娘、お人形をなくす
ついぞ最近と思ってましたらずいぶん昔の話です。
娘が幼稚園に入る前ですから二歳かそこら。
兄である息子は五歳の年長さんでした。
我が地方には12月になりますと街路樹に電飾をふんだんに盛り付け、イルミネーションが街を彩る、「光のページェント」と言う、それはそれは美しいお祭りがあるのでございます。
それを見に行く車中で、二歳のトンちゃん。
「アンマン、ニクマン、よくにくまん。あれ?」
「?」
こちらが、「あれ?」ですよ~。
なんですか? いきなり。
「アンマン、ニクマン……。あ、ラーメン、つけ麺……。」
あ~、そっちね。「ン」しかあってないじゃないの~。
ご当地お笑い芸人の、狩野なにがしのネタでございますね。
「よくにくまん」は勢いで作っちゃったと見える。
「ラーメン、つけ麺、ボク、イケメン。
ラーメン、つけ麺、ボク、イケメン!
ラーメン、つけ麺、ボク、イケメン!!」
うるせぇ!∑( ̄皿 ̄
憤慨。お父さん憤慨ですがな。
まぁそこは父も大人ですから、憤慨はするものの怒気を放ったりはしない。心に余裕を持っております。
一度覚えると何度も使うと言う、幼児期によくある現象でございますね。
父のそんな思いなど意に介さず、こちらのチャイルドシートのお二人はマイペースでございます。
「おにーちゃんも言ってみな。」
「ラーメン、つけ麺、う◯こメン。キシシシ~」
はじまった。( ̄Д ̄)
下ネタでございます。
言えばいいってもんじゃない。
これが将来、クールイケメンとなり、
「学校に自転車で行くと髪型が乱れるから送っていって」( ̄^ ̄)
などと威張り腐って言うとんでもない生き物になるとは誰が予想したであろう。
そんな彼の「う○こメン」に妹がツッコミを入れます。
「ちがうでしょ~
ラー
メン
つけ
めん
よく
つけ
めん!」
オマエも間違ってるけどね。( ̄Д ̄)
なんだ、「よく」って。
そして皆さんお待ちかね。光のページェント会場へ!
車を駐車場に停めまして、電飾が輝く街を練り歩き、露店で何か買おうという算段。
ここで、トンちゃんのわがままが発動です。
「お人形もってく~」
そうなんです。彼女の腕にはメジャーなソフトビニール製の赤ちゃんのお人形が抱かれておりました。
女の子にはありがちですね。これがことのほかお気に入りでございますがヨメは心配でございます。
このチョロ松であるクソチビの面倒を見ながら、お人形の行く末まで世話は出来ません。
「落とすから、ダメ!」
「や~だ、や~だ、落とさない~」
その自信はどこから来るのか?
自信とは結果です。結果があるから自信が持てる。
たかだか二年しか生きておらず、内一年は寝て過ごしていた彼女にそんな結果があるわけがない。
しかし聞かないので、なくしても知らないよと言い聞かせ、もって行かせることに。
これもいい経験。
さて、ページェントもひとしきり見まして、お楽しみの、出店でござんす。
こういうところでビールを買うと高いので、コンビニであらかじめ購入してきました。
さて、焼き鳥もフランクもかって、エビスビールをあけようとした、その時!
「あれ~、お人形さん、いなくなっちゃってる~」(´-`)
「工エエェェ('д`)ェェエエ工」
いま、まさに、のどがカラッカラやで!
なにがのんきに「いなくなっちゃってる~」だ。ボケ!
さっき、彼女をダッコした時はまだもってたってことは、ブース内を見て歩っている時か?
しょうがない、探すか。(・ε・ )( ・3・)キョロキョロ
といって、ブース中を奔走!
しかし、見つからず!
「お人形さん、どっかに一人でいっちゃった……」(´Д`)
オマエが落としたんだよ!∑( ̄皿 ̄
一番ショックが多かったのは、ヨメ!
「あの、汚いお人形さんが、ゴミだと思って捨てられちゃうわ……。あの汚さがよかったのに……。トンのバカッ!」
「バカじゃな~い~。(´Д`)
バカって言う人がバカ。
おかーしゃん、バカ」(´-`)
うーん、面白い。
笑ってる場合じゃない。
しょうがないので、イベントを管理しているところに、電話番号とお人形さんの特徴を言ってきました。
帰りに泣きじゃくる妹に向かって、当家の若大将ブースケ。
「トンちゃん、おにーちゃんが、お人形さん買ってあげるよ~。」ヾ(´ー`)ノ
このガキ、うちのばーさまからお小遣いをもらっているので、
金を持っています。
「ね、ね~、おかーさん、お人形さん、100円何枚で買えるの~?」ヾ(´ー`)ノ
「う~ん、20枚くらい」
「え~、オレ、お人形さん買いたくないな~……」(´Д`)
自分でいったんだよ?
二千円かかることを知り、途端に尻込み。
さすが若大将。ボクらの誇り。未来の希望!
数日後、お人形さんは買い替えました。
ご静聴ありがとう。