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011_冒険者登録

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 011_冒険者登録

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 ダンジョン都市の正しい町名は、エルドナールと言う。だが、誰もエルドナールと言う者は居ない。

 逆にエルドナールと言われても、それがダンジョン都市のことだと分かる者は少ないのだ。

 しかも、エルドナールに住んでいる者でさえ、エルドナールという名を知らぬほどである。


 ダンジョン都市の人口は約30万人。これは、戸籍を持っている者の数であり、冒険者のような職業の者、そして貧民と言われるようなスラムに住む者たちの数は含んでいない。

 その両者を入れれば、その人口は数万人増えるだろう。それだけスラムの規模も大きいということである。


 雨の影響で予定よりも数日遅れてダンジョン都市に入ったジュン。

 その日はモーリスの屋敷に泊めてもらい、翌朝に冒険者ギルドに向かうことになった。

「大変お世話になりました」

 モーリスに深々と頭をさげ、礼を言う。

「いえいえ。私は2カ月に1回はシャルマーネ様のお宅を訪問しますので、手紙などがあれば届けますよ」

「いいのですか?」

「ええ。その代わり、しっかりと代金をいただきますけどね」

 モーリスはそう言ってパチクリとウインクする。

「しっかりと稼ぐように心がけます」

「はい。しっかりと稼いでください」

 モーリスは柔和な笑みで、ジュンを送り出す。


「自分以外は敵だ。忘れるなよ」

「はい。ルディオさんにもお世話になりました。ゲッツさんたちにもよろしく言っておいてもらえますか」

「おう、言っておいてやるぜ」

 ルディオがジュンの背中を叩いて、別れを告げる。

 ジュンは何度もモーリスとルディオたちに頭を下げ、振り返っては手を振った。


 ダンジョン都市は多くの人で賑わう大都市である。ジュンが住んでいた村では考えられないほどの人出がある。

 ルディオに聞いたように、大通りに出たらさらに多くの人が居てジュンは目を丸くした。

 昨日は夕方を過ぎた時間にダンジョン都市に到着したから、これほどの人出はなかった。それでも人が多いと感じていたジュンだが、今朝は目を剥くほどの人出だ。


「凄い人出だなー」

 完全におのぼりさんのジュンが、誰かにぶつかりそうになったのは1回や2回ではない。

「ここが冒険者ギルドかー……」

 モーリスの屋敷も大きかったが、冒険者ギルドも大きい。

 冒険者と思われる武装した人たちが多く出入りしている。

 これから自分も冒険者として彼らの仲間入りするのだと思ったが、ルディオの言葉を思い出す。


 ―――冒険者を信用するな。

 ―――周囲は全員敵だ。


 大げさかもしれないが、それほど気をつけろという意味である。


「ふー。よし、行くぞ」

 気合を入れて冒険者ギルドの建物に入って行き、中を見渡す。受付をみつけたジュンは、そちらへ歩いていく。

 新人登録と表示があるカウンターには、獅子獣人の男性が座っていた。カウンターの椅子が可哀想になるくらいの大柄で、迫力のある職員だ。


「おはようございます。新人登録をしたいのですが」

 獅子獣人はギロリとジュンを一瞥して、手を差し出してきた。

「登録料は銀貨1枚だ」

 言われたように銀貨をその大きな手の平の上に置く。握ったら銀貨が変形しそうなゴツイ手だ。


「その紙に必要事項を記入しろ」

 職員はカウンターの上に紙を置いた。名前とジョブの記載欄しかない。

 ジュンは用紙に記入し、職員に渡した。

「賞罰を確認する。ステータスボードを見えるようにしろ」

「はい」

 ステータスボードを他人に見せる時は、見せたくない部分を隠すことができる。だが、賞罰欄だけは秘匿できないようになっている。


「賞罰に問題はないことを確認した。少し待て」

 職員のぶっきらぼうな対応に、気を悪くすることなくジュンは素直に待った。

 シャル婆さんの家を出てステータスを確認していなかったジュンは、丁度表示されているステータスを確認する。



 ●ステータス

【ジョブ】効率厨(アフィセンレーター)

