005_スキル取得
今日は5話まで更新しました。
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005_スキル取得
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家に帰ったジュンは、シャル婆さんにCHSCについて語った。
と言うのも、CHSCを消費して能力値を上げるだけではなくスキルを覚えることができることから、アドバイスをもらえればと思っているのだ。
「どういったスキルを取得したらいいか、迷ってしまって」
「なるほどね。とりあえず、どんなスキルが取得できるのか、それとジュンのステータスを見せてみな」
「はい」
ステータスボードは自分にしか見えないが、任意で他人に見せることもできる。見せたくない部分だけ隠すこともできるが、ジュンは全部見せた。
【消費CHSC100】
・短剣技 トリプルアタック アクティブスキル 消費魔力2ポイント 単体 短剣装備時、通常攻撃の2.5倍 発動時間0.5秒 再使用15秒
・剣技 スラッシュ アクティブスキル 消費魔力2ポイント 単体 剣装備時、通常攻撃の1.5倍 発動時間1秒 再使用15秒
・槍技 2連トラスト アクティブスキル 消費魔力2ポイント 単体 槍装備時、通常攻撃の1.8倍 発動時間2秒 再使用25秒
・戦斧技 大回転 アクティブスキル 消費魔力2ポイント 半径2メートルの範囲 戦斧装備時、通常攻撃の2.5倍 発動時間4秒 再使用35秒
【消費CHSC120】
・身体強化Lv1 パッシブスキル 自身の腕力、体力、俊敏を10パーセント上昇させる
・聴覚強化Lv1 パッシブスキル 自身の耳の収音機能を強化する
・嗅覚強化Lv1 パッシブスキル 自身の鼻の収嗅機能を強化する
・弱点看破 アクティブスキル 消費魔力5ポイント 敵1体の弱点を知ることができる 発動時間5秒 再使用3分
【消費CHSC150】
・火魔法 ファイア アクティブスキル 消費魔力3ポイント 攻撃力35 単体 発動時間3秒 再使用20秒
・水魔法 アクア アクティブスキル 消費魔力2ポイント 攻撃力25 単体 発動時間2秒 再使用15秒
・風魔法 エアカッター アクティブスキル 消費魔力3ポイント 攻撃力30 単体 発動時間2秒 再使用10秒
・土魔法 ロックバレット アクティブスキル 消費魔力3ポイント 防御力35 単体 発動時間3秒 再使用25秒
・回復魔法 ヒーリング アクティブスキル 消費魔力3ポイント 生命力を30ポイント回復させる 単体 発動時間1.5秒 再使用15秒
●ステータス
【ジョブ】効率厨
【レベル】2
【経験値】6/20
【生命力】10/10
【魔力】5/5
【腕力】9
【体力】8
【知力】10
【抵抗】8
【器用】10
【俊敏】22
【スキル】チェーンスコア
【CHSC】550
【身分】流れ者
【賞罰】
「まず方向性を決める必要があるね」
取得可能スキルとステータスを見ながら、シャル婆さんが呟いた。
「ジュンは剣士のような物理系と、魔法使いのような魔法系、どっちに進みたいんだい? あんたのスキルを考えると、範囲攻撃の選択肢が多い魔法のほうがいいと思うんだがね」
両方ともと言うのは贅沢だ。だから、どちらに向かうのかという方向性を決めないとスキルを取得しても無駄になりかねない。
シャル婆さんが言うように、魔法のほうが使い勝手は良さそうだと感じたジュンは、魔法の取得を考えてみる。
ただし、現在取得可能な魔法は、とてもチェーンを稼げるようなものではない。
「今取得できるのは、下級魔法ばかり。これが中級や上級になれば、範囲攻撃ができるし、射程距離も長い」
下級魔法ではチェーンに役立たない。
たとえば火魔法のファイアの場合、単体に対して攻撃してから20秒間は使用できないのだ。しかも、発動には3秒かかる。急な対応ができないのは痛い。
ただし、ビッグモスキート狩りに魔法は不要だ。網で捕まえて踏み潰すだけなのだから。
「しかし、中級魔法が取得できるか、分からないのが痛いね」
中級魔法は範囲攻撃なので、チェーン数を稼ぐのに役立つだろう。
しかし、中級魔法が取得できるのか? 取得できるのであれば、何が条件なのか? それが分からないと、魔法へ舵を切るのは難しい。
「魔法の場合、能力は魔力と知力を上げる感じになりますね」
「そうだね。あとは器用も上げたほうがいいと思うね」
「器用ですか?」
「魔法の制御、つまり、命中させるためのコントロールは、器用が高いほうがいいのさ」
「なるほど」
「たとえば剣を使う場合、生命力と腕力、体力、俊敏、あとは命中精度を上げるために器用も必要ってことですか?」
「その通りだよ。ジュンは賢いね」
「あの、抵抗はどういったことに効果があるのですか?」
