026_雷神
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026_雷神
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冒険者ギルドが集めたポーターは12人(ポルテたち6人は除く)。冒険者は5人。
ポルテたちポーターが必死の形相でビッグボアを解体し、素材は冒険者によって台車に乗せられていく。
現在、ジュンのパーティーは、ルルデを含めて15人になっている。これで取得した経験値は15等分され、1回の狩りで入ってくる経験値が最小になる。
それでも次の狩りでレベルアップするだろう。そうなったらビッグボア狩りは終わりにして、キラーウルフを狩ることになる。
ルルデがビッグボアの群れを引き連れて近づいてくる。その光景は待っている者たちに恐怖を与えた。
しかし、無数の閃光が発せられ轟音が響き、100体程のビッグボアが瞬殺される。先ほどは逃げてこの光景を見てなかったが、なんという圧倒的な魔法なのかと驚愕した。
1回目に狩ったビッグボアの解体が終わったと思ったら、2回目だ。水を飲んで喉を潤したポーターたちはすぐに解体作業に入り、冒険者たちも必死で素材を台車に載せていく。
「ドルドさん。次はキラーウルフ狩になりますので、解体が終わったら移動します」
「お、おぅ。分かった」
上級雷魔法のサンダーレインにも驚いたが、こんな狩りを考えたジュンに驚愕したドルドは、言葉少なく返事した。
解体が終わり、場所を移動する。23台の台車におよそ200体分のビッグボアの素材が載せられているが、まだ余裕がある。他の冒険者とすれ違うと、その光景に目を剥いていた。
「マップによると、この辺りでいいと思います」
冊子のマップと周囲の地形を照らし合わせたジュンは、ルルデにトレインルートを簡単に指示した。難しいことを言っても、ルルデは分からない。それに、鼻と耳でキラーウルフとジュンたちの位置を把握しているため、迷子になることはない。
ルルデが走り出し、ポーターたちは今のうちに休憩だ。
キラーウルフのレベルは15なので、ジュンのレベルが21になるまで狩れる。
キラーウルフはオオカミ型の魔物で、銀灰色の毛皮と長い角が額に生えているのが特徴になる。素材は魔石が銀貨6枚、角が銀貨4枚、毛皮が銀貨2枚で買い取ってもらえる。
また、12人のポーターには経験値を平均的に与えてほしいとドルドに頼まれ、メンバーを少し入れ替えている。取得経験値の差に関しては、棚ぼただから文句を言うなとドルドが徹底していた。
ルルデが多くのキラーウルフを引き連れて戻って来た。ビッグボアよりもやや速い速度に感じたジュンは、タイミングを計る。
発動までに時間がかかるから、時間感覚は極めて重要だ。ジュンはこれまでの狩りや、毎日の鍛錬によってその感覚を身につけていた。
「サンダーレイン!」
轟っ!
閃光がキラーウルフを蹂躙し、雷鳴がジュンたちの耳を劈く。
雷神の怒りのような蹂躙撃が繰り広げられ、キラーウルフは物言わぬ屍へと変貌した。
「まるで雷神だな」
誰かがそう呟いた。
「よーし、解体始めるよー!」
ポルテがポーターに号令した。
ポルテよりも年上のポーターも居るが、この中ではポルテがリーダー格になる。
中には、以前ポルテが声をかけた収納士も居る。彼はポルテたちの羽振りの良さを見て、話を断ったことを後悔していた。そこにこの話が舞い込んできて、二つ返事で引き受けた。
そういったことからポルテへの負い目があり、ポルテがリーダーシップを発揮していることに文句はない。
この日、ジュンたちは4回(ビッグボアが2回、キラーウルフが2回)の狩りを行った。
ビッグボアの解体に、ジュンは関わらない。解体が彼らの仕事であり、魔物を狩ることがジュンの仕事だからだ。ポーターにはポーターの矜持があるのだ。
ビッグボアの討伐数:213体
買取単価 魔石:銀貨3枚 肉:銀貨3枚/10キロ 毛皮:銀貨2枚/10キロ
