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都合が良くて女々しい男の話

作者: 斎藤計

夏の開放的な気分になったから。冬の人恋しさを求める温度になったから。彼女にとって、僕との関係は、それくらい短絡的な理由でスタートしたものだったんだと思う。きっと『彼氏彼女』とか『夫婦』とか、そんな具体的なものになろうなんて考えはサラサラなかったはずだ。


それでも良かった。というよりも、それが良かった。

男らしく引っ張っていってほしいとか。学年やクラスのカーストの上位にいてほしいとか。良い大学に入って良い会社に就職してほしいとか。彼女は僕に『何かになって欲しい』と求めてこなかったから。


「いいんですよ。そのままの先輩でいてほしいんですよ私は」


透き通った薄茶色の瞳。サラサラと靡く肩まで伸びた綺麗な黒髪。耳に残り続ける甘く高い声。薄い唇を人差し指でなぞり、艶めかしく悪戯に微笑む。彼女が、そう言って笑った姿が今でも鮮明に記憶に焼きついている。


誰もいない昼休みの屋上で初めて会った時。放課後の帰り道、不意に抱きつかれた時。家に遊びに来た帰り際、唇を重ねた時。暇だからと深夜に呼びだされ何も言わず何もせず、ただ互いに背中を預けた時。泣きじゃくる彼女に抱きしめられて、関係を持った時。そのどれよりも鮮明に。


きっとその言葉が、僕が何よりも聞きたくて、掛けてもらいたかった言葉だったから。ありのままでいと。そのままでいいと。認められた気がして嬉しかった。


だから例え男癖の悪さで学校屈指の悪評を流される後輩でも。最初は嫌悪感すら抱いていても。都合よく利用されるのかなと疑念を抱いていたとしても。彼氏がいると知りながらも。


あの時、そのたった一言を聞いただけで、そんなのどうでもよくなる位、彼女を好きになってしまった。


真っ当な倫理観をもっていたら断ち切るような関係を、僕を流されるままに、彼女が望むままに数か月という期間ズルズルと続けていく。ただの学校の先輩と後輩の関係を装いながら。彼女でもなく友達でもない名前の無い関係を。


「また明日ですね先輩」


この言葉を最後に、彼女が僕に話をかけてくる事が無くなった日まで。

小説を書きはじめようと、まずは軽めに投稿してみました。


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