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014_心身ともに疲弊する

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 014_心身ともに疲弊する

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 やっとのことで魔石の回収を終えたジュンは、他のゴーレムポイントに向かった。

 一度に825ポイントの経験値を得ることから、ゴーレム1体から得る経験値は15ポイント。

 ゴーレムのレベルは6のため、ジュンがレベル12になると経験値を得られなくなる。


 現在、ジュンはレベル11で経験値は825/1200のため、ゴーレム25体を倒したら経験値が溜まってしまう。つまり、あと1回しかゴーレムで狩りはできない。

 レッドスライム狩りの時、経験値がマックスまで溜まって切り捨てられてしまったことを思い出す。しかし、CHSCは切り捨てになっていなかった。

 ここは、経験値を無視してCHSCを溜める場面だとジュンは考えた。


「はぁはぁ……」

 とにかく多くのゴーレムを引き連れて走った。おかげで息が上ってしまった。

「もう限界だ……」

 4.5秒という時間的距離をなんとか稼ぎ、立ち止まったジュンは風魔法・トルネドを発動させた。


 竜巻が多くのゴーレムを巻き込んでいく。その光景をただ見つめるのではなく、うち漏らしたゴーレムが居た時の場合に備えて雷魔法・サンダーの発動も用意した。

 その準備は徒労に終わった。風魔法・トルネドはゴーレムを倒しきった。


 今回倒したゴーレムは77体。レベルが12になってしまって経験値は切り捨てられたが、CHSCは147ポイント全て入った。

 息を切らせてステータスボードを見つめた。

「経験値みたいに切り捨てじゃないから嬉しいね」

 笑顔になったジュンだが、ステータスボードを消してゴーレムの死体を見た時に、その笑顔が引きつった。

「魔石の回収は大変だ……」


 ゴーレムを倒すのは、マラソンも入れて30分くらい。しかし、解体にかかった時間は5時間以上かかった。

「魔石回収に梃子摺りすぎて、ゴーレム狩りが捗らない……」

 だからと言って魔石の回収をしないというわけにはいかない。魔石を回収しないと、お金が稼げないからだ。

 お金がなければ食事もできないし、宿にも泊まれなくなる。


「魔石回収と魔物のマラソンを任せられる人が居たらもっとCHSCを稼げるのかな?」

 仲間を募っても、ジュンの狩り方を受け入れてくれる人は居ないだろう。

 ジュンの一番の目的はCHSCを稼ぐことで、お金は暮らしていけるだけの最低限の金額があればいい。

 お金を差し出して狩り方に納得してもらうという手もあるが、ここでルディオたちの言葉が浮かんでくる。冒険者を信じるなと、口を揃えて言っていた。


 さらに、ゲッツの言葉が浮かんでくる。

「奴隷……か……」

 主人を裏切ることができない奴隷なら、冒険者と違って危険は少ない。

 だけど、自分のエゴのために、奴隷を危険に曝してもいいのかという感情が湧いてくるのだ。


 その日は疲れたから、宿にチェックインした。たった2回の殲滅戦をしただけだが、解体が大変で疲れ果てて泥のように眠った。

 翌日、ルディオたちに相談してみようと思い、モーリスの店を訪ねてみたら、モーリスが対応してくれた。


「ハハハ。そんなことで悩んでおいででしたか。この国では奴隷にも働く環境を決める権利があります。ですから、ジュンさんの条件に合う奴隷を買えば良いのです」

 奴隷にも人権があって、やりたくない仕事を無理やりさせることはできない。

「奴隷ってどのくらいしますか?」

「購入金額でしたら、金貨1枚からですね。上を見たらキリがありませんので、どこで妥協するかです」

「なるほど……」


 金貨1枚は大金なのに、モーリスの話では金貨3枚くらいは覚悟しなければならない。

 諦めようとしたところで、シャル婆さんにもらった魔結晶を思い出した。

「あの、これをモーリスさんの店で引き取ってもらうことって、可能ですか?」

「ほう、魔結晶ですね。ちょっと拝見しますね」

 魔結晶を渡すと、モーリスは角度を変えてマジマジと見定める。


「これでしたら、金貨6枚でどうでしょうか?」

「え、金貨5枚じゃないんですか?」

「ははは。ジュンさんはお目が高い。たしかにこの魔結晶でしたら金貨5枚といったところが相場でしょう。ただし、それは通常であればです」

「通常であれば?」

