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パートナー契約? って何?

「サクラ、お誕生日と成人おめでとう!!!」


 家族からのお祝いと乾杯がパーティの始まり。お母さんが焼いてくれた鳥の丸焼きはわたしの大好物。手巻き寿司もサラダも豪華でおいしい。


「ありがとう。それでね、わたし、魅了5だって言われたの」


 なんと報告していいものかよくわからず、こんな言い方になってしまう。


 お母さんは、アラと言い、ツバキおねえちゃんはスパークリングワインをぐびりと飲み、お父さんは難しい顔になる。なんでだろう。誰も驚いてないみたい。


「あのう、もしかして、みんな知ってたの?」


 恐る恐る訊ねるわたしに、各々が頷く。


「あたしはジンくんから聞いた」


 とツバキおねえちゃん。


「私はショコラさんから聞いたわ」


 とお母さん。


「父さんはシルバから」


 とお父さん。ちなみにショコラさんというのはジンのお母さん、シルバさんはジンのお父さんだ。


「ちょっと待って! なんでわたしだけ知らなかったの?」


「ジンくんから話すって聞いたから」


 またまた三人揃って答えてくれる。わたし、聞いたの今日なんですけど……。


 思いきり納得がいかない。


「それで……魔法学園に通うために明日からジンのところで能力をコントロールする練習するから」


 わたしがそう言うと、ちらし寿司を箸でつまんで食べているツバキおねえちゃんが、めんどくさそうに口を開いた。


「えーっ、そんなのパートナー契約しちゃえば済む話じゃない?」


「パートナー契約? って、何?」


「はい出た、あのヘタレくん、何もサクラに言ってないのね」


「ツバキ……本当のことを言っちゃダメよ……」


 やれやれと言った風情のツバキおねえちゃんをお母さんが困ったようにたしなめる。お父さんは逆にニコニコしながら、「まあまあ」なんて言っているけど……。


「えー、何? 話が見えないよ」


「教えてあげてツバキ」


 お母さんに頼まれて、ツバキおねえちゃんが仕方なさそうに立ち上がった。


「サクラの部屋行くわよ」


「何で?」


「ここで話してもいいけど、文句言わない?」


 そんな風に言われたら、従うしかない。


 ツバキおねえちゃんと一緒に自分の部屋に行くと、ツバキおねえちゃんはわたしのベットに腰かけ足を組んだ。


「それで、どういうこと? ツバキおねえちゃん」


「その前にさ、サクラはジンくんからどんな話をされたのよ」


「それ必要?」


「必要よ」


 ツバキおねえちゃんにキッパリ言われて、仕方なく話す。


「わたしの魅了の力に6歳の時に気づいて、研究した結果この眼鏡を発明したこととか……、過去の魅了持ちが王族や貴族を魅了して拷問されて死んでるから、学園に通うなら能力をコントロールできるようになったほうがいいって」


「フムフム、まああたしがジンくんから聞いた話と一致するわね。それで、パートナーについては聞いてないんだ?」


「聞いてない……」


 ツバキおねえちゃんはジンから聞いたんだ……。ジンは今日までわたしに何も言わなかったのに。


 ツバキおねえちゃんは肩をすくめると流し目をくれながら、


「ふうん……。まあ、いいか、魅了持ちはね、パートナーと契約することによって、無作為に魅了できなくなるのよ。いまのサクラは無造作にフェロモンを撒き散らしている状態で、眼鏡をすることで抑えてる。だけど、そのフェロモンには波があるから、強い波が来ると眼鏡の力では防げなくなるの。フェロモンって言うのは例えで、実際は逆らいがたい魔力ね」


「魅了にかかった相手ってどうなるの?」


「サクラの思い通りに動くようになるみたいよ」


「でも、今日のドロシーはわたしと目が合ったときに様子が変だったの」


 わたしはドロシーの様子を思い出しながら、話す。今日のドロシーちょっと怖かったな。


「それはサクラが力を使いこなせてないから。強力なサクラのフェロモンに当てられて、フェロモン酔いでも起こしたんじゃないの?」


「それって治るもの?」


「サクラから離れて暫くすれば治るんじゃない? 暫くは……ドロシーから熱い目で見られるかもしれないけど」


「うわぁ……」


「まあ、魅了されたのが女の子でよかったじゃない? 変なオヤジとか好きじゃない男から、そんな目で見られてごらんなさいよ、最低だから」


「うん……」


 モテモテのツバキおねえちゃんだからこその説得力。


「それで、パートナー契約って何? どうするの?」


「セックス」


「…………ゴホッ」


 噎せたわたしに構うことなく、ツバキおねえちゃんが続ける。


「あ、ただのセックスじゃないんだった。愛のあるセックスだっけ」


「ちょ、やめてよ! ツバキおねえちゃん! 連呼しないで!」


「じゃあ何て言えばいいわけ?」


「え……エッチ?とか」


「ふっ、子どもなんだから」


 思いきり馬鹿にされたよ……。ふたつしか違わないんだけど……。


「あのツバキおねえちゃんはもう経験済みなんでしょうか?」


 思わず丁寧に聞いてしまうわたし。


「なーに? 知りたいの? 高いわよ~」


 にやにやされたのでお断りする。ツバキおねえちゃんは、ジンくんにつけとくって言って本当にジンに請求しちゃう人だし。ジンは発明関連でひと財産を築いているらしく、ツバキおねえちゃんに目をつけられているのだ。


「ジンくん誘う方法教えてあげよっか」


「いらない! 必要ないから!」


「契約しないの?」


「……しない。力をコントロールできるようになればいいんだもん」


「素直じゃないわねえ」


「……ジンは、ほかに好きな人がいるんじゃない」


 なるべく平然を装って言う。


 自分の爪をしげしげと眺めていたツバキおねえちゃんが目をパチクリさせた。


「やだ、あんたそれ本気?」


「な、なんで? だって……」


「6歳のガキンチョが誰のために、天才になったのかよく考えたら?」


「ツバキおねえちゃんこそ、ジンのこと、おサイフの付随品みたいに考えるのやめてよ! ジンは天才だけど、何も苦労してないわけじゃないんだから! ツバキおねえちゃんがそんな風だったらジンが可哀想でしょ!」」


「何でジンくんが可哀想なのよ」


「ジンはツバキおねえちゃんが好きなのに!」


 ツバキおねえちゃんは目をまん丸に見開くと口を押さえて、大げさによろけた。


 わたしは肩を怒らせたまま、ツバキおねえちゃんを睨む。


 よろよろとベッドに突っ伏したツバキおねえちゃんは、震え出す。さすがのツバキおねえちゃんも、あまりの自分の人でなしっぷりに涙しているのだ。……そう思っていた時もあった。


「……アッハハハハ! ひーウケるーやだもー苦しい!」


 ツバキおねえちゃんはお腹を抱えて笑っていた。信じられない……。怒りに震えながら、いまだに笑いつづけるツバキおねえちゃんに向かって怒鳴った。


「ツバキおねえちゃんの……バカァ!!!」


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