第十五話 決闘
遥か昔より、ユリシア王国にはとある伝統があるらしい。
それが決闘。
何かもめごとが起こった時、その代表者同士が一対一で戦い、勝敗を決めるというもの。王国が統一される前、血で血を洗う悲惨な戦争の末に出来上がった伝統なんだとか。
そしてたった今、王国の隅っこにあるこの村でも、二人の魔法使いによる決闘が行われようとしていた。
「条件は単純よ」
イルフリーデが、エルトールと距離を取って振り返る。
二人は村の外れにある草原にやって来ていた。ここなら滅多な事でも起こらない限り、村に被害は及ばない。
太陽は高く上り、今日も晴天。爽やかな風が二人の間を駆け抜けて行く。
「まいったと言わせた方が勝ち。攻撃手段は何を使ってもいい」
イルフリーデは杖を抜いた。
エルトールはそのまま、
「それで、僕が勝ったら話を信じてくれるんですね?」
イルフリーデは頷く。「貴方の話を信じて、私の権限で王都に向かい入れるわ。王との謁見も準備してあげる」
実に素晴らしい条件だ。賢者と言うのなら信用もあるだろうし、国王に直接学校創設の打診が出来るかもしれない。
……だがそれなら、負けたら?
そう聞くと、イルフリーデはニヤッと悪い笑みを浮かべた。
「貴方には私の下僕になる契約をしてもらいましょう。どう? どっちに転んでも悪くないでしょう?」
……負けるわけにはいかないな。
エルトールは手をイルフリーデに翳した。向こうも杖を向けてくる。
「……杖を使わない気?」
「無い方がやりやすいのでね」
「あら、舐められたものね」
――そして、数秒後。
「衝撃」
エルトールの周囲が、突如凄まじい衝撃波で波打った。バシバシと周囲の障壁が震える。なかなかの威力だ。
その間にも、イルフリーデは自分の周囲に大量の火の球を出現させている。それをエルトールの周囲に移動させ、一気に全方位から攻撃してきた。
「火炎弾」
ドドドド、と炎の球が射出される。エルトールの周囲は、火炎で包まれるはずだった。
だが――、
「水球」
そのすべてが、空中で相殺された。
エルトールの周囲には、同じように水の球が無数に展開されていたのだ。
魔法には、殆どに反対魔法というものが存在している。それらをぶつけると、魔法は効力を失ってしまうのだ。
しかし、猛攻は終わらない。エルトールは地面から魔力を感じる事に気づき、すぐさまそこから飛んで避けた。
「石針」
地面から尖り切って凶器と化した石が、大量に出現した。
エルトールは空中で腕をかざし、「雷槍」と唱える。その瞬間、バッと雷が光り、手のひらに雷の槍が出現していた。
投擲された雷がイルフリーデの魔法障壁にぶつかる。そして、音を立ててバキバキと割り始めた。
「ぐっ……」
思わず飛び上がり、回避するイルフリーデ。そのまま、周囲に大量の魔法を展開した。炎、氷、雷、様々な攻撃魔法が同時に展開されている。
「多重展開」
――これはなかなかすごい。最上級に片足を突っ込んでいる上級魔法だ。堕落し切った帝国の賢者では、使える者も少なかった。
しかし――、
「多重展開」
エルトールは、展開されたすべての反対魔法を展開。そして、空中で敵の魔法を相殺した。ドドドドドとお互いの魔法の連射が続く。
そんな中、イルフリーデは更に違う魔法を発動した。強力な魔力が上空に集まり、それらが炎に変換されてゆく。そして、太陽のような巨大な火の球を創り上げた。
「爆炎ッ!!」
火炎属性の上級魔法。イルフリーデが、ぐぐっとそれをエルトールへ差し向ける。
ゴゴゴゴと巨大な熱量が、空から落下してきた。周囲の草が燃え始める。
それに対しエルトールは、
「火炎弾」炎の球を作り出した。
「――はぁ?」
イルフリーデが目を丸くする。
初級魔法と上級魔法が、接近する。初級が吞み込まれるのは必至。
しかし、衝突した瞬間――、
ドォォォォォォォン!! と音が鳴って、巨大な火球がぐるぐると蠢き始めた。そしてそのまま、バラバラに解けるように小さくなってゆく。
「なっ、なんで――」
慌ててコントロールを取り戻そうとするイルフリーデ。だがその努力もあえなく、火球はエルトールの小さな火炎弾にのみ込まれてしまった。
それをエルトールが、ふっと手を払ってかき消す。イルフリーデはぽかーんとした顔で、エルトールを見下ろしていた。
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