第3話 過去
皆さんこんにちはぺぺです。
今回はネルの過去について書きました。
つい楽しくて文字が増えてしまったのですが
よかったら最後まで読んでくださると嬉しいです!
誤字脱字がありましたら教えてください!
コメント貰えると嬉しいです!
この世界のダンジョンは基本都市と呼ばれている場所に存在するダンジョンを攻略するものだ。
しかし都市以外の場所にもダンジョンは存在する。
だがダンジョンの規模やモンスターの強さなどは都市のダンジョンに比べて、いや比べる程でもないくらい弱く小さいものだ。
それ以外は都市のダンジョンとあまり変わるところはない。
もちろん魔石なども出るため都市外のダンジョンでモンスターを倒して魔石を手に入れてから都市の換金所でお金を稼ぐ人も居る。
そのため都市のギルドに入っている冒険者は都市外ダンジョンに入ることは禁止されている。
理由は都市の冒険者は都市外ダンジョンのレベルが低すぎて大量にモンスターを借りすぎてしまうからだ。
それに都市外のダンジョンはモンスターの復活も遅く都市外に住む住民の生活資源を奪わないためにこのルールが採用されるようになった。
中には都市のダンジョンはレベルが高く臆病な冒険者はギルドを抜けて都市外の町や村に移住し都市外ダンジョンで生活をやりくりする者もごく稀に居る。
またその逆も居る。
都市外に住んでおり冒険者を目指すものは少なくない。
都市の冒険者はダンジョンのレベルが違うために冒険者として強くなればなるほどお金持ちになれるからだ。
その他の理由で都市外から都市に来る人も中には居る。
その1人内の1人がネルである。
ネルは元々都市外に生まれ都市外で暮らしていた。
ネルの両親は冒険者でネルが生まれてすぐに都市に向かい冒険者になった。
しかし、両親はダンジョンで行方が掴めなくなりネルは村の村長に引き取られた。
その話を聞かされていたネルは5歳の頃から短刀の練習をし6歳で都市外ダンジョンに行くようになった。
村長はネルに
「ネル。ダンジョンに行くのはやめなさい。お前にはまだ早いんじゃ。もしどうしても行きたいなら村の男と一緒に行きなさい。」
「嫌だ。僕は別に死のうが生きようがどっちでもいい。ただお父さんとお母さんがなんで僕を置いてまでダンジョンに行こうとしたのか知りたいだけだよ。」
ネルは村長の心配を分かってはいたが生まれて親の顔も知らず愛情も無く育ったネルにとって自分の生死について関心が無くなってしまった。
村長は止めても聞かないネルにせめてものお守りとして1本の短刀を鍛冶屋に作らせた。
「ネルが使えそうな軽めの短刀を作って欲しい。ワシがネルの傍に居てやれないならせめて短刀だけでもネルを守れる力になりたのだよ。」
村長が村の鍛冶屋お願いし短刀を作って貰えた。
「ネル。こっちに来なさい。今日はお前にプレゼントがあるんじゃ。」
「なぁに?おじいちゃん。」
そういうと村長はネルに短刀を渡す。
「ダンジョンに行くことは止めない。しかしこれだけは約束してくれ。必ず生きて帰ってくるのじゃ。ワシはお前を本当の孫だと思っておる。お願いじゃ。」
「わかったよおじいちゃん。生きて帰ってくる。短刀ありがとうねおじいちゃん。そろそろダンジョンに行ってくるね。」
ネルが村長から短刀を受け取りダンジョンに向かう。
「生きて帰るか···。考えたこともなかったなぁ。」
ダンジョンに向かいながらネルは村長に言われたことを思い返していた。
「でもどうしてお父さんとお母さんはダンジョンに行ってしまったんだろう。ダンジョンの何がいいのかな···。わからないや。」
ネルは両親の事を理解出来ずにダンジョンに入っていく。
