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働くママ日記  作者: あじさい
22/42

暴力生活の始まり

結局のところ単身赴任が2年で夫は戻ってくることになる。


2年の間に時々は家族であってはいたが、

また2年前の生活に戻る事に不安が隠せない。


今度はきちんと言わないとな。


「毎月の生活費をくださいって。」

私の収入だけでは子供をこのまま育てていくことは難しい。


あの人はわかってくれるかな。

あの人は知っているのかな。


子供を育てるのにはお金がかかる事を。


こんなに単純で簡単な事なのにわからない。

わかろうとしない。



人は恋をするとこうまでも狂うのか。

人は賭け事につかるとこうまでも狂うのか。



「あなた一緒に生活するなら毎月の生活費をください。」


夫が帰る予定をくんでいる隣で私は話し出した。

「来月からかえるなら今度は生活費をください。このままでは生活ができません。」




おかしな夫は素直にこういった。

「すまない。今月からきちんといれるよ。」

といって私に20万のお金をくれた。

え、

「ありがとう。」

とまどう自分がいる。

当たり前のやり取りに、

涙があふれそうになり、

お金を受け取る手が震えていた。


うれしかった。

生活費をもらえるのが本当にうれしかった。

すぐに頭をよぎったのは、

これで子供たちに新しい生活用品を買ってあげられる。

真新しいものが。


すぐにそんな事を考えるのは、

あまりに普段に来ている衣類が古いから。


子供に新しい衣類が買える。

うれしかった。


やっと夫は家族の事を考えてくれるようになったのかな。

そんな風に期待をもって、


その日は上機嫌だった。


自分だけで生活費を稼ぐのはとっても大変で、

いろんな物の支払いをすると、

殆どといっていいほど手元にはのこらなかった。


だから、余計にうれしかった。


これで毎月のように生活費がもらえたら、、、

なんて、


期待しても、しかたない。


この時に私の心はきまった。

「毎月、どんなことになっても生活費をもらえるようにお願いしよう。」

夫の行動をおそれている部分があったが、

夫婦なのにそんな事をいっていてはいけない。



生活費をもらえるようになっても、

これからまた夫との生活が始まる。


それは子供たちにとってもうれしい事。


また家事を頑張らないとな。


家族が楽しく暮らせる家庭に私がしないと。


仕事をしながらどうすれば家での家事の短縮ができるかを考えていた。

問題はとにかく時間がない。

昼間の仕事の時間は削る事ができないから、

できることは何があるか。


思いついたのは家でとる料理の作り置きだった。

夫の朝晩の食事とお弁当は手抜きがゆるされない。


この部分を作り置きで冷蔵庫に保存して、

小分けで食べて、平日は簡単な料理だけですます。


掃除も日々にできる事だけして、

夫が家の中で快適に暮らせるように立ち回る。


そうと決まれば私は休日には一週間分の食品の買いだめをして、

必ず日曜日に大量に料理することにした。


いろんなお惣菜をつくってタッパにいれ冷蔵庫に保存。

今週に使うであろう野菜もあらかじめきっておき、

袋にいれておく。

そう、野菜をきる手間すらはぶいていく。

肉も同じことをする。


料理は手間をはぶける事は極力する。

平日にいく買い物は緊急でいく買い物だけ。


そんな生活にまた挑戦することになったけど、

早寝と早起きは変わらなかった。


誰よりも早く起きて誰よりも遅く寝る。


家事をしくじった時には睡眠時間が四時間になるときもあったけど、

夫が望む家庭をつくりたかった。


そんな風にして生活が始まると、

なんだか今までの変な生活が夢だったかのように思う。


仕事が終わると家に帰るそんな夫の生活をみていると、

昔のやさしい夫に戻ったんではないかって。


子供が生まれてからだんだんとおかしくなった日々の生活。

どうしてこんな風になったかは、

まだ私にはわからない。


けれども峠をこしたんではないか。


ある日のこと夫が私にいった。

「君は料理が本当においしい。」

「君の料理を食べていると外食がつらいよ。できるなら全ての食事を君のつくるものにかえたい。」


そういった次の日から夫はまた家に毎日かえらなくなった。


毎日のようにかえっていた夫が今日はまだ帰らない。

時間は夜の11時を過ぎたところだ。


いつもはこの時間なら帰宅している夫。


今日は、残業が長引いているのかな。


そんな風に思っていたけど、

時計が12時をさしたときに私は電話することにした。


思うことは一つ、

今の目の前に起きていることから逃げれば、

また逃げる生活が始まる。


なぜ帰らないか、

なぜ夫が豹変したかはこの行動がすべて教えてくれてる。


仕事中に夫に電話をかけるなんて、

とってもいけない事。

そんな風になっていた私は少しふるえながら電話した。


相手は夫。

要件は一つ。

『今日は何時の帰宅になりますか。』

そうただこれだけを聞くこと。


電話は10コールでつながった。

「今日は何時になりますか。」

普段よりも落ち着いて話し出した、


「今日は帰れない。」

そう夫が一言はなした。


「仕事ですか。」

自分でも驚くほどに言葉がでた。


少しの沈黙のあと、

「とにかく今日は帰れない」

と言い終えずに、

電話の後ろで声がした。


「はやく」


その声が私にはっきり聞こえたときに夫はまたこういった。

「今日は帰れない。」


そういうと電話をきった。



帰れない理由をはなさない夫の理由が分かった。

いいえ、

しりたくなかった理由を逃げてしろうとしなかった。


これでやっと私にも覚悟ができた。


翌日の夜に夫がかえって来るのを待った。

そうして私は聞くことにした。


「どうして家に帰らないの。」


もう聞き方を選べる精神状態ではなかった。

とにかく聞きたかった。


「どうして家に帰らないの。」


夫に何度も何度も聞いた。

声が枯れて涙があふれても夫に聞いていた。


自分がほしい答えが返ってきてほしいと思うから、

あふれる涙はもう遅い事に気が付くことになった。

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