表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大賢者に助けられた気の弱い少年は雷鳴の賢者になる  作者: 大野半兵衛
一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/43

003_希望を胸に

 ■■■■■■■■■■

 003_希望を胸に

 ■■■■■■■■■■



 柔らかそうな淡い琥珀色の髪が、そよ風に揺らされる。

 前髪が揺れ、翡翠色の瞳の前を往復する。

 小柄で細身のジュンの顔は中性的で、髪を長くしたら女性に間違われそうな容姿だ。


 玄関先で椅子に座ったジュンは、ステータスボードと睨めっこをしていた。

 ジョブが読めるようになったはいいが、そのジョブが効率厨(アフィセンレーター)という意味不明なものだった。

 このジョブがどういったものか、さっぱり分からない。


 シャル婆さんの家にはジョブに関する本があるが、その本には効率厨(アフィセンレーター)の記載はない。

 同じくスキルの本もあるが、チェーンスコアというスキルについても記載はなかった。

 能力は一般的な村人や農夫と大して変わりないもので、戦闘には向かない能力である。



 ●ステータス

【ジョブ】効率厨(アフィセンレーター)

【レベル】0

【経験値】0/10

【生命力】10/10

【魔力】5/5

【腕力】9

【体力】8

【知力】10

【抵抗】8

【器用】10

【俊敏】9

【スキル】チェーンスコア

【CHSC】0

【身分】流れ者

【賞罰】



 ステータスボードは石板のようなものだが、空中に浮いていて自分のみに見えるものだ。

 ただし、本人の許可があれば、他人に見せることができる。

 そのステータスボードの、効率厨(アフィセンレーター)の文字を人差し指でタッチする。

 すると、その説明文が表示された。


『効率を追求する者。スキル・チェーンスコアを得る』


 文字化けしている時は、この説明文が出なかった。それが今はちゃんと出ていてホッとする。


「効率を追求する……か」


 ジュンは山に入っては、薬草などを採取していた。

 その際、薬草の自生地や、採取後に再び薬草が生える時間を調べ尽くして、効率的に薬草採取をしていた。

 また、山ウサギなどの動物を狩ることもあったが、その狩りの際も効率的にできるように考えていた。

 そういった経験から、この効率厨(アフィセンレーター)というジョブが与えられたのかもしれない。


 今度はチェーンスコアをタッチする。


『途切れること無く敵を倒す事により、チェーンスコア(C H S C)を得ることができる CHSCのポイントを消費することで能力を上げたり、スキルを覚えたり、スキルレベルを上げることができる』


