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初恋なんて気持ち悪い

作者: TOKI

俺は神田というごく普通の、ありふれた人間だ。漫画やアニメでいえば写ってはいるが背景の一部と化している、恋愛事など以ての外、いわゆるモブであった。そして春、そんな俺は高校生になった。


高校で送る青春こそは華やかなものにしてみせる!中学の時のようなつまらないもんにしてたまるか。フフ、可愛い彼女作ったりして青春を謳歌してやるぜ。目指せ!脱、モブ!


―――――どうしたものか。

「ねーねー、連絡先こーかんしよーぜ!」

「おーしようしよう。あ、そうだ。クラスのグループ作っとこか」

「あーそうだな」


完っ全に出遅れた。まずいまずいまずい!ここであのイケイケな奴らの輪に入ってないと…また……またモブに………

だが…だがな、あいつらはなんでそんなに仲良くなってんの?あなたたち初対面ですよね?


周りを見渡せば俺と同じくその場に佇んでいる奴らも意外といる。


「――――じゃあ、照本がこの『telly』ってアカの人か」

「おう、その通りだ。」

「照本だからテリーって、まんまだな!アハハハハハ」


クソ、盛り上がってるな。アカってことはSNSであらかじめ連絡をとっていたってことか。最近携帯を買ったばかりでそっちの方まで考えてなかった、不覚。陽の者は名前までキラキラしてるんですか、そうですか。あぁ、高校生活は煌びやかなものになるって期待していたんだけどなぁ。これじゃあもう――

「おーい!神田!」


「ひゃい!」

「…ひゃ?」

「え…と、なんすか?」

「連絡先。交換しよーぜ!」

「は…はぁ…」

「俺は照本だ、1年間よろしくなー。」

「うん、よろしく」


照本、いい人だ。チャラチャラした感じだが。俺、笑顔で話せてた?凄いぎこちない話し方になってた気がするんだけど。と、とりあえずこれで連絡先ゲット!やったね!――――何故だろう、素直に喜べない―――――


「おーす!小出…紗枝さん?俺、照本って言うんだけど――――」


その日は自己紹介やらオリエンテーションやらで学校は終わり。放課後である。気がつけばカーストトップになるであろう者たちは揃って遊びにでも行ったのか、教室にはいなかった。結局、中学の時と同じようなけっかになっちまったなぁ。はぁ、帰るか――――


――――そうして、背景に紛れて高校生活を送り、はや数ヶ月。

教室にて――――


何故だ、何故なんだ?


「なぁなぁ、神田は好きな人とかいねーの?」


何故、照本(コイツ)がいる!?

いや、居るのは悪いことじゃないが。入学してから数ヶ月、普通に過ごしていただけなんだけどなぁ。最初の頃は明らかに陽キャまっしぐらの奴だったのに。まぁ少しは懐かれてる理由に考えついていることはあるんだが。


「なーおい、聞いてんのー?」


コイツは、本来こちら側(モブ)なのではないか、と。入学当初は陽キャさながらだったが、共に過ごしてきて分かったことがあった。コイツは成績は普通、運動は俺よりは良いがまだ普通、そして顔も普通。いかにも、モブらしい。潜在的に仲間意識を持たれているのか?しかし、どんな詐欺でもやったのか彼女がいるらしい。モブを脱するということは努力でどうにかなるものでは無いと思う。


「照本、俺は恋バナを振っておいて、自分には彼女がいるからって惚気けるやつが嫌いだ。リア充はさっさと帰れ」

「小出さんとかどーよ。結構話してるじゃん」

「聞いちゃいねぇな」


小出紗枝。

俺の後ろの席の顔は整ってる方だが、突出した美人ではなく、成績も良いのだがトップレベルではない、しかし性格がかなり陽キャのものでカースト上位者である。高嶺ってほどでは無いが中嶺の花ってくらいの女子だ。たまに裏では何かあると聞く時もあるが…まぁそんなことないだろう、そんなふうに思えない。


「いやぁ、小出さんはなぁ。世間話するくらいには仲はいいけどよ…」

「お前なぁ、彼女欲しくないの?」

「よし殴られたいようだな」

「でもよ、そんなんじゃ彼女なんて夢のまた夢だぜ」


ぐっ…こいつ、彼女がいるからって偉そうに。


「小出さんいいと思うけどねぇ。スタイルもいいし。好かれてたりして…」

「はいはい、言ってろ。いや、最後のほうは言わんでいい」


――翌朝。いつもより早く目が覚めた。


うぅ、昨日あんな話したからか?小出さんの変な夢見ちまった。


いつもより早めに学校に行き、ゲームでもして朝のホームルームを待っていると、小出さんが教室に来た。一瞬目があったが変な夢のせいで決まりが悪く、目を逸らしてしまった。ギリギリの時間に何人かが必死の形相で教室に駆け込んでくる。


うーん、変に意識しちまうな。昨日の話といい夢といい少し気まずい。普通に話せないかな。


少し考えはじめようとした時、背中をつつかれた。振り返ってみると小出さんが内緒話をするように白く綺麗な手を口元に当てていた。


「ねぇ、一限目ってなんだっけ?」


どうしてか、小出さんの口元から意識が離せなかった。


「ねぇってば」

「えっ、あぁ確か数学だよ」

「ん、ありがと」


前を向き直し、改めて考えようとしたが。


小出さんってあんなに可愛かったっけ?だめだ。一回意識しちゃったら、なんか、だめだ。いつもより可愛く見える。普通に話すとかそれどころじゃないぞ、まず話せるか?


