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第三十話 やさぐれ

 王都、庶民街にある路地裏の一角。大通りから一歩横道にそれた場所にあるそこは、若者のたまり場になっていた。

 

 ほんの十歳ちょっとの少年たちが集まって、カードを囲んでいた。放置された木箱などをテーブル代わりにして、その上に切るカードを投げ捨てて行く。


 少年たちの中には、リックとその取り巻きたちも居た。

 例の出来事から約二週間。彼らは何事も無かったかのように、いつもの日常へと戻っていた。

 街で適当に仕事をこなし、霞程の金を受け取る。そしてそれを、こういった場で賭けるのだ。


 だがその日、リックにツキは巡ってこなかった。


「よっしゃアガリぃ!」


 手札を全て使い切ったニ十歳の程の青年が、そう叫んだ。

 他のプレイヤーたちが、「マジかよ」とうんざりした顔をする。その中の一人がリックだった。


「けけ、悪いねぇ。こんなに貰っちゃって」

「悪いと思ってんなら返せよ」


 リックが愚痴を言うも、青年はニヤついて、


「いやいや、この掛け金はお前の全財産だろぉ? つまりそれを賭けるほどお前は本気だったってことだ。本気の相手に情けをかけるなんて、そんなひどい事俺には出来ねぇよ」


 結局、金は全部持って行かれた。

 有り金を失ったリックはため息をついて、仲間たちと共にその場から抜け出した。


「ついてねぇぜ」

 道端の石ころを蹴飛ばすリック。

 取り巻きの一人が、「有り金全部は賭けすぎだぜ、リック」と諫める。


「うるせぇ。いくら賭けようが俺の勝手だろうが」


 そんな、ギスギスした空気のまま歩く。

 リックはどこかイラついていた。賭けに負けたからだけではない。ここ最近、ずっと心に何か靄がかかっている様な気がした。

 と、そんな時である。


 リック達一行は、正面から来た二人の女の子と鉢合わせた。

 ブレンダとパトラだった。


 ブレンダは長い茶髪と大人びた雰囲気が印象的な少女で、この辺りでは有名な、宿屋の看板娘だ。

 家が近めだったので子供のころから交流があるが……。こちらが何かをやるたびに口を出してくるので、いつしか鬱陶しく感じるようになっていた。


 その後ろに引っ付くように歩いているのは、パトラという名前の女の子。

 こちらは確か商人の娘だが、いつしかブレンダに付いて回るようになっていた。詳しくは知らなかったが、おどおどした奴も好きでは無かったので、どちらにせよ興味は無かった。


 そしてばったりと顔を合わせた両陣営。二人は何かを話していたようだったが、リック達の存在に気づくとパトラが素早くブレンダの陰に隠れた。

 ブレンダはじっとリックを見返す。


 暫く見合い、

「お前、まだあの男の所通ってんのか?」

「うん。私、ちゃんと魔法学んでみることにした」

「……あっそ」


 リックはそう吐き捨てて、取り巻きと共にすれ違おうとした。

 そんな中で、


「先生、いつだって受け入れてくれるって」


 ブレンダは、取り巻きたちも含め、全員に聞こえるように言った。

 ついつい振り向く取り巻きたちだが、


「あんな詐欺師を信じ込んでるなんて、どうかしてるよお前」


 リックはそう断じて、さらに足を進めて行った。

 それを見送るブレンダとパトラ。


「……い、行っちゃったね……」

 パトラがおそるおそる呟く。

 ブレンダはふう、とため息を吐いた。


「……頑固なんだから。……まあ、リックももう大人なんだし、きっと自分の事は自分で決めるよね」


 ブレンダはパトラを連れて歩き出した。


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