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012_Gランクダンジョン

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 012_Gランクダンジョン

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 ダンジョン都市のGランクダンジョンは、スライム系の魔物が出てくる。スライムというとキングスライムを思い出すが、キングスライムがGランクダンジョンで出た記録はない。

 出てくるのはスライムLv1、イエロースライムLv3、レッドスライムLv5である。

 ジュンのレベルは9なので、レベル差が6以上あるスライムとイエロースライムは経験値どころかCHSCも稼げない。

 だが、レッドスライムはまだCHSCを稼げるので、ジュンの狙いは必然的にレッドスライムになる。


 冊子には地図が描かれ、レッドスライムの多い場所の記載もあった。

 スライムは動きが遅いので、戦うのが面倒なら横を走り抜けることができる。イエロースライムも同じように動きは遅いが、道に粘着液を撒いて冒険者の移動速度を落とす手段を使ってくる。ちょっとネバネバする程度で、力任せに抜けることは可能だ。


 レッドスライムはちょっと厄介で、酸弾を飛ばしてくる。ただし、酸弾の射程距離は精々2メートルなので、そこまで脅威ではない。

 スライムの素材は魔石だけで、換金しても大した金額にはならない。そもそもGランクダンジョンは、すぐに踏破できるものなのだ。

 ほとんどの冒険者はすぐにGランクダンジョンを踏破して、Fランクダンジョンへ行ってしまうので問題ない。


 さっそくGランクダンジョンに向かうことにしたジュンは、ベンチから立ち上がった。

 その前に現れた人族と馬獣人の2人の冒険者。

「君、新人?」

 人族のほうが声をかけてきた。


「はい。さきほど登録しました」

「俺たちのクランに入らないか? 新人からしっかりと育てるクランだぜ」

 馬獣人が誘ったクランというのは、冒険者が集まった組織である。

 ギルドと似ているため、その存在意義を疑問視する声もあるが、大きいクランでは100名以上の冒険者が所属していることもある。


「あ、あの……」

 クランのことは知っている。ただ、いきなり勧誘されて、ジュンは困惑した。

 それに、ジュンは一般的な冒険者たちとは狩りの方法が違う。そのため、クランに入っても迷惑をかけてしまうと思っているので、どうやって断ろうかと考え込んでしまった。


「最初は体験入団すればいいから。さあ、一緒に行こうか」

「え、あ、あの―――」

 ジュンの返事を聞かないうちに、2人はジュンの腕を掴んで連れて行こうとする。こういう強引な勧誘もあると聞いていたが、まさか初日からその勧誘に遭遇するとは思ってもいなかった。