【レベル】9

【経験値】130/300

【生命力】40/40

【魔力】125/125

【腕力】9

【体力】18

【知力】65

【抵抗】60

【器用】47

【俊敏】22

【スキル】チェーンスコア

【感覚スキル】聴覚強化Lv1

【下級魔法】エアカッター

【中級魔法】トルネド サンダー

【CHSC】1360

【身分】流れ者

【賞罰】



「え?」

 レベルが上がったのはキングスライムを倒した戦いに参加したからだ。これは簡単に予想が点いた。しかし、CHSCが思っていた数字ではなかった。

 思わず声が出たジュンに、怪訝な視線を向ける職員。

「なんだ?」

「あ、いえ、なんでもありません」

 CHSCがここまで増えているのは、異常なのだろうか? しかも1000以上も増えている。

 なんの冗談かと、ジュンは二度見した。


 そこで思い出したのが、キングスライムの成り立ちである。

 キングスライムは1000体のスライムが合体した姿だと本に書いてあった。

 本を信じるなら、キングスライムを倒すことで最低でも1000体のスライムを倒したことになるのだ。

 つまり、チェーンが発生する。だが、1000体のスライムを倒したにしては、CHSCの数字がおかしい。

 チェーンの補正値は、その討伐数から端数を切り落としたものになるはず。その考えだと、キングスライムを倒してもらったCHSCは2000ポイントになるはずだ。


 CHSCの残数を思い出して計算すると、今回得たCHSCは1100ポイントだと分かる。

 1000ポイントは1000体分のCHSC、残りの100が補正値のはずだ。

 考えられることは、チェーンの補正値は100以上にならないということ。1万体倒したとしても、補正値は100止まり。それなら、今回の数値に納得ができる。


「待たせたな。これが冒険者の身分証だ」

 職員からもらった身分証は、金属製のプレートだった。手の平に収まるくらいのもので、冒険者ギルドの紋章と名前、他に冒険者ランク(Gランク)が表示されている。


「その身分証に血を垂らしてみろ」

 職員に促されたジュンは、鉈の刃で指を少し切り血を垂らした。

「それでその身分証は、お前にしか使えなくなった」

「身分証を使うのですか?」

「なんだ、知らないのか。なら、教えておく。冒険者が稼いだ金は、冒険者個人の口座に振り込まれる。冒険者ギルドでは銅貨1枚も扱わない。もし金を下ろしたければ、ギルドを出たところに商業ギルドがあるから、そこで下ろせ」

 冒険者ギルドは現金を一切扱わない。金銭のやりとりは、全て口座への振り込みや引き落としで行われる。


「身分証の裏を見てみろ」

 言われたように裏側を見てみる。

「お前が念じるだけで、そこに預かり金の残高が現れる。表示は1分したら自然に消えるが、念じれば消すこともできる」

「便利なものですね」

「それは魔道具だ。失くしたら再発行に金貨1枚かかるからな」

 金貨1枚は大金である。絶対に失くさないように、アイテムボックスにしまっておこうと思うジュンであった。


「このダンジョン都市内でなら、露店でもその身分証を使って買い物の支払いができる」

「そんなこともできるのですか? 本当に便利なんですね」

「現金はかさばるから、こういった機能ができたんだ」

「なるほど」

 銅貨1枚は大した重さではないが、それが100枚、1000枚となれば話は違う。

 額がふえたら金貨や大金貨にすればいいだろうが、そういった高額硬貨は簡単に使えない。


 ジュンが住んでいたトール村では、銅貨、大銅貨、銀貨くらいしか使われていなかった。大銀貨はともかく、金貨になるとお釣りを出せないと断られるのだ。

 おつりのやりとりも、これならなくなる。とても便利な機能だと思った。


「あと、お前は登録したばかりだから、Gランク冒険者だ。このダンジョン都市では、5人未満で踏破したダンジョンの格で冒険者ランクが決まる。だから、お前が5人未満でGランクダンジョンを踏破すれば、Fランクに上がれるってことだ」

 Gランク冒険者はGランクダンジョンにしか入れない。

 Fランク冒険者になれば、GランクとFランクのダンジョンに入れる仕組みだ。


「はい、がんばります」

「がんばるのは良いが、死に急ぐなよ」

「ご忠告、感謝します。そうならないように、気をつけます」

 そもそも、ジュンの目的は冒険者ランクを上げることではない。

 CHSCを稼いで能力を上げ、スキルを得ることが目的なので、ダンジョンランクや冒険者ランクは二の次である。


「冒険者はダンジョンに入って魔物を狩り、その魔物の素材を持ち帰ることで生計を立てている。あとはあそこのボードに張り出されている依頼を達成することで、金を稼ぐことができるぞ」

 同じフロアにある大きなボードに、大量の紙が張り出されている。

 その前には多くの冒険者が陣取っていて、依頼の争奪戦が繰り広げられていた。依頼を受けるのは早い者勝ちなので、毎朝このような争奪戦が繰り広げられているのだ。


「それから、これはGランクダンジョンの冊子だ。持っていけ」

「冊子……ですか?」

「地図と魔物の配置が記載されている。これを読んで準備すれば、少なくともGランクダンジョンで死ぬことはないだろう」

「良い物をありがとうございます」

「FランクダンジョンからBランクダンジョンの冊子は、向こうの売店で売っている。冊子を見れば、死ぬ確率は下がるはずだ。参考にしろ」

「はい。そうします」

 職員に礼を言って冊子を受け取った。

 ジュンはギルドのフロア内にあるベンチに座って、冊子を読んだ。こういう素直な性格がジュンの持ち味である。


 

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