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ジンとわたし



 わたしの名前はサクラ。マール半島の最南端シノノメに暮らすもうすぐ成人の十四歳です。


 いまは幼馴染のジンとおつかいの途中、なんだけど。


「おいでよ。キャンディーをあげるから」


「いらない」


「じゃあ道を案内して? 路地裏はどこにあるの?」


「おじさんさあ……いい加減にしなよ。警邏を呼ぶよ」


 ジンは男の子だけど、とっても綺麗な顔をしてるから、時々こうして知らない人に話しかけられる。こういうとき、わたしは口を利くなっていわれてるから黙ってるけど、そろそろわたしが走って大人を呼んできたほうがいいんじゃないかなあ。


 無意識にジンと繋いでた手をにぎにぎするとジンがチラリとこっちを見た。内緒話のごとく耳に口を寄せる。


(わたし大人を呼んでくるよ?)


(余計なことしなくていい)


 ジンが綺麗な顔をゆがめて冷たく言う。そ、そんな顔して言っても怖くないから!


「ほら、お嬢ちゃんも……なんでも好きなものを買ってあげるよ」


 ジンが相手にしないからこっちに矛先が飛んできた。ジンが怖い顔で舌打ちをした瞬間、ジンの服からたくさんの何かが飛び出しておじさんめがけて襲いかかる。


「なっ!? は、ハチ!?」


「俺がつくった試作品の軍隊バチだよ。攻撃性が高く、ターゲットを認識してどこまでも執念深く追撃する。毒の種類は好きなものを仕込めるから、暗殺用途にもおススメ」


「毒だとっ!? おい、やめっ! やめさせろ! 今すぐだ! 痛い! 刺された!!!!! やめてくれー!!」


「毒消しは警邏に渡してあるから、もらってくれば? しっかりと話は聞かれるだろうけどね」


 ニヤリと意地悪く笑うジン。軍隊バチに刺されるたびに悲鳴をあげるおじさんが逃げ回りながら遠ざかっていく。


「……新作? また怖いものつくって……」


 もう口を開いてもいいかなと訊ねる。渋ーい顔になっているのは、針が痛そうだったから。注射は苦手なので。


「誰かさんがボーッとしてる分、自衛策は必要なんだよ」


「なんでわたし? 声かけられたのはジンじゃん」


「…………はあ」


「露骨にため息つかないでよ! たしかに、小さい頃は何回か誘拐されそうになったかもしれないけど……」


「俺が防いでなかったら、確実に連れ去られてただろ」


 ジンのやつ、昔のことをいつまでもグチグチと……。正直誘拐未遂のことはよく覚えてない。ただその頃から、ジンが発明にのめり込むようになって、あまり遊んでくれなくなって、さみしかった印象のほうが強い。


「……眼鏡の効力が……いや、……の力が……」


 今度は何やらぶつぶつ言ったあと、急にわたしに向き直り、


「ちょっとその眼鏡見せて」


 と言ってきたので、はいどーぞと眼鏡をはずす。この眼鏡もジンお手製だったりする。わたしは目は悪くないんだけど。ある日急にこれを渡してきて、「つけてほしい」っていうからつけました。なんか新しい実験かな? と思って。


 いつまでもたっても実験が終了しないから、「外していい?」って聞いたけど、「絶対外すな」の一言で会話が終了したからさすがにわたしも怒ったよね。そしたらジンが、あのジンが「サクラは眼鏡が似合うから、ずっとつけててほしい」って言ったんだよ。


 これははっきり言ってすごいことです。あのひねくれもののジンがこんなかわいいことを言うなんて初めてだったから、いまも律儀に守ってつけている。


 眼鏡を見るのかな? と思いきや、眼鏡を受け取ったジンは、なぜかわたしの顔を見つめてくる。最近一緒にいてもほとんど目が合わなかったし、ジンのお綺麗な顔にまじまじと眺められるのって、かなり……照れるんだけど。


「な、なに? 何? やだ、恥ずかしいよ……」


「……なに意識してんだか」


 うわー、冷たい言い草。しかも顔を背けられる始末! 顔を手で覆いながら、眼鏡を突き返される。


「ん」


 ジンのこと、クールでかっこいいってハートマーク飛ばしている学校の子に教えてあげたい。いや、逆効果だったりして?


 ムカムカしたので、わたしも低い声で「……いらない」って答えた。


「……は?」


 すごまれたけど、負けるものか。


「ジン最近感じ悪いもん。わたし、ジンといっしょにいると楽しくない」


 そう言って、ジンの横をすり抜ける。ちょっと冷たく言い過ぎたかなと角を曲がる寸前ちらりと振り返ると、ジンはその場で立ちつくしていた。


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