024_ギルドの思惑
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024_ギルドの思惑
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ルルデはレベル15でスキル・黄金獅子を覚えた。
この黄金獅子は、獣化することで能力が3倍に引き上げられるという効果がある。
獣化すると容姿が黄金の獅子のそれになってしまうので下手をすると魔物に間違われてしまう可能性はあるが、獣化に時間制限はなく能力が3倍という圧倒的な効果を得るのでかなり強力なスキルだ。
黄金獅子にはレベル表記がないので効果が変化したり成長することはないものの、容姿が変わる以外のデメリットはないので非常に使いやすいスキルである。
ただし、マラソン要員のルルデに、この黄金獅子を発動させる機会があるだろうか?
この日、ジュンたちは4回の狩りで、414体のビッグボアを倒した。CHSCは804ポイントを稼いだ。
魔石414個。肉1470キロ。これだけの素材をギルドが買い取って、銀貨1683枚を稼いだ。
「おいおい、日に日に増えているんだが? まさかと思うが、明日はさらに増えるのか?」
ジョンソンは肩を窄め、聞いてきた。
「増えるかはわかりませんが、買い取りできませんか?」
「いや、買取はする。共にどれだけあっても問題ない。ところで、魔石の数からして、肉の一部と毛皮は全部捨てているのか?」
「数が多いので、魔石と持てるだけの肉以外は、回収してません」
「……そりゃあ、そうだわなぁ」
ポーターを6人も連れているが、それだけでは手が足りない数の魔石が持ち込まれている。
肉と毛皮を全部回収しようと思うと、8トン以上の重量になる。とても回収できる量ではないし、それ以前に解体が出来ないだろう。
「なあ、本来はダメなんだが、お前さんたちが捨ててきた肉や毛皮をギルドで回収させてもらえないか?」
魔物の死体は、倒した冒険者に所有権がある。それを冒険者ギルドで回収したいと言うのは、本来であればいけないことである。
だが、ジュンたちは魔石と一部の肉を持ち帰り、それ以外を捨ててきている。そういう意味では禁止されているわけではない。
「ギルドがハイエナをするの?」
誰かが放置した魔物から素材を得ることをハイエナと言って、冒険者間では軽蔑の対象のように言われている。
ポルテがそれを指摘すると、ジョンソンは苦笑した。
「だが、それだけの量を捨てるのは勿体ないと思わないか?」
「オイラもそう思うけど、ギルドがハイエナを公然とやろうって言うのも、どうかと思うよ」
「ははは。お前さんは痛いところを突いてくるな。そこでだ、冒険者ギルドが回収した素材の10パーセントをそっちに還元するってのでどうだ? それなら、お前さんたちも儲けが増えるぞ」
「30パーセント!」
「むぅ……20パーセントだ。こっちだって、人を手配したり色々経費がかかるから、それ以上は無理だ」
「兄ちゃん、20パーセントでいいかな?」
「え?」
ジュンは捨てたものの所有権を主張する気はないので、冒険者ギルドが素材を回収しても何かを言うつもりはなかった。20パーセントももらえる話になり、驚いているくらいだ。
「僕は構わないけど……」
ポルテはジョンソンと細かい話し合いを行った。
決まったことは、ジュンパーティーは魔石とそれ以外で、一番高い素材の1/3を固定でもらい、残りの素材の金額の20パーセント上積みすることで金額面の折り合いをつけた。
さらにポーターと冒険者全員に、台車を支給すること。これにはポルテたち6人のポーターも含まれるが、ジュンとルルデは含まない。
「よし、決まった! 明日はいつからダンジョンに入るんだ?」
ジョンソンはこれ以上条件を増やされてはたまらないと、話を打ち切った。
「ちょっと待ってください。僕たちは明日もダンジョンに入りますが、そろそろレベルが17になるので、ビックボアからキラーウルフに狩りの対象を変えるつもりです」
「キラーウルフなら角と毛皮が買取できる。ビッグボアとキラーウルフを合わせて400体以上でいいな?」
「そうです」
「そうすると、レベル20まではキラーウルフ、その後はケルピーとアーマーライノだな」
ジョンソンは頭の中で皮算用をする。
「アーマーライノは狩りません」
「なんでだ? あれが一番金になるぞ?」
「僕たちの狩りに合わないので、飛ばしてDランクダンジョンに行くつもりです」
「そうか……。でも、Dランクダンジョンでも大量に狩るんだろ?」
