ep.093 オモロい事知りたくないか?
更に調子に乗った岸田は、ニヤニヤしながら、
「そや、山崎。オモロい事知りたくないか?」
山崎に悪い予感が走り、ステアリングを持つ手がジットリと汗をかく、
「補佐、何なんです?その面白い事って・・・?」
岸田は、あっけらかんとして、
「覚えてないか?俺、お前に仕事依頼したよな?帰宅途中の高校生二人組襲えって・・・」
「ええ、確か、補佐は見せしめの為って、言っておられましたが・・・」
「あぁ、見せしめや、その女自身へのな。せやけど、義理堅いお前の事やから、襲う相手を知ったら、ヤらんて言うかもしれんから、襲わへん相手のしか写真渡さへんかったんや・・・」
山崎の脳裏に、ある名前が受かぶ。
全力で否定したかった。
「もしや、私が指示して襲わせたのは・・・」
「ああ、察しがええのぉ、山崎。ボンクラの妹の雪江や、あの愛想の悪い、ふてこいアホ女」
山崎は必死で唇を噛み締める。
岸田への怒りと、自身が犯してしまった不義理への哀しみから頭の中が真っ白になった。
「!!!」
《このド外道がぁ!オドレは極道ちゃう!単なるクサレや!》
岸田はそんな山崎の態度に気付かず、痛みをごまかす為にタバコに火を付けると、
「“播州田嶋組”の叔父きは、お前の事買ってるんやで。まぁ、政も、叔父きに可愛がってもらってたら、先代と一緒に死ぬ事も無かったのにな・・・。痛っ。山崎、病院まだけ!」
あまりの怒りにキレそうになった山崎が冷静に戻れる程、岸田の漏らした一言は大きい。
《落ち着け・・・、もう少しで本当の敵が見える・・・》
山崎は一度大きく深呼吸し、気持ちを抑え、
「補佐、もう着きますから・・・。私も補佐と同じように毒を喰らって、“播州田嶋組”の叔父きにご挨拶したいんで知りたいんですが、先代をヤったのも、もしかして・・・?」
岸田は意識が少し朦朧としてきた様子ではあったが、
「アレは“播州田嶋組”と関係のある中国マフィアが手を下したんや。“河内稲美会”のシマに風俗店出したいから・・・」
「なるほど、それじゃあ犯人が捕まらない訳だ・・・。あっ、補佐、もう着きますんで。最後にもう一つだけ・・・」




