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操血の煙  作者: めんめんま
第一章 奪還
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第4話 子供が三人

 お説教後、優しい美女とパンは帰っていった。パンはすっかり大人しくなり、もういたずらはしないと神に誓った。小さな声でこっそり「俺は神なんて信じねえよ」と言ってきたのは内緒だ。


 お説教が終わるのを外でずっと待っていたらしく、中二先輩、ではなくドラゴン先輩はすっかりげっそりした顔で入ってきた。


 「あいつのお説教は長いからな…… あまり怒らせない方が身のためだぞ」


 低くかれた声でそう告げるドラゴン先輩は、ベッドに座り横たわった。そしてシュレをしっしっと退かし、布団に潜り込み始めた。


 「第三会議室にいけ。俺は寝る。」


 最後にそういい残したっきり、先輩は目を開けなくなった。


 「先輩? 起きてくださーい先輩」


 何度頬を叩いても起きないのでシュレは仕方なく一人で行くことにした。昨日たっぷりと絞られたお姉さんがいたので、ご機嫌を取って第三会議室の場所を教えてもらった。第三会議室に入ると、そこには見覚えのある顔と知らない顔の少女が一人ずついた。二人は呑気に口喧嘩をしながらお菓子を食べている。


 「俺のパンチ力の方が強いね」

 「何言ってるの? 私のキック力の方が強いに決まってるじゃない。」

 「足の方が力が出しやすいんだからハンデなんだよ。セコ馬鹿力女!」

 「は? あんたこの前腕の骨バラバラに折れてたじゃない」

 「お前だって足の血管ぐちゃぐちゃになって全治八ヶ月だったろ!」


 お菓子をバクバク食べながら、何とも鳥肌のたつ話をしている。なぜ吐かないのかが不思議だ。男の子の方は昨日のパンだった。少女は直ぐにこちらに近づき大声を上げた。


 「ちょっと何隠れてるのよ! 蹴り倒すわよ!」

 「ちょちょっと待て、決して怪しいものじゃ……」

 「問答無用ーー!」


 パンに助けを求めようとしたが遅かった。視界に飛び込んできた足は顔面に近付いてくる。


 (パン、今まで楽しかったよ。この子と幸せにな。)


 本当はシスターやアルナ達の事を考える場面にも関わらず、シュレは混乱でなぜかパンの事を思い出していた。走馬灯が見え掛けたとき、目の前にフランスパンが見えた。フランスパンは少女の蹴りを食い止め、そのまま地面に落ちた。


 「パ、パン! な、何で……」

 「あ、なんだ。フランスパンじゃなくてただのパンだったか。」


 シュレを助けたのはパンだった。咄嗟にシュレの前に立ちふさがり、顔で蹴りを受け止めて守ったのだった。しかしパンが受けたダメージは相当なものみたいだ。まるで死にそうな程苦しんでいる。


 「パン! しっかりして!」


 少女は涙目になりパンに呼び掛けている。パンの鼻からは血が出て、軈て少しも動かなくなった。


 「俺、もう駄目みたいだ。 サピ、今まで……ありが……とう……」

 「パン! パンが居なかったら、私、私、」


 その時、シュレは見てしまった。パンの右手にあるものを。起動している音声レコーダーを。サピと呼ばれた少女は、パンのお腹にうつ伏せになり、わんわん泣き叫んだ。結構空気が読めるシュレはまた空気を読んだ。


 「サピさん……ごめん」

 「あんたのせいよ! 隠れてみてるなんて、蹴り飛ばそうとするに決まってるじゃない!」


 蹴り飛ばそうとする人間なんて君くらいだよとは言える雰囲気でもなく、シュレはただただ二人の様子を見守っていた。しかし泣き叫ぶ声は一方に止まず、大きくなっていくばかりだ。シュレはとうとう我慢で限界で、


 「パン、もうやめてあげたら……」

 

 サピはその言葉を聞き逃さずにギラッと鋭い目付きでシュレを睨んだ。パンのギクッという声が聞こえてきそうだ。


 「ねえ二人とも、どういうこと?」


 サピの目は真っ黒に染まり、目で誰かを殺せそうなほどだ。レコーダーを止める音が部屋中にカチッと響き、彼女はその音も聞き逃さなかった。


 「さあて、どうしよっかなあ!」

 「まずい、逃げろ!」


 パンがそう叫んだときにはもう遅かった。あっという間に二人の手と足にはがっちりと手錠がはめられ、気が付くと身動き一つ取れなくなっていた。


 「さあて二人とも、サピのいびりタイムだよー」


 その目は何を考えているのか禍々しく、この世の禍々しさを全て混ぜ合わせた禍々しい物だった。どんなことをされたかを言うには、地球の言葉では表せない。一つだけ言えることがある。凄く良かった。

 

 シュレ、パンは拷問のお陰でくたびれ果てていた。段々と眠気に誘われ、そのまま意識は夢の中に行ってしまった。サピはと言うと、彼女もまたお菓子の食べ過ぎだろうか眠気が一気に襲い眠ってしまった。


 事が起きたのは三人が夢の中にいるときだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 「敵国の襲来だ! 直ちに軍隊は集合せよ!」


 この軍隊が戦うのは煙だけではない。この大陸にはレビオン国と他の三つの国がある。今回、対立する隣国のレベオニア国が、サスベガの煙襲来の事を経て、情報を得るために乗り込んできた。


 現在、煙襲来の被害を受けた国は未だサスベガとレビオンの二国だけだ。今後起こり得る襲来を前に、情報を求めるレベオニアとの戦争が勃発した。


 「諸君ら。情報提供を求めて、レベオニア国が我らの国に進行してきた。国民の安全と情報死守を第一、二に考え、不惜身命を胸に戦い抜け! 解散!」


 総司令官の演説が終わると軍隊は班ごとに分かれ始めた。この軍隊は少し特殊だ。戦いの際は班で行動することになっている。


 「おい、あいつらはどうした! 集合の合図が聞こえなかったのか! 全く!」

 「あ、俺が呼んできますよ。第三会議室ですね」


 この場にいない三人にドラゴン先輩は怒りで顔を真っ赤に染めていた。


 「俺達は先に行ってるからな」


  

 

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