ep.090 かなり制服好き?
睦月は血痕を辿り、慎重に足を進めた。
《何があったんだ・・・?》
不思議な事に人気は、ほとんど感じられない・・・。
血は居間まで続いていた。
《ここからのようだな・・・》
より慎重に、居間に入る。
睦月が目撃したのは顔を腫らし意識を失っている二十代の男と、おそらく此処で刺したのが想像出来る血の跡であった。
睦月は顔を腫らしている男に、音も無く近付きしげしげと眺め、そして、周りを見渡し状況を分析する。
《誰かが此処で刺されている。でもだとしたら、気になるのは、なぜこの男はここに放置されている?ふむ、スーツはドルガバのそこそこ高いのか・・・。ん?金バッチ?・・・。だとすると、このボロ雑巾みたいな顔の男が、河内稲美会の会長・稲美裕一か・・・。全く酷いやられ方だな・・・》
睦月が思いを巡らしていると、裕一が意識を取り戻しかけ、うわ言を漏らす。
刹那、睦月は裕一の背後に回り、耳を澄ました。
「・・・、ヤ・・ク・・・、き・し・だ、薬く・れ・・・」
睦月は顔をしかめ、
《こいつ、麻薬中毒患者か・・・。“きしだ”とかいう人物が、麻薬に関しては鍵のようだな・・・。事態は予想以上にややこしいか・・・》
睦月は、すっと立ち上がり、裕一の首を目掛け手刀を無慈悲に下ろした。
裕一はぐっと一言漏らすと硬直し、再び動かなる。
《さて、ちょっと屋敷の中を拝見させて貰おうか・・・。普通はこんな屋敷の場合、イキのいい下っぱがワラワラ居るもんなんだがなぁ・・・》
睦月は何だか少し不満そうにため息を吐くと、踵を返し居間を出て行った。
いくつかの部屋を回り、裕一の部屋にたどり着く。
部屋の中には、風俗雑誌やら違法なDVD、それから色々な学校の制服などが散乱していた。
睦月は白い手袋をはめると、あちらこちらを物色していく。
《おいおい、あの男、そんなに女と性交るのが好きなのか?しかも、かなり制服好き?理解しかねるね・・・》
睦月は鍵の掛かった引き出しを見付けると、ニヤリと笑い造作もなく開ける。
《これは、薬が入ってるのかな?》
中身を見た瞬間、睦月は固まった。
《こっ、これは・・・》




