018_Eランク冒険者
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018_Eランク冒険者
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宿屋で部屋を借りる時、奴隷は主人と一緒の部屋でないと泊められないとのことで、ルルデはジュンと同じ部屋に泊っている。
奴隷1人で部屋を使っていると、良からぬことを考える者がいるのだとか。特に女性奴隷の場合にそういうことがよくあったらしい。
ルルデはジュンを主と決めた以上、肉体関係を求められても良いと思っている。だが、ジュンがルルデに手を出すことはなかった。
奴隷にもしっかりと権利があって、ルルデの場合はジュンの冒険者活動の補助的な契約だからだが、そういった権利がなくてもジュンは軽い女性不信に陥っているから手を出すことはないだろう。
「昨日はありがとうございました。今日もお願いします」
「任せておけ!」
ルルデは胸をドンと叩く。
それがなかなか力強く、頼りになると感じるジュン。
「昨日の夜聞いた通り、ボスは任せてもらえるんだろうな?」
「ええ、お任せします。それに、今日はロックゴーレムのエリアに向かいますから、それまでのルートで出てくるゴーレムやマッドゴーレムも倒してもらっていいですよ」
Fランクダンジョンのボスは、ロックゴーレムが3体。これではCHSCは稼げないので、ルルデが倒すのは問題ない。
ルルデはマラソンをしているので、ジュンが倒した魔物の経験値をジュンと折半している。
そのため、レベルが上がってボスロックゴーレムと戦えるまでになった。
昨夜、そのことについて話した。解体で腐っていたルルデは、その話を聞いてやる気になった。
ジュンにしてみれば、CHSCを稼げない単体の魔物を狩る意味ははない。だからCHSCが稼げない魔物は、喜んでルルデに討伐を任せる。
「それを聞いて、やる気が出たぜ!」
Fランクダンジョンで出てくる魔物は3種類で、すでにゴーレムでは経験値を稼げない。経験値を稼げないと、CHSCも稼げない。
現在のジュンのレベルは13で、レベル8のマッドゴーレムを狩ってもすぐにレベル差が6になってしまう。
レベルが14になったらすぐにロックゴーレム狩りに移行できるように、冊子を何度も見返してマップを記憶した。
マッドゴーレム狩りを2回行ったところで、ジュンはレベル14になった。
そこで予定通りロックゴーレム狩りに移行した。
「居ました。あれがロックゴーレムです。分かっていると思いますが、マッドゴーレムより動きが速くなっていますので気をつけてください」
「任せておけ」
ロックゴーレムLv10。ロックゴーレム相手だとレベル16になるまでCHSCが稼げる。
ルルデが駆け出す。
しばらくすると、ロックゴーレムを引き連れてきた。
「主様!」
「うん。トルネド!」
空気を裂く竜巻が、ロックゴーレムを蹂躙する。
ガリガリとその体を削り、ロックゴーレムの生命力を奪っていった。
「しかし、主様の魔法は凄いな。これだけのロックゴーレムを一掃できる魔法をレベル13で使えるものなのか?」
「僕の場合は、ちょっと違うんです」
「違うとは?」
「ふふふ。その話はいずれまた」
笑って誤魔化したジュンに、ルルデは頬を膨らませる。
はたから見れば可愛らしい仕草だが、ジュンの目にその可愛らしい仕草は映っていない。
この日は6回の狩りを行いダンジョンを出た。
レベルはすでに16になっていたジュンは、経験値もCHSCも得られなかった。
ボスも倒し、Fランクダンジョンを踏破した。ボス部屋の扉から地上の扉を出ると、踏破証明書がもらえた。
狩りはなんとか6回できた。これが今の現状。
数がこなせないのは、解体のせいだ。だから、解体要員を増やそうと考えた。
また奴隷を買うか、それともパーティーを組むか、迷うところだ。
ただ、普通の冒険者がジュンの狩り方を了承してくれるとは、考えづらい。やはり奴隷なのかもしれない。
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翌日、ダンジョンに入る前に冒険者ギルドに寄って、溜まった魔石を買い取ってもらうことにした。
新人登録はむさ苦しい獅子獣人の男性職員が行っている。今日もその獅子獣人は座っている。
対して受付カウンターは女性職員が多い。7人の内1人が男性で6人が女性だ。
女性の受付職員が多いのは、冒険者の7割ほどが男性のためだ。