それから月日が経ちネルが14歳の誕生日の日悲しい出来事が起きる。
ネルがいつもの様にダンジョンに向かっていきいつもの様にダンジョンを攻略して村に帰ると人だかりができている。
「あのー。どうしたんですか?」
「村長が死んだのよ。」
「え。」
ネルはあまりのことに声が出ず、急いで村長の家に駆け込む。
「おじいちゃん!おじいちゃん?なんで寝てるの?僕ちゃんと帰ってきたよ?なんで···。」
ネルが村長死を受け入れられず涙を流していると。
「ネル君。村長から手紙を預かっているんだ。」
後ろから1人の若い男性がネルに声をかける。
「···手紙?」
ネルは手紙を男性から受け取ると中にはこう書かれていた。
「ネル。この手紙を読んでいるってことはワシはもぉ死んでいる頃じゃ。ネルを1人にしてしまってすまんのぉ。せめてもの償いでお前の両親について教えようと思う。お前の両親は元々冒険者と呼ばれる者だったのじゃ。しかし冒険者とはいつ死ぬかわからない。じゃから1回しか冒険者を辞めて2人でこの村に来たのじゃ。そしてしばらくするとお前を身篭りワシに2人でお願いをしに来たのじゃ。「この子が生まれたら俺達は冒険者に戻ろうと思います。勝手なのはわかってはいるんです。ですが先程元仲間の冒険者から連絡を貰い緊急でモンスターの討伐をお願いされました。まだこの子が生まれてないので今すぐには行きませんが、生まれたらすぐに都市に戻ります。勝手なのは分かっていますが村長に10年間この子を預かっては貰えないでしょうか。その10年で俺達は必ずこの村に戻ってきてこの子と一緒に暮らします。どうかお願いします。」とな。正直ワシには自信がなかった。この老いぼれあと10年生きられるかなんて分からんからの。ただネルお前にだけは死んで欲しくなかったんじゃ。両親との約束もあったがワシはお前を愛しているからじゃ。まぁ両親の話しはこんなところかの。ネルよ最後にこれだけは約束してくれ。必ず生きるんじゃぞ。」
ネルは手紙を読み終えると涙が止まらなくなりその場にしゃがんでしまった。
後ろに居た男性が
「ネル。村長からこれも渡されていた。どう使うかはネルが決めていいそうだ。」
そういうと男性はネルにお金が入った袋を渡す。
「·····。」
ネルはそれを無言で受けとると、また泣き出してしまう。
結局その日はずっとネルは泣き続けた。
次の日、ネルは昨日の男性の家に行き声をかけた
「すいません。僕は都市ナトルに行きたいと思います。今までありがとうございました。」
そういうとネルは村を出ていき都市ナトルを目指した。
ネルが都市ナトルに向かう途中村長の言葉や両親の言葉を思い返していた。
「(おじいちゃんや、お父さんお母さんはなんで死んじゃったのかな。僕もいつか死ぬのかな。でも生きて帰ってくるって約束したから死ねないな。)」
ネルは村長との約束を守るために生きて帰るように自分に誓いを立てた。
大都市ナトル。大きな壁に囲われ中には沢山の建物が立ち並ぶ中、都市の中心に巨大な建造物が建てられていた。
「うわぁー。すごいな。」
ネルが都市ナトルに着いて街の中を歩いて居ると
「今日は何階まで行く?」
「そうだなぁ10階まで行ってみるか。」
「わかった。」
2人の男女が会話をしていた。
その会話が気になり2人に着いていくと先程遠くで見えた巨大な建造物までたどり着いた。
ネルはその建造物が気になり2人の男女に声をかける。
「すいません。あのーこの建物ってなんでしょうか?」
「ん?なんだ坊主。これはダンジョンだ。俺達冒険者の職場みたいな物だな。」
「そうね。このダンジョンでモンスターと戦い魔石を回収する。そのお金で装備を整えたり、道具を買ったりするのよ。」
