開く。


「うーん、この部屋にも何も無いかぁ……」


 先陣を切っていた少年が中を見て、退屈そうに呟いた。色々と探してみているが、今のところほとんどの教室が空っぽである。


 まるで作られたばかりのようで、埃一つ落ちていない。……実際その通りだが。パトラはその集団に、本を抱きしめながら、一歩遅れて着いて行っていた。


 一応止めなければとは思っているが、何となく彼女もこの校舎に興味があるし、人と話すのが苦手なので、表立って止められないという理由があった。


「もしかしたら、魔法がかけてあるのかも。部屋を空っぽに見せる魔法、みたいな」


 とてもありそうな推測である。そうであったのなら、探検する意味は無くなるが……。そう考えていた時、パトラはふと、外で沢山の人が扉から中に入って来ているのを見付けた。


「何あれ……?」


 パトラの様子に気づいて、子供たちも外を見た。

「誰だろう?」「先生たちかなぁ」


 遠すぎて、誰かは分からない。だが――、

「……もしかしたら、ど、泥棒とかかも……」


 パトラの言葉に、全員ハッとした。そうだ。その可能性もある。そして、もしそうだったら……今この学校に居るのは、子供たちばかり。抗う術は無い。


「ど、どうしよう!」「逃げなきゃ……」慌て始める子供たち。


 パトラも頭を抱えて震え始めた。――怖い。怖い。怖い。こんな時、ブレンダちゃんが居てくれたら……。ブレンダならきっと、みんなを安心させて、そして……。


 ――そして自分は、その背中に隠れているだけ。


 そんな考えが頭に過り、パトラは立ち上がった。足はガタガタと震えている。もし本当に、泥棒だったらどうしよう、と。だが、そこで震えているだけの人間から変わるために、魔法学校へ通う事を決めたのだ。


 パトラが魔法学校に通う事を決意した一番の理由は、……胸を張って、ブレンダの隣に立てる人間になるためだった。


「……わ、私、行く」

 みんながパトラを振り返った。「行くって、どこへ?」


「……あ、あの人たちから、学校を守るっ!」パトラはそう言って、走り出した。

「パトラちゃんっ!」引き留められても、止まらない。そのまま階段を降りて、正面玄関へ。通りすがった他の生徒たちも、驚いてパトラを見た。正面玄関が開き、そのまま門のある場所へ。


 パトラが到着する頃には、すでに人影は門の手前まで到着していた。そこに居たのは、ガラの悪そうな男たちだった。


 そして、「り、リック、くん……」茫然と呟く。人影の中には、自分の知っている少年の姿もあったのだ。


 リックは不敵な笑みを浮かべ、「な? 本当にあっただろ?」と横に立っている背の高い男に声をかけた。


「ああ、すげぇな……扉の奥にこんな場所が……」


 そうしているうちに、パトラを追ってきた生徒たちが横に並んだ。


「なんだよ! あんたら!」男子生徒の一人が叫ぶ。男たちはそれにヒヒヒヒと笑って、


「おいガキども。大人しくしてたらけがはさせねぇ。俺達が出てくまで、どっかで遊んでな」と言ってきた。


 パトラはギリ、と奥歯を噛みしめて、


「で、……できま、せん……あなた達の、も、目的を……」

「ああ? 声が小っちゃくて聞こえねぇよ!! もっとデカい声でしゃべれッ!!」


 リーダーらしき男が、こちらに歩いて来た。思わず、後ろに下がる子供たち。しかしパトラはそんな男に、手を掲げた。


「そ、それ以上近づかないでください……ま、魔法を撃ちます……」


 男の足が止まる。少し躊躇したようだったが、後ろからリックが、


「大丈夫だぜ。そいつら、ちょっと水を動かすくらいしか出来ねぇから」


 と付け加えた。今度はパトラが怯む番だった。……バレている。こちらは未だ、魔力の基本的な操作しか教えられていない。


 敵を攻撃する魔法なんてもってのほかだ。一応呪文は知っているが、呪文だけで魔法を扱うには杖が必要だ。


「ケケケ。こけおどしか。ま、邪魔するってんなら仕方がねぇ。ちょっとお灸をすえてやらねえとなァ」


 背後の男たちも、一斉に敷地に踏み入って来た。


「ひっ」「どうしよう……」他の生徒たちも校舎へ逃げようとする。


 しかしパトラは、手のひらで魔力を練り始めた。魔法なら、図書室で読んだ本で知っている。低級魔法の拘束バインドなら……。


 そして、敵を拘束するための魔法の紐を形成しようとした。だが、


「何やってんだァ?」


 その手首を、男に掴まれた。そして、ぐいっと捻られる。どうしようもない力の差で、そのまま手を持ち上げられた。


 ……駄目だ。どうにもならない。悔しさに、涙が滲んできた。ここまで頑張って勉強してきたのに、結局自分は変われないのか。

 結局、何もできないのか、と――。


 そんな時である。突然、パトラを掴んでいた男が体勢を崩した。驚いた様子で、パトラの手首を離し、そのまま後ろ向きに尻餅をついた。


 パトラは何が起こったか分からず、とにかく慌てて距離を取ったが……、


「あれ!?」


 地面についた手に、いつの間にか棒のようなものが握られていたことに気づいた。これは……魔法の杖!


「ふぅ、間に合った間に合った」


 突如何もないところから声が聞こえ、その場にいた全員がそちらの方を向く。


 その空間に、突如魔力が走るのが見えた。そして次の瞬間、メッキのように塗られていた魔法が剥がれて行く。そして現れたのは……テディだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