冒険者はダンジョンに入るのも依頼を受けるのも自由なので、金が入ると働かない男性冒険者が多い。そういった男性冒険者の対策として、受付カウンターに見目麗しい女性職員を配置しているのだ。
男性冒険者は女性職員に良いところを見せようと、気合を入れて働き冒険者ギルドに利益をもたらしてくれるわけである。
ジュンは買取カウンターの男性職員に魔石を提出した。そのあまりの多さに、冒険者ギルドの職員が面食らっていた。
しかし、魔石は冒険者ギルドの収入源だ。多ければ多いほど、冒険者ギルドは儲かる。魔石の確認する職員は大変だが、全体としては喜ばしいことだ。もっとも、毎日小まめに換金してくれれば、職員が大変な思いをすることもないのだが。
魔石の換金を忘れていたため、数が多かった。必然的に換金額も多くなったが、現金ではなく身分証に全部振り込まれるので実感が湧かない。
換金時に、Fランクダンジョンの踏破証明書を提出した。
「おめでとうございます。ジュン様はEランク冒険者にランクアップしました」
「ありがとうございます」
「Eランクダンジョンは魔物がこれまでよりも強くなります。それに罠もあります。十分に気をつけてください」
「罠ですか……。分かりました。ご忠告、ありがとうございます」
これでジュンは一人前の冒険者だ。
世間ではFランクダンジョンを踏破してこそ冒険者であると言われ、Eランクダンジョンからが本当の冒険者だと言われている。
そのように言われるのは、魔物の強さもそうだが罠の存在が大きい。それに、Eランクダンジョンから収入が大幅に上がることになる。
「また、ポーターを雇う場合、ポーターの安全を担保しなければいけません。ポーターが死にジュン様が生き残った場合、多額の損害賠償が課せられます」
「ポーター……ですか?」
ポーターとは、荷物運びを生業にしている者たちのことだ。冒険者以外で常習的にダンジョンに入っている者たちのことだが、戦闘能力はほとんどなくポーターの安全を確保するのは冒険者の役目である。
ポーターが必要になる大きな要因は、魔物から得られるものが魔石以外にもあるからだ。
これまでのGランクダンジョンとFランクダンジョンでは、魔石しか入手できなかった。それが、Eランクダンジョンになると魔石以外にも素材が手に入るようになる。
1体から得られる資金が多くなると、冒険者が潤う。そういった素材を持ち帰るためにも、荷物運搬を生業としているポーターは貴重な労働力である。
しかも、荷物の運搬だけではなく、魔物の解体もポーターの役割の1つなのでEランクダンジョン以上のダンジョンに入る時は、ポーターを連れて行くのが冒険者の常識である。
受付でランクアップの手続きを済ませたジュンは、Eランクダンジョンの冊子を買った。
Eランクダンジョンに向かう前に冊子を読む。
「ハムハム、美味い」
冊子を読むジュンの横で、ルルデが串焼きを食べている。
日頃はクールな表情をしている美人のルルデだが、美味しい食べ物を食べるとその表情が自然と緩む。
奴隷の主人としてのジュンは、甘いと言われるほどに優しい。
ルルデが腹が空いたと言えば食事を与え、喉が渇いたと言えば果実水を与える。狩りの後ならエールだって与える。
奴隷に衣食住を保障するのは主の義務だが、その義務以上のものを与えているのだ。
読み終えたジュンは、パタンッと冊子を閉じる。
レベルに比べ知力が圧倒的に高いジュンは、冊子の内容をしっかりと把握した。
冒険者ギルドは冊子の内容が全てではないと、注意書きを最初に記載している。そのことも含めて、ジュンは理解している。
知力が高いということは、このような理解力も良くなるということである。
ただし、レベルに比べて高いというのが前提なので、知力値が高くてもそれ以上にレベルが高い場合は、理解力が低いらしい。
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●ジュン・ステータス
【ジョブ】効率厨
【レベル】16
【経験値】0/5100
【生命力】70/70
【魔力】155/155
【腕力】24
【体力】33
【知力】80
【抵抗】75
【器用】62
【俊敏】37
【スキル】チェーンスコア
【感覚スキル】聴覚強化Lv2
【補助スキル】時間短縮Lv3
【下級魔法】エアカッター
【中級魔法】トルネド サンダー
【CHSC】1477
【身分】冒険者
【賞罰】
●ルルデ・ステータス
【ジョブ】黄金戦士
【レベル】13
【経験値】1097/1400
【生命力】245/245
【魔力】36/36
【腕力】108
【体力】113
【知力】18
【抵抗】41
【器用】36
【俊敏】108
【スキル】黄金気Lv1
【身分】奴隷
【賞罰】




