彼女の話
間章
『しあわせ』と呼ばれる砂神が現れるという砂の国があった。
乾燥した空気と干からびた大地。そこに住まう人々は『しあわせ』を求めていた。
それが一体何なのかも知らずに探していた。
結章
序ノ説 終わりの始まり
しとしと降る霧雨のようにあなたの言葉が心に溜まっていく。
しとしと、しとしと、と―。
音もなく、静かに、ただ、溜まっていく。
屍の説 彼女の見解 彼の死相
あの頃は『しあわせ』なんて知らなかった。
あなたにあうまでは…
だから、あまりにも唐突なあなたの答えに黙り込んでしまった。
気づけば、『しあわせ』と呼ばれる砂神を包み込み真実の心を受け取っていた。
あなたは満足そうに笑みを浮かべていたわね。
あぁ、あなたの言っていた答えがわかった気がするわ。
「…『しあわせ』って“君”のことだよ。」
だから、『幸せ』と呼ばれる砂神を包み込み虚偽のない心を受け取っていた。
もうそこにはいない骨だけのあなたを見て思ったわ。
私は『死遭わせ』だ、と。
「…『しあわせ』って“君”のことだよ。」
あなたにあって初めて知った。
『しあわせ』を。
『死遭わせ』を知らなかった砂神の正体、『幸せ』と呼ばれるあなたを。
末ノ説 終わりの終わり
春雷とともに雨の足音が聞こえた。
突風に煽られてもどこ吹く風なのに、何故か虚しさが爪痕を遺していく。
『もうあなたとあうことはできない』
治らない傷のように、それはいつまでも胸を占め続けるんだ。いつまででも…
雷鳴とともに豪雨になった。何も見えない。あなたは消えた。