「起立、礼」


ガタガタと椅子を動かす音で授業があること思い出した。慌てて起立する。


落ち着こう。とりあえず授業を受けなければ―――――



全ての授業を終え、放課後になった。


ハァ、全然集中できなかった…。だいたいちょっと恋バナに出てきたからってそんなに意識することないだろ。全く、我ながら単純すぎるだろ。だが、誤解しないで欲しい。自分のこと好きなのかも、と思ったら気になってしまうのが男という生き物なのです。特に女性経験もない俺なんて特にね。


「なー神田ー」


やかましいのが近づいてきたし帰るか。


帰宅後、俺は夕飯を食べ風呂も済ませ、あとは寝るだけとなり、ベットに横たわりぼーっとしていた。やはり頭からあのことが離れない。風呂上がりのせいか、顔が熱く感じる。


«好かれてたりして…»


〜〜ッ、いやっ、ないないない。俺は所詮モブだからな。好かれてるわけねぇや、アハハ……………なんか、虚しい…………


RiRiRi〜♪


ん、電話?誰だ?


携帯の画面を見るとついしかめっ面になってしまった。照本(アイツ)だよ。なんか用だろうか。


『なんか用か?』

『いや暇だったからかけた』

『切るぞ』

『待て待て!話しようぜ?な?暇なんだよ』

『ハァ、何について?』

『恋バナ』


こいつ俺が言ったこと忘れてんのか?惚気ようったってそうはいかんぞ。


『嫌だね』

『そんなこと言うなって。お前に聞きたいことがあんだよ』

『あ?なんだよ』

『お前って小出さんのこと好きなの?』

『は、はぁ?んなわけ』

『そうかそうか、アッハッハ!それでそれで?どうゆ――』


俺は無言で電話を切り、ついでに通知も切り、変な気分のまま眠りについた。


二週間ほど経ち、文化祭が近づいてきた。準備などで生徒会の人らが忙しそうにしているのを見掛けることが増えてきた。俺のクラスも喫茶店もどきの準備が進んでいる。俺も準備に勤しんでいると、照本の話し声が様々な物音の中から聞こえた。


「――まじかよ―――が?――」

「まじだって――でがね―――」


顔を向けてみると、彼らの視線がチラチラと小出さんに向かっていた。気になったので照本に近づき話しかけた。


「何の話してんだ?」

「う?あぁ神田か。いやちょっとな」

「小出さんがどうかしたのか?」

「えっ、聞こえてた?」

「あれだけチラ見してたら気づくわ」

「あぁ…そっかぁ」


なんだ、妙に気まずそうに話すな。こいつらしくもない。問い詰めてみるか。


「んで、何話してたんだ?」

「あーいや知らん方がいいんかなーって」

「は?」

「知らぬが仏ってね」

「余計気になるじゃん。言えって」

「ぐぬ、そ…そのうちな、じゃあな!」


逃げやがった。なんか、こうモヤモヤするな。ヤな感じがする。まぁそのうち聞けばいいか。


文化祭当日。俺のクラスの集客はそれなりに多かった。少しうるさいと思うくらい賑わっていた。準備したかいがあったというもんだ。俺は経営側を普通に楽しみ、他クラスの企画を回ったり普通に楽しんだ。


―――楽しかった文化祭を終え、クラスメイトもぼちぼち帰り始めた。教室は数人しか残っておらず、昼間の喧騒が嘘のようだった。


「楽しかったね、神田」

「そうだなぁ」


俺は小出さんと文化祭の感想を言い合っていた。夕暮れ時で人が少なく静かな教室、何かいい雰囲気である。


「そろそろ私も帰るかな」

「じゃ俺も」


二人で一緒に帰り始めた。俺は冷静を保っているが――


何この雰囲気!?すげぇいい感じだ。なんなのこれ!?


―――動揺しまくっていた。まぁいい雰囲気だからといって特に何も無く、さっきの話の続きや普段の生活の話なんかをして互いに帰路に着いた。


なんか気分がいいな。うーん、これが恋?分からないな。人に聞くものでもないしなぁ。


RiRiRi〜♪


電話〜?またアイツだろうか、正直アイツの相手はしたくないがまぁ、気分もいいし出てやるか。


『もしもし』

『お、おいーす』

『何か用か?』

『お前それしか言わねぇな。まぁいいけどよ』


何か声がいつもみたいにおちゃらけてる感じがしないな。


『うっせぇ、で、どうかしたか』

『いやこの前話したじゃん、その小出さんのこと』

『あぁ、そういえばそうだわ。早く言えよ』

『んー言うべきなのかな』


やけに引っ張るな。らしくない。余計気になるってもんだ。


『いーから言えって』

『わかった、フゥ』


一瞬の沈黙。その一瞬がとても嫌な雰囲気を醸し出していた。


『小出さんな、その援交…してるらしい』

『は…?』


予想もしてなかった言葉に言葉が詰まった。


『驚いたろ?俺もびっくりした』

『あ…あぁ』

『特にお前は小出さんのこと―――』


気づけば自宅のベットに倒れ込み、ぼーっとしていた。

その後の話の内容はあまり覚えていなかった。


そんなにショックな事だったか?そういうことをしている高校生は結構いるらしいし、他の同級生たちもしてないとは言いきれないし。ショックを受けたのはどうしてだ?照本がなんか言ってた気もするが…なんだったか…あぁ――――


«特にお前は小出さんのこと好きだったしショックだろう»


だったか―――。

俺が確かに辻褄はあうのだろう。だが別に恋をしていると思ったこともなかった。恋をしたことも無いからなんとも言えないが。ハハ…あんまり考えがまとまらないや。あぁそうか、恋なんてしていたのか、分からないもんだな。まぁいい経験になったんじゃないかねぇ。


しっかし初恋ってこんなにも気持ち悪いのか。

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