買取額 魔石:銀貨639枚 肉:銀貨639枚 毛皮:銀貨426枚 小計:銀貨1704枚
キラーウルフの討伐数:212体
買取単価 魔石:銀貨6枚 角:銀貨4枚 毛皮:銀貨2枚/10キロ
買取額 魔石:銀貨1272枚 角:銀貨848枚 毛皮:銀貨424枚 小計:銀貨2544枚
この日の買取総額は銀貨4248枚(大金貨4枚、金貨2枚、大銀貨4枚、銀貨8枚)。
ジュンパーティーは魔石分の銀貨1911枚とキラーウルフの角の1/3になる銀貨283枚(切り上げ)、残りの金額の20パーセントの銀貨411枚(切り上げ)、合計で銀貨2605枚を得た。
冒険者ギルドはジュンの取り分を引いた、銀貨1643枚から5パーセントを中抜きし、集まったポーターと冒険者17人に均等に分配した。
冒険者ギルドが中抜きした五パーセントは台車の代金を考えれば赤字だが、これからも続くなら黒字になる見込みだ。
ポーターや冒険者の取り分は銀貨91枚以上になり、1日の収入としては過去最高を更新した。
これを何度か繰り返して装備を揃えてくれればいいと、ドルドやジョンソンは思うのだがさっそく酒場に駆けこんでいく冒険者たちを見て苦笑した。
今回集められたポーターたちは、堅実な子が多かった。家に帰って家族に今日の報酬について語る。家族と食事を摂ったら、解体に使った短剣などの道具を手入れして次の仕事に備える。
冒険者と違って無駄遣いはあまりせず、家族を養うために稼いだお金を使うのだ。
ジュンも無駄遣いはしないから、あれだけ稼いでいても食事や宿は庶民と変わらない。ルルデに酒を買っても自分は飲まない。
「よく考えたら、ルルデさんの装備を買ってなかったね……」
ルルデの服は買ったが、武器や防具は買っていなかった。それで事足りていたから忘れていたのだ。
「私の装備の前に主様の装備を揃えるべきだろ」
「僕は大丈夫だよ」
「主様が武器や防具を持っていないのに、奴隷の私が買ってもらうわけにはいかないだろ」
正確には鉈という武器は持っている。しかし、それを武器とはみなさないとルルデは言う。
「それじゃあ、次の休みは2人の防具を買いに行きましょうか」
「主様の分を買うなら、文句は言わない」
この時の2人は忘れていた。ルルデがドルドの姪だということを。この2人にドルドがどう絡むのか。それは誰にも分からない。
食堂で美味しい夕食を摂った2人は、宿へと向かう。だが、その途中、ジュンたちの後をつける気配があった。
その気配はルルデにしっかりと補足されていたが、距離をとって遠巻きに監視しているだけだった。
ルルデはジュンにそのことを教えた。
「何がしたいんだろうな」
「僕もそういった気配に気づけたほうがいいのかな……」
「主様は私が護る。安心しろ」
「ありがとうございます」
ジュンはにこやかに感謝を口にする。
宿に戻ると、今日まで貯めたCHSCを能力に振ることにした。
生命力+30(CHSC100ポイント)
魔力+180(CHSC600ポイント)
体力+30(CHSC300ポイント)
知力+30(CHSC300ポイント)
抵抗+30(CHSC300ポイント)
器用+10(CHSC100ポイント)
何かあっても一撃では死なないように、生命力と体力を上げた。
あとは魔力を多めに上げて、雷魔法・サンダーレインの発動回数を増やした。
まだCHSCは残っているが、今後何かあった時に対応できるように、CHSCを使い切らないようにした。
+・+・+・+・+・+・+・+・+・+
●ジュン・ステータス
【ジョブ】効率厨
【レベル】18
【経験値】918/5700
【生命力】100/100
【魔力】425/425
【腕力】24
【体力】63
【知力】165
【抵抗】160
【器用】92
【俊敏】37
【スキル】チェーンスコア
【感覚スキル】聴覚強化Lv2
【補助スキル】時間短縮Lv3
【下級魔法】エアカッター
【中級魔法】トルネド サンダー
【上級魔法】サンダーレイン
【CHSC】743
【身分】冒険者
【賞罰】