第二十一話 第一歩
魔法競技大会――。
それは、王都魔法学園で伝統的に行われている、夏の一大行事だった。
会場は王都魔法学園の大競技場。今回エルトールに与えられた試練は、その大会にて王都魔法学園に対抗するメンバーを育て上げ、なおかつ全体のポイントで勝利を収める事だった。
「こうなるように仕組んだのか?」
謁見が終わった後、部屋に訪ねて来たイルフリーデに聞いてみた。
イルフリーデは首を振り、
「王が決めた事よ。認めるには、能力を証明しろという事でしょう」との事。
「自信の程はどう?」と聞いてくる。
……考える間でもない。
「当然、勝ってみせるよ。しかし三か月しか余裕が無いのなら、早く行動しないと。な、アリサ?」
アリサの方を見ると、彼女は顔色を真っ青にして、
「王都学園と対決……、王都学園と対決……」とぶつぶつ呟いていた。
「アリサ? 大丈夫か?」
「ひゃいっ! だいじょうぶれすっ!」
……大丈夫じゃ無さそうである。
「王都魔法学園って、アリサが元居た学校だね?」
「……はい」
やっぱり、というか王都に魔法学校は一つしかないのだから当然だ。つまりアリサにとっては、逃げ出してきた場所と正面対決するという事になる。
――『だからあたし、人一倍努力しようと思って、頑張ったのよ。本もたくさん読んで、授業でも……。でもね、先生は『お前には才能がないから、頑張っても無駄だ』なんて言って、あたしを相手にしてくれなかった。だから、学校を出たの』
アリサの言葉が脳裏に過った。
……きっと辛い目にあったのだろう。そんな彼女に、無理強いをすることは出来ない。
「アリサ。別に君を出さなきゃならない決まりはない。不安がる必要はないよ」
励ましのつもりでそう言ったが、アリサはそれを聞いてぴたりと動きを止めた。そして、バッとこっちに首を向ける。
見開かれた目には涙が滲んでいた。
「師匠……? あたしは師匠の一番弟子ですよ? そのあたしが出ないで、一体だれが戦いますか!?」
だんっと立ち上がるアリサ。その表情にはまだ不安が残っていたが……、
「怖いけど……あたし、師匠の役に立ちたい。あたしも戦います。絶対に、奴らをぶち殺して見せますっ!!」
と、信念に燃えた目で宣言して見せたのである。
「……いや、殺しちゃだめだけど」
「気合は十分みたいね」
イルフリーデが欠伸をしながら言った。「それで、具体的にどうするの? 生徒を集めるにも授業をするにも、お金というものが必要になってくるのだけれど」
お金なら、一応異空間に帝国の通貨がかなりの額保管されてある。それで何とかなるだろう。
「もし宛てがないのなら、私が貸してあげても――」
「いや、大丈夫だ」
イルフリーデはパチパチと瞬きした。「大丈夫という事は無いでしょう。貴方、何処からどう見てもお金なんて持っていないじゃない」
当然、イルフリーデは異空間魔法の存在を知らないので、呆け顔である。
「まあ、宛てがあるって事だよ」
エルトールは意味ありげに言ってやった。
「……そう。ま、好きにするといいわ」
イルフリーデはそう言って身を翻し、部屋から出て行こうとした。
その後ろ姿に、「イルフリーデ。……ありがとう」と呼びかける。
彼女はぴたりと止まって、
「……ま、精々頑張りなさい。エル」
それだけ言って、部屋から出て行った。
アリサが「な……いつの間に呼び捨て……」とオロオロしていた。
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