2人が軽く説明するのを聞いていたネルは
「僕もついて行っていいですか?」
と2人にお願いする。
「ん?お前冒険者なのか?」
「僕は今日ここに来たばかりで冒険者という物詳しく分からないんですが···。」
「てことは冒険者じゃないな。いいか?坊主よく聞けよー?冒険者っていうのはな、ギルドに入るんだ。ギルドはこの都市に存在していて、ほらあそこの建物見てみろ。」
男がそう言いながら指を指す方をネルが見ると大きな建物が建っていた。
「わぁ。大きいですね。」
「大きいですね。じゃないわ!あそこの建物の看板を見てみろ」
「グレイブギルド···?」
「そうだ。ああやってギルドにはギルドハウスがあってその建物の看板にギルドの名前が書いてある。そのギルドに入ってギルドマスターって言われている人物に入りたいですって声をかけるんだ。わかったか?」
「はい。分かりました。ありがとうございます。」
男が丁寧に教えてくれるとネルは2人の男女にお辞儀をしてギルドを探しに行く。
「どこにしようかなー。ここにしてみよう。」
そういうとネルは目の前に建つギルドハウスに入っていく。
「すいません。ギルドマスターはいますか?」
すると奥の方から物凄い厳つい顔の男の人が出てきて
「俺がギルドマスターだ。どうしたんだ。」
「あの。僕ギルドに入りたいんですけど。どうすればいいですか?」
「ん?ギルドに入る?ダメだお前みたいなガキは冒険者になれない。それに俺のところは今冒険者を募集してないからな。」
厳つい男がネルを追い返すと
「子供じゃギルドに入れないのかなぁ···。お腹も空いたしまた明日探そうかな。」
そういうとネルは飯屋を探す。
「ここにしよう。」
ネルはお店に入ると
「いらっしゃい!何にするだい?」
お店の人がネルに声をかける
「じゃこれでお願いします。」
ネルはメニューを指さしながら料理を注文すると
「はいよ!待ってな!」
しばらくすると料理が出てきてネルは
「美味しそう···ゴク。いただきます。」
美味しそうな料理に余計お腹を空かしながら料理に手をつける。
「美味しい··。」
ネルは美味しさとお腹が空いてたのもあり物凄い勢いで食べ進めすぐに料理を頼みそれすらも平らげてしまう。
「ご馳走でした。」
「あいよ!お代は300ゴルだよ!」
そういうとネルは村長から貰ったお金を渡す
「また来てな!」
「はい。ご馳走様でした。」
ネルは満腹になりお店を出る。
「おじいちゃんから貰ったお金が無くなっちゃった···。」
村長から貰ったお金袋を開けて中を見ると10ゴル程度しか入っておらずネルは食べすぎた事に後悔をし始めた。
「今日どこで寝ようかな···。」
ネルは自分が今日寝る場所探しながら都市内を歩き始めた。
日も落ちてきてあたりが暗くなり始めた頃
「あ。ここなら寝れるかな。」
ネルが見つけた場所は小さな家らしき建物である。
小さな家に入ると明かりは点いておらず暗闇の中を慎重に歩いていき寝れそうな場所を探す。
「あれ?布団がある。誰か住んでるのかな。まぁ誰もいないし借りようかな。」
ネルは誰かが使っていたであろう布団を引きその中に入ると
「今日は疲れたなぁ···。」
ネルは目を閉じ小さい声でそう呟くと夢の中に入っていくのであった。
「ん···。朝か。」
ネルは重たいまぶたをゆっくり開け起きようとすると
「あれ?なんか重い?」
何かが巻きついている感じがし布団をめくってみる
「っ!?」
驚きのあまり声が出ない。
それもそのはず布団の中には、肩くらいまでありそうな美しい黒髪、身体つきからして女性がそこで寝ていたのだ。
「·····ん。あれ?起きたの?おはよう」
