働くママ日記の斉藤さん編 君が残してくれたもの 第2話
君に対して何の約束もすることはできません。
今の私は自分の人生を生き抜く事しかできません。
君が望むような答えは返してはあげられないけれど、
お互いに一生懸命に生きよう。
そういって何の約束もしないままに
私たちは別れました。
それから一カ月ほどたったころです。
買い物から帰る途中で階段を使ってみたくなったのです。
普段は自宅に通じるエレベータにのるのですが、
なんだか階段を使ってみたくなりました。
それも突然に。
マンションの最上階に住んでいたので、
普段は全く階段はつかいません。
それでも思い買い物袋を持ちながら普段はのぼらない階段にいきました。
私の部屋がある階は私たちしか住んでいないので、
その階段はほとんど誰も使われてません。
そんな階段に買い物袋がかけてありました。
最上階の階段が終わる手すりのところに買い物袋がかけてありました。
中には本が一冊。
付箋がついた本が一冊入っているだけでした。
その本をみたときに誰が置いたものか、
何のために置いたものかがわかりました。
言葉にできない事を、
本に託す、
それは彼からの最後の伝言なのだと。
私は家にかえってすぐにその本の付箋をついた部分を読みました。
読みながらあふれる涙は私の悪の気持ちです。
この決断をしたのは私ですが、
それでも消化できなかった気持ちが涙となりあふれました。
付箋をついた部分を読み返すと、
私はその本をはじめから読み始めました。
それはゆっくっりと、
一日ではよむにはつらすぎるけれども、
読むことが今の今の私にできることだから。




