5.
「あー、私にもそういうの出来たらいいのに。祈りの力で浄化とか、手から謎のパワーがでるとか」
首にはくっきりと跡がついてしまった。
季節が冬ならばマフラーを巻いて隠してしまうのだが、残念ながら、今は夏。
どうやったら上手く隠せるのか悩んでいたら、髪を下ろせばいい。と橘先生がアドバイスをくれた。
それだけじゃ根本的な解決にはならないのだが、他にいいアイディアも思い浮かばなかったので、とりあえず、結いあげていた髪をほどいた。
「テレビの見すぎだ」
「じゃあ、話し合いで成仏させるとか」
「話し合いで解決できるほど物分かりのいい奴ならば、そもそも悪霊になったりしない」
「見るだけしかできないの?」
「そうだ。お前に祓う力はない。だから、俺がいる」
「なんで、いつも助けてくれるの?」
死神は、ふいと向こうを向いて黙ってしまった。
この質問には、いつも答えてはくれない。
結局、Cさんは引っ越しをした。
Cさんにとりついていた悪霊は、死神によって祓われ、部屋には悪霊も幽霊もお化けもなにもかもいなくなった。
しかし、やっぱり気持ち悪くて居られなかったらしい。
あの時、Cさんが震えていたのは、死神が怖かったから。
あの部屋を訪れた時点で、すでにとり憑かれていて、自分が自分じゃないようだったと話していた。
最初から、全部演技だったのだ。
久しぶりにハードな体験だったので、本当に怖かった。
死ぬかと思った。
私だって、見るしか能がないただの女子高生だ。
危ないものに近づきたくないし、怖い思いだってしたくはないんだ。
死神も守護霊も、危ないから行くなと、忠告はしてくれない。
分かっているはずなのに。
結局、いつも死神に守ってもらっている。
守護霊はいつもこんな感じで、私を直接守ってはくれない。
私の知らない所で何かをしているらしいが、よくわからない。
よくわからないけれど、こういう目に遭ったときは、にこにこ度が増すので、きっと魂がキラキラしているのだろう。
もしかしたら、守護霊が魂の修行のために、こういう案件を持ってくるのかもしれないと最近疑っている。