「抵抗はスキルに対する防御力のようなものだね。ただし、物理的な攻撃には体力のほうが防御力として使われるから、魔法攻撃や物理攻撃をしないスキルに耐性を得るものだよ。魔法使いは抵抗も高いから、魔法を使うのなら上げておいてもいいね」
戦斧の大回転というスキルは、自分を中心として斧を回転させる物理攻撃の判定になる。
しかし、剣のスラッシュというスキルは斬撃を放つ攻撃になるため、物理攻撃判定にはならない。
つまり、大回転は体力が高いほど被ダメージが少なくなり、スラッシュは抵抗が高いほど被ダメージが少なくなるのだ。
「では、魔法系に進みたいと思います」
「ほう、理由を聞いてもいいかい?」
「上げる能力の数です。物理系だと生命力、腕力、体力、俊敏、器用。魔法系だと魔力、知力、抵抗、器用。単純に上げる能力の数が少ないからです」
「なるほど、資本の集中投資だね」
「え?」
「難しかったかね。まあ、簡単に言うとCHSCは無限にあるわけじゃないんだから、有効に使うために伸ばす能力を限定させるってわけさ。ただし、腕力や体力をまったく上げないわけにはいかないよ。何があるか分からないんだから、少しずつでいいから上げておくんだよ」
「はい。そうします」
中級魔法の取得条件はまだ分かっていない。
取得できないかもしれないが、できると信じていくつかの仮定を立てる。
・下級魔法を取得したら、中級魔法が取得できるようになる。
・魔法に関係する魔力や知力などの能力値を上げると、中級魔法が取得できるようになる。
・レベルを上げていくと、中級魔法が取得できるようになる。
他に取得条件があるかは分からない。
やってダメなら次の仮定に移行する。ひとつずつ潰していくしかないだろう。
幸いなことに、ビッグモスキート狩りはスキルに頼る必要はない。
「それでどの魔法を取得するんだい?」
「はい。風魔法のエアカッターにしようと思います」
「ふむ、火魔法のファイアじゃないのかい?」
「ファイアは威力が高いですけど、再使用までの時間が長いので」
「とは言っても、チェーンには使えないと思うんだがね?」
「いざという時に使えないのでは意味がありませんので、再使用時間は短いほうがいいと思いました」
「チェーンよりは、安全性かい。そういった考えは大事だよ。長生きの秘訣さね」
CHSCを150ポイント消費し、エアカッターを取得。この時点で、風魔法の中級魔法は現れなかった。
さらに、CHSCを100ポイントを消費して魔力値を+30ポイント。さらにCHSCを100ポイント消費して知力値も+10ポイントした。
この後に確認したが、中級魔法はなかった。
残りCHSCは200ポイント。まだステータスに振れるが、モスキート相手にそこまで必要はない。
ただ、今のCHSCを全部使ってしまうと、何かあった時に融通が効かなくなるので使い切らないようにした。
明日もCHSC稼ぎをがんばらないといけないと思いながら、家の外に出る。家の外に出たのは、エアカッターを使うためだ。
魔法は使ったことがないので、使ってみたかったのだ。子供のように浮かれているのだ。
現在の魔力値は35ポイントなので、エアカッターなら11回放てる。
さっそく、森の木に向かってエアカッターを発動させる。
「エアカッター!」
やや待ってから見えない刃が飛翔し、木に命中。木には剣で切りつけたような鋭い痕が残った。
「よし!」
再使用までの時間は10秒。これを体感で覚えなければ、いざという時に使えない。最初は脳内で10を数える。
「エアカッター!」
シュパッと木に傷がつく。発動までに2秒。
この時間を考慮して、脳内で8まで数えてエアカッターを発動させてみる。
「エアカッター!」
「………」
今度は発動しなかった。考えられる理由は2つ。
・脳内カウントが8秒よりも短かった。
・スキルを使う時点で10秒経過しないといけない。
正確に8秒をカウントしなければ、検証ができない。しかし、時計を持っていないジュンには難しい話だった。
「これを使いな」
「え、いいんですか!?」
ジュンの魔法を眺めていたシャル婆さんが、懐中時計を貸してくれた。銀製で精巧な作りの懐中時計だ。
「壊すんじゃないよ」
「はい。お借りします」
再びエアカッターを発動させ、きっかり8秒を懐中時計で測って再発動。すると木に傷がついた。
つまり、発動時間の2秒を含めた10秒で、再使用が可能。
あとは、8秒を正確に脳内でカウントできるようにしなければならない。いざという時に、このような地味なことが役に立つのだ。
11回のエアカッターでは、さすがに正確なカウントはできなかったので、 魔力がなくなった後は懐中時計を片手に脳内カウントを鍛えることにした。
「そろそろご飯だよ」
「あ、手伝いもせずに、すみません」
「大したものじゃないから、構わないよ」
シャル婆さんの優しさが身に染みるジュンであった。