第三十一話 突然の来訪(二度目)
チュンチュン、と小鳥の鳴き声がして、目を覚ます。
身体を起こすと、ベッドの傍の窓枠に止まっていた小鳥が、ばっと飛んでいった。
「おはようございます、師匠」
と、振り向くと、ベッドに肘をついてアリサがこちらを見つめていた。
エルトールはごしごしと目を擦り、
「……何やってるんだい?」
「寝顔観察です」
びしっとチョップを喰らわせてやった。
「ぎゃあっ!? 一体何をっ!?」
「勝手に部屋に入りこむんじゃない。三階がアリサの部屋って決めただろ?」
「そうですけど、朝目が覚めたらだれも居ないのって、寂しいじゃないですか?」
「別にそうでも無いけど」
「いや、あたしが寂しいんです」
ずっと一人旅していたじゃないか……。
「いいから、一階に降りていなさい。支度をしたら僕も降りるから」
「あ、あたしの事はお気になさらず。静かにしてますから」
「服を着替えるんだよ。何でそこまで部屋に残ろうとするんだ」
と呆れて返す。
だがアリサは頬を膨らませて、「だって、最近は学校の事で忙しくて、師匠成分を補給出来てないじゃないんですもん」
何だ、師匠成分って。
「という事で――」
と、そんなエルトールにアリサが抱き着いて来た。
「補給させてくださいっ!」「やめんかっ!」
まずい。最近構ってあげられなかったせいか、アリサがおかしな方向に進み始めてしまっている。
アリサは頬を上気させて、栗色の頭をぐりぐり押し付けてきた。まあまあ力の強いので、簡単には引き剥がせそうもない。そんな状況で、突如ガチャリと扉が開けられた。
ハッとして二人は扉を見る。そこには……、
「……お邪魔みたいね」
イルフリーデが立っていた。どんよりした視線を向けて、そっと扉を閉める。
「……ま、待って! 誤解! 誤解だからぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
エルトールは慌てて部屋を飛び出し、空へ浮かび上がろうとしているイルフリーデを引き留めた。
「で、学校の方はどうなっているのかしら?」
それから数十分後。急いで支度を終えたエルトールは、一階に降りてイルフリーデと対面していた。
紅茶の入ったティーカップに口を付けてから、ジトっとテーブルを挟んで座っているこちらを睨んだ。
「まさか、可愛い弟子との日々にうつつを抜かして、何も進んでいない、なんてことは無いでしょうね?」
「だから誤解だって」
離れた椅子に座って本を読んでいるアリサをちらっと見る。アリサは本越しにイルフリーデを睨んでいた。余計なことしやがって、と視線が言っている。
「なら、学校がどこにあるのか教えて欲しいわね。まさか、こんなボロくて狭い建物なわけは無いでしょう?」
散々な言われようだ。エルトールは結構気に入っているのだが。
「学校はあの奥だ」
エルトールは、奥の扉を指さした。イルフリーデはそちらに視線を移して、
「……ワープゲートでも繋いだ?」
流石に察しが良い。
エルトールは首を振って、
「いや、そっちも考えたけど、それよりもいい方法があったからそっちじゃない」
イルフリーデは呆れたような顔をした。
「冗談のつもりだったのだけれど」
なんだ。冗談だったのか。
「まあ、いいわ。どのみち全見せてもらうから」
エルトールが首を傾げると、
「授業参観、させて頂戴」彼女はそう言いだした。




