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雷雨のちの話
終章
かつて『しあわせ』と呼ばれるサジンが現れるという砂の国があった。
今でこそ、乾燥しきっていた空気は潤い、荒れ果てていた大地は草木が青々と生い茂る国。
そして、死を招く砂塵『死遭わせ』と幸をもたらす砂神『幸せ』の存在。
そこに住まう人々は『しあわせ』を知ってしまった。
だからこそ、『しあわせ』を求めて探し続けていた。
もうそこにはいないのだとは知らずに…
そもそも、人それぞれ異なり一概には説明できない。
ある者は、それを「幸せ」と云い、「死遭わせ」と云う。
また、ある者は、それを「一瞬」と云い、「永遠」と云う。
『しあわせ』とは、それなのに…
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…果たしてこれは、今一度、砂が魅せた幻だったのだろうか。―零零IXI