 どうしようかと困惑しているジュンの腕を引く2人。


「おいおい。ジュンをどこに連れて行くつもりだ」

 現れたのはルッツだった。

「あ、ルッツさん!」

 昨日は帰ってきたのが遅かったので、モーリスの護衛依頼の完了報告にやってきたところだ。

 そのタイミングでジュンを無理やり連れて行こうとする場面に出くわしたルッツは、持ち前の面倒見の良さによってお節介を焼くことにした。


「ちっ、ルッツには関係ないだろ」

 2人はルッツのことを知っている口ぶりだ。

「そいつは俺の知り合いだ。無理やり勧誘するってんなら、俺にも考えがあるぜ」

「ちっ、わーったよ」

 2人はジュンの腕を離し、そそくさと居なくなる。


「おい、ジュン。ルディオのオッサンや、ゲッツのオッサンに言われただろ。冒険者を信用するなってな」

「あ、はい……」

「あいつらのクランは新人を食いつぶすので有名だ。絶対に入るなよ」

「はい。分かりました。危ないところを助けていただき、ありがとうございます」

 深々と頭を下げて感謝するジュンの頭に、ルッツが拳骨を軽く落とした。

「簡単に頭を下げるな。その隙に切られてしまうかもしれないぞ」

「す、すみません」

 また頭を下げようとして、慌てて思いとどまった。


「きっぱりと断れなければ、俺の名前を出して良いからな。これでも、それなりに名前は売れているんだ。それでも勧誘されたら、ルディオのオッサンの名前を出してやれ」

 そう言ってルッツはカウンターへ歩き出した。

 その後ろ姿に深々と頭を下げるジュンだが、これがいけないんだと頭を上げて頬をかいた。


 思わぬ勧誘を受けてひと悶着あったが、ジュンはGランクダンジョンへ向かった。

 Gランクダンジョンの入り口は、冒険者ギルドのすぐ裏にあった。

 基本的にダンジョンの入り口は冒険者ギルドのそばにある。


 Gランクダンジョンの中は洞窟型の通路になっている。

 洞窟の中なのに光があって視界が確保されているのが不思議だと、ジュンはキョロキョロした。

「よし、行くぞ!」

 気合を入れて、足を踏み出す。


 スライムが現れたが、その横を走り抜ける。

 このスライムから魔石が得られる。ジュンの目的は魔石集めではないので無視する。

 地図を確認しながら、ダンジョンの奥へと向かう。

 スライムとイエロースライムは無視する。どうしても通り抜けるのが難しい場合は、エアカッターで倒す。イエロースライム程度なら、エアカッター1発で簡単に倒せた。

 シャル婆さんにもらった鉈を装備しているが、ジュンの戦い方は魔法戦である。


 レッドスライムの現れるエリアに入った。

 レッドスライムは魔物だから、人間が近くに居ると襲って来る。その習性を利用して、レッドスライムを引き連れて歩く。

 走るとレッドスライムは追いつけないため、ちょっと速足にするだけでレッドスライムを引き連れて歩くことは可能だ。


 ジュンの目的はレベル上げではなく、CHSCを稼ぐこと。1体1体を倒していては、CHSCは稼げない。

 どうしても複数の魔物を一定時間内に倒さなければいけない。そのため、分散しているレッドスライムを集めなければならないのだ。


 2匹、3匹とレッドスライムが増えていく。その中にイエロースライムが混ざってもそのまま増やしていく。

「スライムって、プヨプヨ歩く姿が愛らしいから、倒すのが忍びないよね……」

 ビックモスキートはあれほど容赦なく討伐したのだが、動きが愛らしいスライムだと可哀想に思えてしまう。


「いやいや、魔物は僕を殺そうとしてくるんだから、情けは無用!」

 Gランクダンジョン内には、ほとんど冒険者はいない。お金にならないスライム系討伐は、人気がないのだ。

 平均すれば1日に3人以上、年間で1000人程の新規登録者がいる冒険者だが、今日はジュンだけのようだ。


 時々地図を見ながら、レッドスライムを引き連れて奥へ進む。

 細い通路もあるが、広いフロアもある。そんなGランクダンジョンの中を進み、かなり広いフロアに出た。

 そのフロアには、レッドスライムが大量にいた。

「この冊子の情報に間違いはなかったんだ。よかったー!」

 広く大きな空間に、大量のレッドスライムが蠢いている。

 低レベルのレッドスライムでもこれだけ居たら危機感を持つはずだが、ジュンの顔は緩んでいた。


「よーっし、やるぞー! サンダー」

 レッドスライムがジュンの後に縦列で並んでいる。その光景を嬉々として見ながら、サンダーを発動させた。

 8秒後、轟音と閃光が発せられ、レッドスライムたちを一瞬で殲滅した。

 スライムのジェルは一瞬で蒸発した。魔石もジュンに近かった個体のものは、消滅してしまった。

 レッドスライム相手だと、雷魔法・サンダーはオーバーキルだった。


「魔石が残らないと、やっぱり寂しいものがあるね」

 魔石が目的ではないが、ないと寂しい。それに、安いと言っても、数を揃えればそれなりの金額になるのだ。


 CHSCが61ポイント増えている。そこから導かれる討伐数は、31体になる。

 イエロースライムが2体混じっていたが、レベル差が6以上あるためカウントされていないはずである。

「キングスライムのインパクトが強すぎて、61ポイントがショボく感じてしまう……」

 そんな考えはダメだと頭を振り、頬を叩く。こういったことが、欲に繋がる。

 欲を出せば、身を亡ぼす。シャル婆さんやモーリス、それにルディオたちから散々言われたことだ。

「61ポイントでもビックモスキートに比べれば多いんだ。2000ポイントは魅力だけど、今は地道にCHSCを稼ごう」

 この後、地図を頼りにボス部屋に向かった。


 ダンジョンの中の魔物は、ほぼ同じ場所に再配置(リポップ)する。ただし、リポップするまでに2時間が必要だと冊子には書いてある。

 レッドスライムはほぼ同じタイミングで一掃した。リポップのタイミングは同時になるが、それは2時間後である。

 一度ダンジョンの外に出て、休憩してから入っても遅くはない。


 

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