その女性はネルが起きたのを感じネルの方を見ておはようと挨拶をすると、またネルにしがみつき寝息を立て始める。
「だだだ誰ですか···。」
ネルは恐る恐るその女性に尋ねてみる。
「んー···。私はリアだよ··よろし··く·····ね。」
またまた挨拶を済ますと寝始めるリア。
「よ、よろしくお願いします···。」
ネルは顔が赤くなるのを感じながらこちらも挨拶を返し布団をかぶせる。
「(これじゃ起きられないよ···。まだ眠いし僕も寝ようかな···。)」
ネルももう一度布団に潜り目を閉じ寝始める。
「あれ···。今何時だろう。」
ネルが二度寝から覚めると先程の女性はいなくなっていた。
「やっぱり夢だったのかな···。可愛い人だったなぁ··。」
ネルは辺りを見渡し布団から出て背伸びをすると
「おはよう少年。ゆっくり寝れたかな?」
急に後ろから声をかけられネルはびっくりする。
「おおおはようございます。あれ?貴女は確かリア様でしたよね?夢じゃ···ない?」
ネルが混乱していると
「夢じゃないよ少年。君が私の布団で寝ていたから私もそこで寝ただけだよ。」
「あ。すいません!勝手に入って布団まで使ってしまって··。」
「いやいいんだよ。それより少年。君は冒険者になる気は無いかい?」
リアから突然の誘いを受けたネルは動揺し
「え?冒険者ですか?」
質問を質問で返してしまう。
「そうだよ。一夜を共にした仲じゃないか。それとも嫌なのかい?」
「嫌というより嬉しいですけど、僕なんかでいいんですか?」
「君がいいんだよ。」
リアは真剣に寝るの目を見て伝えると、ネルは顔を赤らめながら
「よろしくお願いします···。」
と伝えた。
「よーし!君が私のギルド初の冒険者だ!ちなみに少年よ名前は?」
「ネルっていいます。」
「ネルかいい名前だね。ネル早速なんだけど色々質問と適性試験受けてもらっていいかな?」
「はい。大丈夫です。適性試験とは一体何をすればいいのですか?」
「そうだねぇ。簡単に言えばギアを発現させる。」
「ギア···?ですか?」
ネルがギアについてリアから説明を受け適性試験の準備に取り掛かる。
「そのギアが発現しなかったらどうするんですか?」
「大丈夫だよ。発現させるまで適性試験繰り返すから。」
そういうとリアは笑っているのに何故か怖いと感じられる様な笑みを浮かべネルを見る。
「リア様···。怖いです···。」
ネルが思った事を小さく呟いてしまうと
「んー?何か言ったかい?ネル〜?」
そういうとリアはネルに飛びつき首に噛み付く。
「痛っ!?な、何するんですかリア様!!」
ネルはリアが噛み付いてきたことによるビックリとリアの匂いに顔を赤らめ首を抑える
「んー?おまじないだよ。」
リアは口に着いたネルの血をペロッと舐めながら答える。
「は、早く行きましょ!!」
そういうと顔を赤らめながらネルは急いでギルドハウスを出て適性試験場に向かう。
試験会場に着くとそこは木々に囲まれた森林であった。
「よし。早速始めようか。ネル?準備いい?」
「はい!お願いします!」
「ルールは簡単私の身体に触れること。要するに鬼ごっこだね。」
「それだけでいいんですか?」
「それだけ?もしかしてネルは私が遅いと思ってる?まぁいいや。やって見ればわかる。とりあえず触れるまで永遠に鬼ごっこするからね。よーいドン!」
リアがスタートの合図を出すとネルはリアに向かって走り出す。
「あれー?ネルー。手加減しなくていいんだよ?ほらほら早くぅ。」
リアがネルを馬鹿にするように同じ速度で逃げていく。
「くっ···!(なんで追いつけないんだ···。)」
「ネルは私が女の子だから優しくしてくれてるの?嬉しいなぁ。でも本気でいいんだよ?」
