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015_誇り高き獅子

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 015_誇り高き獅子

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「死ぬ覚悟はありますか?」

 戦闘をする以上は、最悪死ぬこともある。その覚悟があるのかという意味だと、アルパチーノは受け取った。それは奴隷の女性も同じだった。

 だが、ジュンの意図はそうではなく、死ぬほどのダメージを受けないと文字化けは解消されないというものである。

 シャル婆さんの経験も聞いているので、自分たちが経験したような瀕死の状態にならないと文字化けが解消されることはないだろう。


「戦って死ぬのであれば、本望だ」

 獅子の獣人は、獣人の中でも身体能力に優れており、戦士や闘士として優秀である。

 戦う種族として有名な獅子の獣人は、戦いに生き戦いに死すとまで言われている。そんな誇り高き獅子獣人らしい言葉が返ってきて、ジュンは彼女の目から強い意志が感じた。


「僕に従う気はありますか?」

「戦いに関して、たとえ死地に向かえというものであっても、命令は守る」

 つまり、戦い以外では不本意な命令に従わないということだ。ジュンには、それが理解できた。


「僕は魔法を使うから、あなたに魔物を引きつけてもらいたいと思っています。問題はないですか?」

「問題ない」

 ジュンが求めているのは、魔物を引き連れてマラソンできる奴隷である。「引きつける」の意味を分かってない奴隷は、「マラソン」をする時にかなり戸惑うことになるのだが、それはもう少し後の話だ。