「僕たちの狩り方に合えばですけど」
ジョンソンはギルドの幹部なだけあって、ダンジョンの情報は頭に入っている。ジュンたちの狩りがどれだけできるか、考えを巡らせた。
ジョンソンとのすり合わせを終えたジュンたちは、冒険者ギルドを出た。
ダンジョンに行く毎に、前回の収入を上回る。冒険者の身分証に入金されているため、お金持ちになったつもりはないジュンだが、それなりの金額が身分証に入っていた。
それはポーターたちも同じだ。銀貨1683枚の40パーセントを6等分しているため、Eランクダンジョンのポーターではあり得ない金貨1枚以上を得ている。
「兄ちゃんたちのおかげで、何日分ものお金が1日で手に入るよ。ありがとう!」
「おう、感謝しているぜ」
ポーターたちが口々に感謝を言う。しかも、経験値まで分けてもらっている。お金をもらい経験値までもらうポーターは、この6人以外に居ないだろう。
「僕のほうこそ助かっているよ。ありがとうね」
ジュンはジュンで、経験値を分散させられるので助かっている。お互いにウィン・ウィンの関係だ。
Eランク冒険者でも稼げているのは、半分にも満たない。Fランクダンジョンを踏破しても、すぐに強くなれるわけではないからだ。
必死に強くなろうとして魔物と戦い、経験値を得てレベルアップを果たして能力を高める。
そしてEランク冒険者のレベル帯は、一気に必要経験値が増える。レベル15がレベルアップするのに必要な経験値は1600ポイントだが、レベル16がレベルアップに必要な経験値はなんと5100ポイントになるのだ。
このような必要経験値が一気に上がることは、他のレベルでもある。ジュンにとっては必要経験値が増えることは嬉しいことだが、一般的にはレベルアップの壁として認識されているのであった。
必要経験値が多くなると、その分多くの魔物と戦って経験値を稼がなければならない。その副産物として戦いの勘を養っていく。それがEランク冒険者というものなのだ。
経験値のことは今回は置いておいて、ジョンソンは日々の暮らしにも窮しているEランク冒険者とポーターたちに声をかけた。さらに、素材を運ぶ台車を手配した。
そして、上司であるギルドマスターのドルドに報告した。
「俺に報告する前に全ての手配を終えているってのは、どういうつもりだ?」
「いいじゃねぇか。あの坊主たちが今日と同じくらい狩るなら、大金貨分の素材が放置されるんだぞ。回収しない手はないだろ」
ジュンが冒険者登録した時に対応した獅子獣人のドルドが、この冒険者ギルドのトップである。登録時のジュンのレベルと能力がアンバランスだったのをよく覚えている。
「まあいい。上手いことやれ」
それで少しでもEランク冒険者に余裕が出来て、武器や防具に使う金ができたら言うことはない。もっとも、そういった金を得たらすぐに酒や女に消えていくのが、冒険者でもあるのだが。
「ああ、そうするぜ」
ジョンソンとドルドは元々同じパーティーの仲間だった。年を取り冒険者を引退する時に、当時のギルマスにスカウトされてギルドの幹部候補になったのだ。
今ではドルドがギルマス、ジョンソンが買取や経理の担当幹部である。
「しかし、面白い。1日で400体ものビックボアを狩ってきた奴なんて、初めてだぜ」
「ああ、俺も積み上げられた魔石を見て、目を疑ったからな」
「期待の大型新人ってやつだな。明日は、俺も引率としてその狩りを見させてもらうぜ」
「わざわざドルドが行かなくてもいいんじゃないか?」
「いや、この目で見ておきたい」
「まあ、ギルマスはお前だ、好きにすればいいさ」
2人はニヤリと笑い合った。
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●ジュン・ステータス
【ジョブ】効率厨
【レベル】17
【経験値】4937/5400
【生命力】70/70
【魔力】245/245
【腕力】24
【体力】33
【知力】135
【抵抗】130
【器用】82
【俊敏】37
【スキル】チェーンスコア
【感覚スキル】聴覚強化Lv2
【補助スキル】時間短縮Lv3
【下級魔法】エアカッター
【中級魔法】トルネド サンダー
【上級魔法】サンダーレイン
【CHSC】1618
【身分】冒険者
【賞罰】
●ルルデ・ステータス
【ジョブ】黄金戦士
【レベル】17
【経験値】2935/5400
【生命力】305/305
【魔力】44/44
【腕力】132
【体力】137
【知力】22
【抵抗】49
【器用】44
【俊敏】132
【スキル】黄金気Lv2 黄金獅子
【身分】奴隷
【賞罰】