リアがネルをさらに馬鹿にする。
「うわぁぁぁぁ!!」
ネルが全速力リアに迫る。
「あと···少しっ!!」
リアに手を伸ばし触ろうとする。が
「あー!触られちゃう!!やばいやばい!!·····なーんてね。」
リアはさらに速度を上げネルから離れていく。
「はぁはぁはぁ·····。」
ネルの体力は限界に達し立ち止まってしまう。
「ネルは思ったよりも体力が無いんだね。でも休んじゃダメだよ?まだ触れてないんだからね。」
「はぁはぁ···。はい!」
呼吸を落ち着けネルは再びリアを追いかける
「(ネルはとても純粋な子だなぁ。可愛いなぁ。ふふふ)」
リアがネルの真っ直ぐな目を見てそう考える。
「(まぁこの鬼ごっこで私が追いつかれることは無いんだけどね。)」
リアはそう思うとまたネルと同じ速度で走り出す。
実はギルドマスターという存在は神に近い存在と言われており、冒険者でいうステータスが以上に高い上にギアもマスターギアまで発現している。
そのせいでギルドマスターは争いごとには参加しては行けないし、ダンジョンにもは言ってはいけないというルールが決められている。
なので適性試験だけが唯一力を解放できる場所なのだ。
大抵のギルドマスターはリアの様に遊んで苛めて日頃のストレスを解放する。
だがこの適性試験はファーストギアを発現させるのにかなり適しており極限状態まで追い込むことでその人の本当の姿を引き出すことが出来る。
なお途中で諦める者は適性試験不合格となり冒険者になることは一生出来なくなる。
「(そろそろ今日は日も落ちてるし終わりかな。)」
リアが終わりの合図を出しネルに声をかける。
「ネル今日はもぉ終わりだよ。また明日朝から適性試験ね。」
「はぁはぁ·····。わかりました···。」
ネルは返事をするのがやっとの体力でかなりバテていた。
2人はギルドハウスに戻るとお風呂に入りご飯にする。
「ネル?今日はどうだった?」
リアはネルの方を見て真剣に聞いてみた。
「はい。想像してたよりリア様は凄く早くてどうしたら追いつくのか全然分からなくなって夢中で走っていました·····。」
ネルがリアの方を向き真剣に答える。
「そっか。ちなみにギアの発現ってどうやったらわかると思う?」
リアがネルに再度質問すると。
「この適性試験中に急に力が出るとかですか?」
「違うよ。ギアは自分で発現したことが分からないギルドマスターである私しか分からないんだよ。だから私がいいよって言うまでこの試験は続くから覚悟しててね。」
リアはにっこり笑うと
「は、はい···。」
ネルは不安いっぱいの返事をした。
太陽が照りつけ風が木々の葉を揺らす中2人は適性試験をしていた。
「ネル。今日で2週間だよ?どうする?諦める?」
リアがネルと同じ速度で逃げながら聞く。
「嫌です!絶対諦めません。」
ネルはボロボロになりながら必死にリアに追いつこうと走り続ける。
「しょうがないなぁ。じゃあ1回私がネルを本気で追いかけて殺すから本気で逃げてね。」
リアがネルにいきなり告げると
「え?本気ですか?」
とネルが言葉を最後まで出す前に頬から血が出る。
「もちろん本気だよ?」
リアが笑いながらも本気の殺気をぶつける。
「わ、わかりました。」
ネルはかなり息が切れているがリアの本気の殺気をぶつけられ全速力でリアから逃げ出す。
「(死にたくない死にたくない死にたくない!!)」
ネルは死にものぐるいで逃げる。
リアはネルが逃げていくのを見て
「1分待ってからで丁度いいかな···。」
小さな声で呟きネルの背中を見続けそのうち背中が見えなくなる。
「はぁ··!はぁ··!ここまで来れば逃げれたかな···。」