 どうやら敵を連続で倒すとスキル・チェーンスコアが発動し、CHSCにポイントが貯まっていくようだ。

 そのポイントを消費して各能力を上げ、スキルを覚え、スキルレベルを上げるというものらしい。


 内容は理解できた。

 しかし、ここで疑問に思ったのは、チェーンスコアを消費して能力を上げるということだ。

 通常、ジョブの下の欄にあるレベルを上げることで、能力は自動的に上昇する。

 しかし、このチェーンスコアというスキルは、チェーンスコアを貯めて、それを消費することで能力を上げるというもの。

 つまり、レベルがなんの意味もないのではないかという疑問が、脳内に浮かんでくる。


「とりあえずやってみて、考えればいいか」


 やるための問題は2つ。

 1つめは、敵が何を指すか。

 2つめは、その敵を倒す手段がない。

 山ウサギ程度であれば、子供の力でも倒せる。

 ただし、山ウサギは逃げ足が速く、捕まえるのが大変だ。


「魔物相手だと厳しいかな」


 能力が一般的な村人のものなので、戦う力はあまりない。

 スキルもチェーンスコアという補助的なもの。

 魔物相手でも、人間相手でも戦うのは簡単ではないとすぐに分かる。


「何をしているんだい?」


 シャル婆さんがドアを開けて出てきた。

 その手には桶が持たれているので、庭にある井戸で水を汲むのだと思った。


「僕がやります」

「そうかい、悪いね」


 シャル婆さんは、その言葉を待ってましたと桶を渡した。


 水を汲んで戻ってきたジュンが、桶を床に置くとシャル婆さんが声をかけた。


「それで、何を考え込んでいたんだい?」


 ジュンの代わりに椅子に座って寛ぐシャル婆さんが尋ねる。


「僕のジョブは戦闘を前提としたものなんですけど―――」


 ジュンはジョブとスキルの説明文を、語って聞かせた。


「なるほどねぇ。まあ、魔物は敵だろうね」

「ええ、そう思います」

「あとは人間と動物が敵になるかだけど、多分、どちらも敵とそうじゃない者に分かれるんじゃないかい」

「なるほど……」

「まあ、魔物なら敵だと思うから、魔物を狩ってみたらいいじゃないのかい」


 魔物と動物の差は、体内に魔石を持っているかどうか。

 魔石を持っていると、魔物に分類される。

 そして、全ての魔物が人を襲うと考えられている。


「僕に魔物と戦う力がありません。だから、どうやって戦うか考えていたんです」

「最善を尽くしな。それで失敗したって、最善を尽くさなかったことよりも後悔はないさ」

「最善を尽くす……はい。そうですね!」

「それに、戦いについては大丈夫さね」

「え?」


 シャル婆さんは家の敷地の先に広がる森を見つめた。

 この家は森の中に建てられていて、腰高の木の塀で囲まれている。

 家を囲む森は魔の森と言われるほど危険な場所なので、ジュンは危険じゃないかと尋ねたことがある。

 しかし、この家の周囲に二重の結界が張られていると、シャル婆さんは答えた。

 半径2キロに強い魔物が入ってこれない結界、半径100メートルに弱い魔物が入ってこれない結界が張ってある。だから、家から100メートル以上離れなければ安全なのだ。


「この森にはビッグモスキートがウジャウジャしている。それを狩ればいいんだよ」


 ビッグモスキートというのは、体長20センチほどの蚊の魔物である。

 蚊なので人間の血を吸うが、普通の蚊と同じで痒みを伴う腫れができるだけで死ぬことはない。

 両手でパチンと潰すことができる極めて弱い魔物であるが、大概は数十匹の群れを形成している。

 そのため、1匹は弱くても、5匹、10匹に血を吸われると貧血になって倒れてしまう。


「ビッグモスキートは群れているから……ん、待てよ……そうだ!」


 ジュンは手を打った。


「シャル婆さん、網ってないですか?」

「網?」

「魚の漁をする網です」

「あぁ、あれかい。それなら、物置の中にあったと思うけどね」

「それ、もらえますか?」

「いいよ、持っておいき」

「ありがとうございます」


 ジュンは物置の中から網を引っ張り出した。

 もう分かったと思うが、この網でビッグモスキートを一網打尽にしようというのだ。


「これだとちょっと目が大きいかな?」


 網の目は3センチほど。

 ビッグモスキートは体長こそ20センチ程あるが、その体は細い。

 3センチの網目では、すり抜けられる可能性があるとジュンは考えた。


「補修用の糸もあるから、好きなように使いな」

「ありがとうございます!」


 ジュンは補修用の糸で、目の大きさを半分にした。

 見よう見まねで多少不格好な網目になったが、機能に問題がなければいい。

 この作業に時間がかかり丸2日使ってしまったが、命には代えられない。


 次はこの網を投げる練習だ。

 網が広がるように投げるのは、意外と難しい。

 しかも、相手は動いている。

 少なくとも狙ったところに投げることができないと、使い物にならない。

 その練習に5日、思い立ってから1週間が経過していた。


「ジュンは小柄だから、剣よりはこっちのほうがいいね、これを持っておいき」

「何から何まで、ありがとうございます」


 シャル婆さんは(なた)を差し出してきた。

 ショートソードと言われる片手剣よりも短く軽い。

 山や森に分け入ることが多かったジュンにとっては、使い慣れたものである。

 鉈を受け取ったジュンは、それをベルトに挿した。


「それでは、行ってきます!」

「無理するんじゃないよ」

「はい」


 網を肩に抱えて、意気揚々と家を出て行く。

 やると決めたら、やる。

 過去のことは消すことはできないが、思い出さないようにした。


 ジュンはジョブ・効率厨(アフィセンレーター)とスキル・チェーンスコアだけを見て進む。

 今はそれだけを考える時間でいい。

 むしろ何かをしていないと、勇者とミリアのことを思い出してしまうから集中してできた。

 これからもそれは変わらないかもしれないが、少なくとも前に進むことができる。


 家から少し歩いたところに、川が流れている。

 この辺りで倒木に引っかかっていたジュンは、運よくシャル婆さんに助けられた。

 そのことがなければ、今頃死んでいただろう。

 死んでいたら、このように前に進むことができなかった。

 シャル婆さんにもらった恩は、一生かけても返しきれないだろう。


「恩を返すためにも、効率厨(アフィセンレーター)をモノにしてみせる」


 ビッグモスキートは川辺に多くいるため、川の周囲を注意深く探っていく。

 家から100メートル離れると、1つ目の結界の外に出る。

 そこは弱い魔物が生息するエリアだ。


 山や森の中を歩くのは、幼い時からしてきた。

 魔物や動物の足跡や糞などの痕跡で、近くにいるかどうかが分かる。

 ただし、目当てのビッグモスキートは空を飛んでいることから、そういった情報を得ることができない。

 それでもビッグモスキートを探すことはできる。


 音だ。


 ビッグモスキートは群れており、その羽音はそれなりに大きい。


「いた」


 黒色の蠢くものが空中に浮いている。

 それがビッグモスキートの群れである。

 小さく弱い魔物だが、それでも魔物である。



ご愛読ありがとうございます。

これからも本作品をよろしくお願いします。


気に入った! もっと読みたい! と思いましたら評価してください。

『ブックマーク』『いいね』『評価』『レビュー』をよろしくです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