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第二十七話 入学生募集

 校舎、そして杖や箒などの備品は揃った。


 次に必要となってくるのは、当然「生徒」である。

 日数としては、王都に来て四日目。

 家具などの生活環境を何とか整えた二人は、やっと生徒集めに繰り出すことになった。


 具体的な勧誘方法は、チラシや張り紙である。子供のいる家庭のポストに直接チラシを投入したり、人目のつきそうな場所に張り紙を貼ったり。

 そこにはでかでかと、

『来たれ! 新たな魔法使い!』

 と書かれていた。


 実はこのチラシはアリサによる作品である。

 最初はエルトールが書いてみたのだが、それを読んだアリサが一言。


「小難しいですっ!」


 そこで彼女が新たにこのチラシを作ってくれた。うむ、分かりやすい。


 そしてそんなチラシがもうこれでもかと街中に貼られる事となった。

 紙代やインク代は相応にかかったが、仕方がない。これは必要な出費だ。


 ――そんな努力の末、丁度一週間。入学希望の生徒たちに集合をかけた当日。例

 の建物の一階にて、……二人の魔法使いは、ぐでーっとしていた。


「来ませんね……」

「うん……」


 部屋の真ん中に設置された椅子に二人は座っていた。当初はがらんとしていた一階だが、絨毯やちょっとした雑貨、照明、その他もろもろ小物を設置したおかげで、かなり親しみやすい内装になっている。


 本当なら、ここに生徒希望者たちが訪ねてくるはずなのだが、今のところ誰一人戸を叩く者は居なかった。


 ……やっぱり、胡散臭かっただろうか。この街で魔法学校と言えば、長い間王都魔法学園しか無かったのだ。


 そんな人々にとって、急に現れた新しい魔法学校に入るというのは、中々勇気が要る。チラシだけでなく、もっといろいろ勧誘しておくべきだったかもしれない。


「はぁ……」


 時間がどんどん過ぎて行く。アリサが心配そうに、エルトールの肩に手を置いて来た。


「師匠、落ち込まないでください。魔法使いになりたい人は、いっぱいいるハズです。もう少し待てば……」

「そうかな」

エルトールは、ブレンダの事を思い出していた。


『わっ、私には無理ですっ!! 絶対無理っ!!』


 エルトールの勧誘を、彼女はそう言って拒絶した。


『無理な事なんて存在しないよ。君のやる気次第で、どんな魔法使いにだってなれる』

『私には、だって、才能が……!』

『あるよ。君には才能がある』


 そんなエルトールの力強い言葉に彼女はたじろぎ、『……ないもん……』と呟き、そして奥へ走って行ってしまったのだ。


 少々強引すぎたなとその後すぐに反省し、謝らせてほしいと頼もうとしたが、彼女の両親はどちらも手が離せない程忙しそうだった。

 

 そしてもう顔を合わせることなく、宿を出てしまったと言う事なのである。


「……才能、あるんだけどな」小さく呟く。そもそも魔法の才能というものは何か。

 

 持っている魔力か? それとも器用さ? 聡明さ? ……違う。

 それは情熱だ。

 魔法に対して情熱を持てる者こそ、魔法の才能を持った者なのだ。


 そしてエルトールの本を見るときの彼女の瞳には、確かに情熱が宿っていた。


 しかし、望まないというのなら仕方がない。

 エルトールは時計で時間を確認し、そしてため息をついた。


「……来なさそうだな。取り合えず今日は――」


 と、その時。扉がコンコンと控えめに叩かれた。二人は驚いて扉の方を見る。

 そして、我先にと扉の方へ飛びついた。そして開き――、


「「いらっしゃい!!」」


 と声を合わせる。その向こうには、驚いた顔のブレンダと、沢山の子供たちの姿があった。


「わ、びっくりした! あ、あの、遅れちゃってごめんなさい! 色々友達を集めていたら、思ったより時間がかかっちゃって……」


 茫然とその子供たちの顔を見回す二人。彼らの年齢は、大体十から十三程。

 若々しい少年少女たちが、不思議そうな顔でエルトールとアリサを見ていた。

 友達を、集めていた……?


「ブレンダちゃん……」


 思わずウルッと来るエルトール。来てくれたのか……? 正直、諦めかけていた。


「君は……」

「はい。あの、エルトールさんに才能があるって言ってもらって、私、やっぱりうれしくて……来ちゃい、ました」

「うんうんうんうん! 分かる分かる!」

 アリサがブレンダの手を握って、何度もうなずいた。


 しかし、そんな感動的な場面に、


「おい、早く入れてくれよオッサン。魔法教えてくれんだろ?」

 と、奥に立っていた少年が声をかけて来た。


 お、オッサン……。もうそんな年になってしまったのだろうか。

はそんな声を上げた彼に、ブレンダが振り向く。


「リック、おっさんじゃなくて先生でしょ!」


 リックと呼ばれた少年は手を頭の後ろで組んで、


「俺は暇つぶしに来てやっただけだよ。どぉーせろくでもない詐欺師だろーしな」

「貴方、随分失礼な事を言うわね」


 アリサがブレンダの横を通って、リックまで詰め寄った。


 リックの周囲には取り巻きっぽい少年たちが居る。そんな様子にもひるまず、

「師匠はすごい魔法使いなのよ。何も知らない癖に侮辱するなんて、このあたしが許さないわ」

 リックは鼻で笑って、

「おー、こわ。ブレンダみたいなやつがもう一匹増えたな。いいご身分だなオッサン! 騙されやすい女を囲ってハーレムか?」


 ……うん。なんだか感動的なシーンが始まるかと思ったが、一筋縄ではいかないようだ。エルトールは深呼吸をして、


「まずは訂正しておこう。僕はまだ二十五だ。おっさんって年齢じゃない」


 取り合えず、最重要事項を訂正しておいた。


「君たちは、僕の学校に入学を希望する。それで間違いないね?」


 ブレンダは周りの女の事たちと頷き合った。奥に居るリックとその他の男子たちは、「ちょっと見てやるだけだよ」と舌打ちしながら言った。


「それで構わない」


 エルトールは笑顔で、訪ねてきてくれた全員を一階へ迎え入れた。


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