「はい。今は魔結晶が品薄なのです。ですから、通常よりもやや高値で引き取っています」

「それでしたら、金貨6枚でお願いします」

「はい。身分証を出していただけますか」

 モーリスは自分の身分証とジュンの身分証を重ねた。

「はい。これで支払いができました。これからもご贔屓にお願いいたします」

「こちらこそ、ありがとうございました」


 その後、モーリスから奴隷商人を紹介されたジュンは、その奴隷商人の店に向かった。


 奴隷商人の店の前を行ったり来たり。

 ジュンの感覚では奴隷を購入するのは、敷居が高い。店まで行ったは良いが、入る決心がつかないのだ。

 そんな怪しいジュンを見かねたのか、店の中から1人の紳士が出てきて声をかける。


「当店に御用でしょうか?」

 60歳くらいで細い体つきだったこともあると思うが、紳士は物腰柔らかな言葉遣いでジュンに威圧感を一切感じさせなかった。

「あ、あの……これを……」

 モーリスの紹介状を差し出す。それを読んだ紳士はニコリと微笑んだ。

「モーリス様のご紹介であれば、できうる限りのことはさせていただきます。私はこの店の店主でアルパチーノと申します。どうぞ、中へお入りください」

 個室に通されて、女性店員がお茶を出してくれた。


「それでは、お客様のご要望される奴隷の条件をお聞かせください」

「あ、はい。僕は冒険者なので、魔物と戦うことが絶対条件です。あと、できれば足が速いほうがいいです」

「魔物と戦闘をして、俊敏値は高いほうが良い。他にございますか?」

「そうですね……俊敏ほどではないにしても、体力は高いほうがいいです。それ以外は、特にありません」

「承知しました。奴隷を用意する前に、少しだけ奴隷についてお話しさせていただきます」

「はい」

 アルパチーノは、この国の奴隷制度について語った。

 簡単にまとめると、奴隷にも権利があるというものである。


「それでは、奴隷を連れてまいりますので、少々お待ちください」

 所在なく座り、心を落ちつかせるためにお茶を飲む。

「熱っ!?」

 客に出すお茶なので飲みやすい温度なのだが、ジュンは猫舌だった。そんなことをしていると、アルパチーノが戻ってきた。


「これから奴隷を部屋に入れさせていただきます。よろしいでしょうか」

「はい、お願いします」

 アルパチーノの合図で10人の奴隷が部屋の中に入ってきた。

 男性が6人、女性が4人。

 男性の2人は人族だが、他は全て獣人である。

 俊敏と体力が高いということで、獣人が多いのだろう。


「俊敏値が高い者たちを用意いたしました」

「あの、ステータスを確認させてもらってもいいですか?」

「はい。構いません」

 アルパチーノは10人にステータスボードを表示させた。

 ジュンは男性のほうから見ていく。


 男性1)レベル10 俊敏48 体力20

 男性2)レベル15 俊敏66 体力22

 男性3)レベル8 俊敏44 体力16

 男性4)レベル5 俊敏35 体力12

 男性5)レベル8 俊敏45 体力15

 男性6)レベル10 俊敏49 体力18

 女性1)レベル15 俊敏68 体力20

 女性2)レベル11 俊敏50 体力23

 女性3)レベル13 俊敏61 体力21

 女性4)レベル0 俊敏18 体力20


 最後の女性のステータスボードを見た時、ジュンはその目を見張った。

 レベルは0でジョブとスキルの欄が文字化けしているのだ。

「その奴隷はジョブが分かっておりません」


 そこまで容姿に気を止めていなかったが、奴隷の顔を見る。

 目つきは鋭く小さな牙が口からちょろんと出ている。おそらく獅子の獣人だと思われ、獅子らしい黄金の髪をしている。


「ジョブが分からないため、スキルは使えません」

 また、経験値の欄も文字化けしていて、レベルが上がることはない。それは、ジュンも経験済みのことだった。

 レベルが上がらないということは、能力も上がらない。ジョブが生産職なら別だが、獅子の獣人なら腕力や体力、俊敏という値が伸びやすいはずだが、それも期待できない。

 ジュンの効率厨(アフィセンレーター)のように、レベルが上がっても能力がまったく上がらないようなジョブもあるが、それは稀なことだ。


「この奴隷は成長が見込めません。ですから最安値で提供させていただきます」

 成長が見込めないこの奴隷の代金は、金貨1枚で最安値だとアルパチーノは語った。

 ジュンはその奴隷にいくつか質問することにした。


 

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