ep.099 播州田嶋組と岸田
「!そうなの?徳さん」
思わず皐月は身を乗り出す。
徳野は頷き、鞄の中から一枚の新聞記事をコピーした物を取り出し、皐月に手渡した。
「へぇ、これがその記事です」
皐月が目にした記事は三年前の物で、当時、神戸の大学ニ回生だった稲美裕一が薬物所持により、逮捕とあった。
徳野は、吹き出る汗を何度も抑えつつ、
「この事件自体は、そんなたいしたもんでもなく、初犯という事もあり不起訴になったんですが、影響がデカすぎましたね」
皐月は眉をひそめ、
「具体的にいうと?徳さん」
「つまりですね。結局、裕一は退学。その上、“河内稲美会”からは法度破りで破門。ただ、やはり会長の息子という事も有りましたので、遠い縁戚関係にある“播州田嶋組”預かりになりました。勿論、目付け役として、当時若頭補佐だったの岸田が、同行してるんではございますがね・・・」
皐月は口元に指を持っていくと、ニヤリと笑い、
「えらく勿体振った言い方するじゃない?徳さん」
「ええ、この岸田ってのが、結構食わせ者でしてね・・・。出身が姫路なんですよ」
「ふーん。その物の言いごしからして、まるで昔から繋がりがあるみたい?播州田嶋組と岸田」




