【この作品は短編です。本編(連載版)は後書きから飛べます】昔は近寄るなとか言ってきたくせに何故か最近寄ってくる幼馴染がうっとうしい
今回は短編です。楽しんで頂けたら幸いです。
幼馴染……漫画やラノベでは、言わずと知れた主人公の恋人候補の一人だ。俺にも美人&天才とかいうよく分からんスペックのとんでもない幼馴染がいる。だが、現実はそう甘くない。俺が彼女とどうこうなる未来は来ないだろう。何故かって? それはな……
「嫌い。もうこれ以上近寄らないで。」この僅かな、しかし強烈な言葉で、中学一年生の時に彼女との縁は切れた。
今では高校一年生と言う青春真っ只中の時期のはずなのに、「一切関係ない」と言わんばかりの態度をとられている。どうせツンデレかなんかだろ?と思っていたが、今まで一切デレたりしていないことから、その可能性は限りなく低いと判断できた。最低限の連絡事項ですら、周りの友達を通して伝えてくる徹底ぶりだ。
ここまで来ると、もはや笑えてくる。 今、ここで俺は断言する。
──────俺、竹山博幸は、幼馴染の大川涼香に嫌われている!
そして、今日もあっという間に授業は進み、移動教室の前の休憩時間になった。
「ねみぃ〜」
「そうか」
「授業中寝たら起こして〜」
「やだ」
「え〜……意地悪……」
「徹夜でゲームやってるのが悪い」
「でもおかげでいっぱい勝てたぜ〜」
「良かったな。でも起こすかどうかは別だ」
「ぴえん」
「お前男だろ……」
とまぁ、こんな感じのアホみたいな会話をしている相手は、俺の親友の黒岩練太郎だ。廃ゲーマーであり、徹夜は基本。そのせいでクマが常時ある。授業は大抵寝ているので、俺か周りの人間が起こすことになっている。ただ、こいつを起こすには少しコツが必要な為、俺と席が離れている時は完全に寝たままなので、かなりヤバいのだ。しかし何故かテストでは超高得点を取っているので、特別に教師からは黙認されている。何度か勉強を教えて貰おうと思ったのだが、字がとても汚いうえに教え方が異常に下手なので諦めた。
「そういや博幸、お前の幼馴染ってすごい美少女だよな。付き合ったりしてんの?」
「なわけあるかよ……中一の時に『近寄らないで』って言われて以来直接話したことなんざ一度もねーっての」
「ツンデレって可能性も……」
「流石に無いだろ。ラブコメの見すぎだ。」
「なぁなぁ、その事なんだけどさ、俺は本気で大川さん、お前のこと好きだと思うぜ」
「……理由は?」
「……青春の神様の力? 幼馴染はくっつくのが定番だろ」
「お前やっぱアホだな」
「博幸お前テストで俺に負けてんだろ……てか少しは自信持てよ。大川さんさ、うちの学校の中で一番のイケメン、かつサッカー部キャプテンだとかいうあの大山に告られても振ったんだぞ? これはもうお前から告られんの待ってるとしか思えないだろ……」
「流石に無いから安心しやがれ」
このままでは遅れそうなので、そろそろ会話を終わらせて移動教室の準備をする。廊下を歩いていると、曲がり角のところで、珍しく走っていた彼女とぶつかった。
「あ、すいませn……」
謝られると思ったら、なんか謝りもせずにどっか行かれたんだけど……何? 俺に話しかけたら死ぬ病にでもかかってんの?
……ま、いつも通りだし仕方ないか……
──────(涼香の視点)ヤバい……どうしよ……博幸とぶつかっちゃった……また恥ずかしすぎて話しかけられなかったよ……あー、いつも通りカッコよかったなぁ……にしても中一のあの時以来話してないな……なんであんなこと言っちゃったんだろうな……直接顔も見れないし、事務連絡程度の短いことでも、胸がキューってなって上手く話せないの……このままじゃ、絶対に誰かに取られちゃうのに……ねぇ、神様、教えて下さい……私は、博幸と結ばれる運命ですか……?
──────(博幸の視点)あー、忘れてたなぁ……この課題、明日までじゃん……皆は三日かけて頑張って終わらせるんだろうけど……俺は今日だけで終わらせんのか……練太郎のは……字が汚すぎて無理……他クラスの友人は違う教師が担当してるからそもそも内容が違うし……
──────ぇ……
──────ぇ……ょっと……
──────ねぇってば!
!?……考えてて気づかなかった……てか誰?
「アンタ誰?」
「同じクラスの内坂麗奈よ。クラスメイトの顔も覚えてないわけ? 大川さんが用があるって。図書室に行きなさい」
「やだよ……課題終わらせなきゃいけないし……」
「その課題のことについてよ。なんでも『博幸は昔から忘れ物が多かったから、どうせ今回の課題も忘れてる。なんなら私のを見せてあげようかな』って話よ。うーん……でも、アンタ本当に大川さんの幼馴染なの? 全っ然話してないけど……」
「幼馴染が高校になっても仲良くするのなんてごく一部だろ。それに中一の時に『近寄るな』って言われて縁切られたし」
「まぁ、過去に何があったかは知らないけど、今呼ばれてるなら行きなさい。人を待たせるのは悪いことよ」
そう言われてキレ気味に送り出されたのだが、アイツ、今更何をする気だ? ……よし、分かった! きっと、今から優しくして、わざと告らせてこっぴどく振るつもりだろ……そっちの考えてることは何となく分かるぞ……絶対その手には引っかからないからな。
「やっと来たわね」
そこには、とても美しい女性がいた。肩までの短めの髪を下ろしている。大きく開いた目に、整った鼻と唇、傷一つない色白の綺麗な肌……やはり美人だ。
「……『嫌い。もうこれ以上近寄らないで』とか言ってなかったか?」
「あの時のことはもう良いでしょ。それより、アンタ課題終わってるの? どうせ今日思い出して、徹夜でやる気でしょ……『どうしても』って言うんなら写させてあげなくもないわよ?」
「上から目線でムカつくからいいや」
そう言って帰ろうとすると……
「……行かないでよ。あの時のこと、謝るから……!」
「……謝れば済むと思ってんの? あの時、お前のせいで俺はクラスから孤立した。お前に嫌われるようなことをしたとみんなに誤解されて、あっという間にクラスからハブられた。それを謝罪一つで済ませようとするのは違うんじゃないか?」
「っ……じ、じゃあ……アンタの言うことを、"何でも”一つだけ聞いてあげる。それで……チャラにしましょ……」
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で、連載しているので、良かったら見てやって下さい。