ネルは後ろを振り返りリアが追ってきてないことを確認し呼吸を整え始める。
「ネールーーーー!!!!!」
リアの声が急にネルの耳に入ってくると
「リア様!?やばいやばい!追いつかれる!」
ネルは急いで逃げようとするが先程の全速力で足が震えまともに立てない。
「ネールー?捕まえたよー!」
リアがネルに向けて小さいナイフを誘うと近づくと
「嫌だ!!!!死にたくない!!!!!」
ネルが本気で叫ぶ。
その瞬間リアの殺気が消えネルに優しく抱きつく。
「おめでとうネル。やっと発現出来たね。」
「·····え?」
ネルは急に変わるリアに戸惑い言葉を失っていると
「ごめんねネル。怖かった?」
「こ、怖かったです·····。グスッ」
ネルは安心したせいで先程まで我慢していた涙が止まらなくなる。
「よしよし。ネルはちゃんとギアを発現出来たんだよ。いい子だね。頑張ったね。」
「あ、ありがと··う···ございます···。」
ネルが泣きながらリアに感謝する。
「よし。泣き止んだかい?」
「はい。ありがとうございました。」
ネルが泣きやみリアがネルに発現したギアの説明をする。
「いいかいネル。ギアの使い方を説明するよ?」
「はい。あの··リア様。その前に聞きたいことが。」
「なんだい?」
「どうして僕がギアを発現したって分かるんですか?なにも変わってないし。急に分かるもんなんですか?」
「そっか教えてなかったね。まずギルドマスターは適性試験を受ける子の血を貰うんだよ。血には色々情報が入ってるからね。」
「あ。だからあの時噛み付いたんですか!?」
「そうだよ?まぁ他のギルドマスターはそんな方法してないと思うけどね。」
リアが嬉しそうに答えるとネルはまた顔を赤らめる。
リアはネルが赤くなってる顔を見ながら説明を続ける
「そして血に入っている情報からその子に合ってそうな試験を選ぶんだよ。ネルの場合は純粋な心、真っ直ぐな性格そして絶対諦めない気持ち。これを汲み取って鬼ごっこにした訳だよ。」
リアが説明するとネルは「なるほど。」と呟きながら頷いている。
「そろそろギアの使い方を説明するね!まぁ説明って言うほどのものでも無いんだけど·····。」
「そうなんですか?」
「だって唱えるだけだし···。」
「え。」
「ネル。ファーストギア。ブーストって言ってごらん?」
「はい。ファーストギア。ブースト。」
ネルがそう唱えると急に身体が光りだす。
「リア様!!なんですかこれ!!」
ネルがリアに嬉しそうに聞く。
「私も詳しくは分からないんだよ。とりあえずギアにはクールダウンが必要って話しをしたよね?そのクールダウンが終わったら次は走りながら唱えてごらん。」
「はい!」
ネルは光が消えるのを待ちリアから詳しくギアの説明を受ける。
「まぁギアについてはこんな感じだよ。そろそろクールダウン終わった頃かな。よしネル?走って唱えてごらん?」
「わかりました。」
そういうとネルは走り出す
「ファーストギア。ブースト!」
すると爆発的な速度で前に飛んでいく。
「リア様!!これ凄いですね!」
「そうだろぉ〜?それが使えるようになればダンジョンには入れるはずだよ。それにこれで正式に私のギルドの冒険者だよ。」
「ありがとうございます!!」
ネルは嬉しそうに返事をする
「さて。そろそろ帰ろっか。」
「はい!」
日が落ち当たりも暗くなった頃
リアとネルは2人で自分達のギルドハウスに帰っていく。
今回はネルの過去と最後にはリアとの出会いも書きました。
ほんとにリアとネルの絡みを書いている時は楽しいですねw
次の投稿は明日になりそうです!
最後まで読んでくださりありがとうございました!