「アルパチーノさん。この人を買います」

「ありがとうございます。他の奴隷はいかがですか?」

「いえ、この人だけで大丈夫です。また、欲しい時に来ますので」

「承知いたしました。では、契約に入らさせていただきます」

 他の奴隷が下げられ、獅子獣人とアルパチーノが残った。


「この奴隷の名前はルルデです。ルルデ、ご主人様にご挨拶をしなさい」

「ルルデだ。よろしく頼む」

 主人に対して不遜な物言いだが、奴隷なので色々な育ちの者が居る。

 ルルデはこういった物言いが普通の環境だった。ジュンはそれを直す必要はないと思っている。

「僕はジュンです。冒険者をしています。よろしくお願いします」


 購入することになったルルデは、終身奴隷ではない借金奴隷だから1年後に奴隷契約は自然に解消される。

 奴隷が外に出る時は、奴隷の首輪をすることが法で決まっている。

 奴隷は冒険者にはなれないが、主人の持ち物としてダンジョンに入ることは可能。

 奴隷であっても、故意に傷つけたり殺すのは法で禁じられている。奴隷であっても、無理やり性的行為に及ぶのは法で禁じられている。

 などの説明をアルパチーノから受ける。こうやってしつこく言うのは、この国の奴隷に関する法がそれだけ厳しいからである。


「過去には多くの奴隷を殺害した貴族が、死刑になっています」

「貴族なのに死刑になったのですか?」

「それがこの帝国の法ですから」

 ジュンの知っているルディオル王国の奴隷の扱いは酷いものだったが、このゾンダーク帝国は全然違った。

 国が違えば、法も違う。それどころか、奴隷にも権利があるのだ。


「冒険者の手伝いをする奴隷ですから、戦闘で命を失うことは法に触れません。しかし、それが故意に殺害したものなら、罰せられます。そのことを忘れないでください」

 それは賞罰欄を見れば明らかになる。

「はい。分かりました」

 奴隷に労働力を期待しているだけのジュンなので、そういった内容に納得して契約した。


 契約はアルパチーノのスキルで行われ、解除や契約内容の変更は同じ隷属化のスキルを持つ人物にしかできない。ただし、期間満了による自然消滅は含まない。

 最後に、違法奴隷を扱う隠れ奴隷商人も居る。そういった奴隷商人から違法奴隷を購入した場合、ジュンも罪に問われるので気をつけるようにと奴隷所有許可証をもらった。


 アルパチーノに礼を言って、奴隷を連れて店を出たジュン。

 ルルデの身長は172センチ。対してジュンは163センチ。並んで歩くとジュンの小柄さが際立つ。


「ルルデさんのジョブについてだけど」

「ジョブの話はあまりしたくない」

 明確な拒絶だった。

 獅子獣人は誇り高き種族。だから、ジョブが文字化けしているルルデは、それこそ異端者のような扱いだった。両親はすでに他界していて、誰もルルデを護ってくれなかった。


「そうですか。でも、ジョブの文字化けは直りますよ」

「は?」

「もちろん、スキルの文字化けも直ります」

「バカなことを!」

 いくら奴隷だからと言って、そんな世迷言を信じる程愚かではない。ルルデは厳しく鋭い目でジュンを睨めつける。


「本当ですよ。僕も文字化けしてましたから」

「なん……だと?」

 勇者のことは伏せて崖から落ちて激流に流されたことで、ジョブとスキルの文字化けが正常な表示になった。

 魂に大きな負荷がかかることで、文字化けは解消できると教えた。命に関わることだから、試すかどうかはルルデ次第だ。


「……やる。それで文字化けが直るのであれば、なんでもする!」

「でも、命がけですよ」

「文字化けが直るなら、命をかけることなど大したことではない」

「……でも、文字化けが直っても、ルルデさんの希望通りのジョブだとは限りませんからね」

「そんなことはやってから考えればいい。どうすればいいのだ、崖から飛び降りればいいのか?」

 ルルデは目の前に崖があったら、躊躇なく飛び降りそうな勢いだ。


「ある人が言っていましたが、死ぬほどの思いをすれば良いと」

「つまり、崖は不要なのか?」

「はい。どんなことでもいいのです」

「だったら、魔物と戦わせてくれ。命の危険がある魔物と戦いたい」

 戦うことに誇りを持つ種族なだけあって、命の危機は魔物との戦いで迎えたい。それで死んでも悔いはないとルルデは力説する。

 ただし、ここで死なれてはジュンが金貨1枚損するのだが……。



 ●ルルデ・ステータス

【ジョブ】%$#&%

【レベル】0

【経験値】$%#$%$

【生命力】25/25

【魔力】5/5

【腕力】15

【体力】20

【知力】3

【抵抗】10

【器用】5

【俊敏】18

【スキル】$%##$

【身分】奴隷

【賞罰】




 ●ジュン・ステータス

【ジョブ】効率厨(アフィセンレーター)

【レベル】12

【経験値】0/1300

【生命力】70/70

【魔力】155/155

【腕力】24

【体力】33

【知力】80

【抵抗】75

【器用】62

【俊敏】37

【スキル】チェーンスコア

【感覚スキル】聴覚強化Lv2

【補助スキル】時間短縮Lv1

【下級魔法】エアカッター

【中級魔法】トルネド サンダー

【CHSC】366

【身分】冒険者

【賞罰】



 ・

 ・

 ・


 ドミニクは焦っていた。いや、苛立っていた。

 自分は勇者で、なんでも思い通りになる。何をしても許されるのが当然だと考えている。なのに、新しいハーレム要員であるミリアを抱くことができない。平民で勇者を補佐する魔導士(アークウィザード)であるミリアは、ドミニクのハーレムの一員になって当然なのだ。


 ミリアの横には常にルミナスが居る。ルミナスは聖女だからか、ドミニクのスキル・魅惑の効果がない。それも腹が立つことだが、聖女というジョブを考えれば抵抗(レジスト)されることもあるだろう。

 だから新しいハーレム要員のミリアが現れたことが嬉しかった。楽しかった。

 それなのに、ミリアを寝所に呼んでもルミナスが断ってくる。

「未婚の女性を寝所に呼ぶなど、あってはならないことですよ、ドミニク殿」

「男女のことは当人同士が合意すればいいことだろ!」

 ドミニクがそう主張しても、ルミナスは一歩も引かない。むしろドミニクを蔑むような目で見てくる。

 勇者である自分をなんだと思っているのかと、殴りかかりそうになるのをなんとか我慢した。


 思い通りにならないルミナスを勇者パーティーから追放しようとしたこともある。しかし、ルミナスは大国マサリ・マミス教皇国の出身だ。しかも父親は貴族司教である。

 貴族司教はマサリ・マミス教皇国の支配層であり、実質的に国を動かしている。

 明確な理由もなくルミナスを追放すれば、マサリ・マミス教皇国が動く。それはあってはならない。


 ルミナスをダンジョンの中で殺そうと思ったこともある。だが、それも悪手だ。ルミナスだけ死んでドミニクたちが生き残れば、マサリ・マミス教皇国が黙っていないだろう。

 勇者はマサリ・マミス教によってその地位を保障されている。大きな宗教がバックにあるからこそ、ドミニクが好き勝手しても許されることころがあるのだ。

 それに、ルミナスは回復と支援要員として優秀だ。聖女というジョブは伊達ではないと、ドミニクでも分かっていた。


「くそ……僕は勇者なんだぞ……」

 最初は新しいハーレム要員が来たと喜んだが、思い通りにできないルミナスの存在は邪魔でしかない。

 なんとか弱みを掴んでやろうと躍起になっても、ルミナスは聖女に相応しい品行方正な女性であった。


 

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